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魔剣師の魔剣による魔剣のためのハーレムライフ  作者: 伏(龍)
第1章

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12/203

準備完了


「まあよい。その辺はおいおい検証していくとしよう。システィナ、次はどこだ」

「はい。次は防具を見に行きましょう。すぐそこです」


 システィナの案内に従ってちょっと歩くと鎧のマークの看板がすぐに目に入る。武器屋と比べて店が随分と小さく見えるのはこの世界における武器の性質のせいだろうか。

 身分証明すら兼ねる武器と比べて防具は『装備』すら出来ないということなので、ただ身に付け防御力を上げるだけの物らしい。

 つまり普通は戦闘行為なんかしない一般の人達にも需要がある武器と違って、防具は戦闘行為を前提とした人達にしか需要がないのだ。


 店内に入ると中はブティックのような装いだった。だがもちろん地球の店とは違う。

 マネキンの代わりに木の骨組み,洋服の代わりにプレートメイル。ハンガーで吊るされたおしゃれな上着の代わりに皮や革を使ったジャケット型の防具。棚には折りたたまれたシャツなどの代わりに兜や,帽子,籠手などが並べられている。


「いろいろあるなぁ…何を装備するのがいいんだろう。システィナは自分の装備について考えていることはある?」

「そうですね…私もこれを振り回す以上はあまり動きが阻害されるものは好ましくないです」

 

 システィナはさほど広くない店内を歩きながら商品を確認していく。ついでに俺も『武具鑑定』を使ってみる。


『プレートメイル

 ランク: G 

 技能: なし』


 あれ?なんか項目が少ない。武器と防具で鑑定結果に差があるのか。錬成値が出ないのは俺の魔剣師の職じゃ防具を鍛えることが出来ないってことなんだろう。

 技能の有無が分かるだけで十分役に立つからまあいいか。


「ソウジロウ様。私は胸当てと籠手,後は脚絆を頂ければ。特に良い物である必要はありません。ソウジロウ様の防具を先に揃えた後に適当な物をご準備頂ければ助かります」

「胴と腕と脚か…蛍さん,俺もそんな感じかな?」

「そうじゃのう…確かに動きにくい防具はお前には合わんだろう。それよりも動きやすさを重視し歩法と体術で攻撃を受けないようにすることが必要だな。

 そういう意味ではシスティナと同様の装備は適切やもしれんな」


 重すぎない胴防具と武器を持つための手を守る籠手。後は俺の生命線として鍛える予定の脚を守る脚絆か。


「頭部はいらない?」

「そうですね…あればもちろん良いのですが,兜などは視界を狭めますし帽子では防御力に不安が残ります。それならば防具をあてにしないように頭部には防具をつけない方がいいと思います。

 もちろん重装備で戦われる方などには必須だと思いますが、ソウジロウ様も私もそういう感じで戦う姿は想像できません」

「確かに」


 全身鎧を着て斧を振り回すシスティナを想像出来ない訳ではないが,いくら契約の恩恵を受けているとは言ってもシスティナの力ではそこまでの装備は無理だろう。ただでさえ武器にかなりの重量を取られている。


 それに俺がやっていたゲームなんかとは違って,体中に装備した防具の防御力が全身に適用されるわけでもないだろう。

 詳しく言えば頭,胴,腕,脚,アクセサリ全部合わせて防御力100だからどこで攻撃を受けても防御力100が適用されるゲームとは違い、現実では自分の身を守ってくれるのは攻撃された箇所に装備してた防具の防御力だけということだ。

 腕にどんなに良い装備を身に付けていても脚に攻撃を受けたらあっさりとダメージを受ける。当たり前過ぎる。


「よし,じゃあそんな感じで探してみるか」


 結局防具屋では技能付きの装備は1つも見つけられなかった。まぁ,武器屋で2つも見つけられただけでも幸運だったと思う。本当はもう1つ見つけていたのだが、うちのメンバーには使いづらい武器だったのと資産に余裕がない今,購入は控えるしかなかった。

 ていうか多節根とか使いこなせないでしょ。どっかのリーさんだってヌンチャクまでで多節根は難しいに決まっている。


 ということで技能等はついていないしランクも全てGだったが、システィナに皮の胴着に鋼の胸当てがついた胸甲。肘まである手甲。そして脛までを覆う脚絆,これらはいずれも鋼を使っているので若干重いが、システィナが大丈夫とのことなので購入。胸甲が1万2千,手甲が2万,脚絆が1万5千マールだった。

 金属の量的にはどれもたいして変わらないが、加工の難易度で値段に差が出たらしい。確かに関節部とかの加工は難しいだろうし,手甲なんて指まで通せるようになっていたのだから妥当な値段なのだろう。


 俺の方は重力対策としてちょうどいいということで、重みのある鋼製の鎖帷子を身に付けた。更にその上から大きめの皮のコートを羽織る。

 腕には鋼の籠手,これは指を通さず二の腕と手首の辺りで皮のベルトで留めるものだ。蛍さんの指示で刀を握る手には余計な異物を挟まない方がいいと言われたためこれにした。

 脚についても身のこなしが完全に身に着くまでは動きやすい物がよいとのことで、防御力についてはひとまず妥協して革製の脚絆を選択した。

 お値段は鎖帷子が2万1千。コートが3千2百,籠手が1万7千,革の脚絆が6千5百。

 合計ではシスティナが4万7千,俺が5万1千7百で9万8千7百マール。ここでもシスティナの値引き交渉が上手くいったので9万5千マールになった。ここまでで既に手持ちの資金は3分の1にまで減っているので、こうしてシスティナが少しずつでも値引きを成立させてくれるのはありがたい。


「初期の装備にしてはかなり良い物が揃えられたと思います。きちんと手入れをすればしばらく装備の更新はしなくても大丈夫だと思います」

「なるほど,じゃあ装備はこれでいいとして後は何が必要?」

「そうですね…傷薬等の道具は一通り持っておいた方がいいと思います。後は水筒と携帯食料ですね。一応今回は入街税のための義務としての塔探索ですからそんなに長時間入るつもりはないですけど、何があるか分からないのが塔だと聞きますので最低限の準備はしておいた方がいいと思います」


 システィナの言う通りだろう。迷宮やダンジョンに長時間潜って喉も渇かない,お腹も減らないというのはゲームの世界だけだ。

 システィナが意識を失うような怪我すれば回復出来る人が居なくなるし,道に迷えば長い時間塔内を彷徨い飢えと渇きに苦しむかもしれない。

 ここはしっかりと準備をしておこう。


 ということでシスティナに案内されて着いたのは薬屋。ここでシスティナは傷薬を5つと毒消し薬を3つ購入した。傷薬が1つ300マール,毒消し薬が1つ500マールだったので全部で3000マールだった。

 その時に気付いたのだが、俺たちは買った物を持ち運べるような物を何一つ持ってなかったのである。3人もいて1人くらい気づけよって感じだが,なんだかんだでみんな初めての塔探索に浮ついているのかもしれない。

 どちらにしろ塔で倒した魔物のドロップを収納する物も必要なので次の道具屋で見繕うことにする。

 買った薬は薬屋のおばちゃんが小さな巾着に入れてくれたので助かった。おかげで値引き交渉をし損ねたとシスティナは笑っていた。何気にシスティナは値引き交渉が好きらしい。


「さてソウジロウ様,ここでちょっと今後の方針も含めて相談です」

 

 道具屋の前で振り向くシスティナ。


「なに?」

「これからも塔に入り続けるかどうか,いずれは塔討伐を目指すのかどうかです。それによってどんな水筒を買うかが変わってきます」

「どういうこと?水筒なんてなんでも一緒じゃないの」

「それが一緒じゃないんです。まず水というのは持ち歩くと重いですし嵩張ります」

「うん分かる」

「その前提で水を持ち運べる物にはいくつか種類があります。

 1つは水袋。防水性のある革の袋でただ水を運ぶだけです。」

 

 なんか異世界っぽいありがちな感じだ。


「2つ目は普通の水筒。これはある程度温度を保持することが出来ます」


 おお!つまりは魔法瓶ってことか、まぁここでは文字通り『魔法』瓶なのかもしれないけど。


「これら2つの特徴は入れた分の水だけを持ち運ぶということです。ですが最後の1つは違います。昨日の沐浴場を覚えていますか?」


 沐浴場?…あ!


「水の魔石か!」

「そうです。水筒に小さな水の魔石を組み込んで常に水を補給し続けられる水筒があります。もちろんそれなりの値段がするのですが…

 これからも恒常的に塔に入って討伐を目指すのなら長時間潜り続けることもあるので、大量の水を持ち運ぶ必要のないこの水筒が必須です」


 なるほど、長く潜ればその分必要な水も増える。だがそんなに大量の水を持ち歩くのは大変だ。だが,水を出し続ける水の魔石があれば水を大量に持ち運ぶ必要はなくなる。


「蛍さん」

「そうじゃな、我らがこの世界で手っ取り早く稼ぐには塔とやらに入るのがいいのだろうな」

「はい,わかりました。ではそこは妥協せずに行きましょう」


 システィナと店内に入ると雑多な商品が所狭しと並べられていた。イメージ的には日本のホームセンターに近いか。もちろんそんなに広くはないが。

 システィナはずんずんと奥に入って行くと道具屋のカウンターに座っていた結構綺麗なお姉さんに話しかけた。


「すいません。水筒が欲しいのですが」

「いらっしゃいませ。水筒ならその右手の奥にございます」

「いえ,その水筒ではなく水魔石を使用した水筒が欲しいんです」


 お姉さんはちょっと驚いた顔をしたが,俺たち3人の装備を見て何かを納得したのか少々お待ちくださいと断って店の奥へ消えた。


「魔石入りの商品は高価なので棚売りはしないんです」

 

 システィナが説明してくれる。万引きされたらたまったもんじゃないってことか。万引きGメンとかいなさそうだし監視カメラもないから防犯としては正しい。


「お待たせいたしました」


 お姉さんは腕の中に大小さまざまな水筒を4つほど抱えて戻ってきた。


「こちらが一番大きい物です。多少重くなりますが常に容量を多く保てますので複数名のパーティの方によく使用されます。また調理をする際に使用しても余裕があります」


 2リットルのペットボトルくらいの水筒をカウンターに置きながらお姉さんが説明してくれた。確かにそのサイズなら6人パーティとかでがぶ飲みしても不足はなさそうだ。


「こちらがその1つ下のサイズです。容量は減りますが少し軽くなりますので、こちらを購入される方は結構多いですね」


 大体1.5リットルのペットボトルサイズか。それでも1.5キロだからな…持ち歩くには嵩張るし重い気がする。


「こちらが更に1つ下ですね。この位になるとかなり携帯にも便利になってきますので1パーティに2本というような使われ方もします。片方が壊れたりした時なんかの予備にもなりますし」


 これが大体1リットルペットだな。この辺が妥当だろうか…でもどうせ水はこんこんと湧き出る訳だから一度に大量の水を使う予定がなければそんなに大容量は必要ない気がするな。


「そしてこれが一番小さい物ですね。この辺だと各自1つずつ持ってらっしゃるパーティも多いですね。人が口をつけたものを嫌がる種族もいますし」


 で,これが500ミリリットルペットのサイズか。俺ならシスティナとの間接キスはむしろ望むところなのだが、あまりそれを主張するのも嫌われそうで怖い。

 ここは脱童貞の大人の男の余裕を見せるときだろう。


「システィナ。あまり大きすぎても動きにくくなるだろうからこの一番小さい物をそれぞれで持つのがいいんじゃないか?」

「ソウジロウ。私の分はいらぬぞ。もともと必ずしも必要ではないしな。欲しいときはどちらかに貰えばよい」

「わかりました。では,こちらの一番小さいサイズのものを2つください。それともう少し店内を見て回りたいのでお会計はその時にまとめてお願いいたします」

「承知いたしました。それでは終わりましたら声をおかけください」


 その後俺たちは店内を回り、俺とシスティナ用に斜め掛けのリュックサックを2つ。蛍さんはごてごて身につけたくないということで帯に引っ掛けて使うからとポーチのような物を1つ購入することにした。

 それと携帯食料セットと簡易調理セットも購入する。携帯食料セットは干し肉やドライフルーツのような日持ちのするものと塩などの調味料を少量組み合わせた物で、簡易調理セットは折りたためる小型の鍋やフライパン,簡易コンロ,固形燃料,火打石を一揃いにした物だ。


 それらをまとめてカウンターに持って行き水筒と一緒に購入する。

 水筒が3万マール×2,リュックが200マール×2,ポーチが100マール。食料セットが100マール×2,調理セットが500マール。合計で6万1200マールだったが、単価の高い水筒をシスティナが交渉で1000マールずつ値引き交渉してくれたので5万9千200マールを支払って俺たちは店を出た。


「これで大体準備は大丈夫だと思います。宿に戻りましょう」


 動き出しが遅かった上に結構いろんな店を回ったので、大分陽も沈みかけていたからタイミングとしてもちょうど良かっただろう。

 それにしても今日は慌ただしく動いてしまったため、朝から何も食べていないのでかなり空腹だった。早く帰って何かを食べたいところである。

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