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魔剣師の魔剣による魔剣のためのハーレムライフ  作者: 伏(龍)
第5章

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2人の職場


「お……大きなお屋敷ですね。旦那様」


 エリオ奴隷商で諸々の手続きを済ませた俺達は、霞と陽の安全の為にも、ひとまず2人を連れて屋敷へと戻ることにした。


 2人の代金についてはエリオさんが、今回は治療費と相殺ということにさせてくださいとのことで実質無料だった。一応、奴隷の首輪については外してあげてもよかったんだけど、2人は一応逃亡奴隷扱いになっているためすぐには外せないらしい。


 名前を窓で変えてしまったのでぶっちゃけ関係ないような気もしたが慣れるまでは『秘密を漏らしてはいけない』という呪縛だけ設定しておいて貰った。ただ、いずれ首輪の方は外してあげる予定だということを2人にははっきりと伝えてある。


 で、2人を連れ帰るにあたってしばらく寝たきりだったこともあるので、大事をとって霞を俺が、陽をシスティナが背負って屋敷に帰ってきたんだけど、屋敷について外門に着いた時の霞の第一声がさっきの言葉だ。


「ちょっとワケあり物件扱いで安く手に入ったんだ。この屋敷を今まではシスティナが全部1人で管理してくれてたんだけど、さすがにちょっと厳しいんじゃないかなと思って今回エリオさんのところへ行ったんだ」


「こ、このお屋敷を1人で管理されていたんですかシスティナ様は……お庭の方も全部ですよね?」


「そう、お庭の方も全部。それに加えて俺達の食事や着替えの世話までやってくれてたかな」


「…………」


 そりゃ、まあ引くか。明らかにオーバーワークだからな。むしろどうやって回していたのかを教えて欲しいくらいだ。


「勘違いしないで欲しいのは、システィナが『家事は侍祭の本分です』って言って手伝わせてくれなかっただけで、俺達が家事を放棄していた訳じゃないからね」


 これだけは言っておかないと家主の沽券に係わる。初日からダメ人間のレッテルを貼られてしまわないように自分でフォローしておく。


「今回、桜の要望もあって、ようやくお手伝いを増やすことを認めさせたんだ。だから霞達にはとっても期待してる。システィナを手伝ってあげて欲しい」


「はい!お屋敷の仕事はエリオ様のところでしっかり習いましたから任せてください」


 頼りにされていることが嬉しいのか、俺の背中で霞が頼もしい。ただ、あんまり暴れるとお尻に手が食い込んでしまう。柔らかいお尻に加えて狐尾族はものっそいふかふかな尻尾が生えていて、これが触ると堪らなく気持がいい。


 一狼の尻尾もかなりのものだが、一狼のは狼だけあってほんの少し毛質が硬い。その硬さもまたモフモフする際にはいいアクセントになって堪らないんだけど、霞の尻尾は本当にふわっふわでつい手が……


「ひゃん!……あの、旦那様。また手が……」


「ああ、ごめんごめん。無意識だから気にしないように」


 とりあえず旦那様の威厳で(けむ)に巻いておこう。さすがに4度目を越えた辺りから冷たい視線を送ってきている刀娘達には気づかない振り作戦を決行中だ。


「陽もよろしくお願いしますね」


 あ、ちなみに陽の方にも丸い感じの小さなぼんぼん尻尾があるらしいのでいつかチャンスがあれば触らせて貰えるように交渉するつもりである。


「はい、シス姉様(ねえさま)


 結局、霞は俺が旦那様で他のメンバーは様付。陽は俺が兄様で、他のメンバーは姉様付で呼ぶことになった。ただ、これがどうも蛍や葵のツボにはまったらしく2人に呼ばれるとちょっと嬉しそうだったりする。またそれを隠そうとする姿がなんだかとても可愛らしくてそっちは俺のツボだったりしている。


 結論としてはいい買い物をしたということだろう。もっとも2人を暗殺者にしようとした組織のこともあるのでデレデレしてばかりもいられないんだけどね。


「桜」


「は~い。一応、帰ってくる途中に桜達を監視したり尾行している人はいなかったかな」


 桜には帰りの道中、俺達から離れた場所から俺達を尾行している人がいないかどうかを調べて貰っていた。その桜が尾行が無かったと言うならしばらくは大丈夫か。念のため一狼達には夜間警備の警戒レベルを少し上げてもらうことにしよう。


「うん、ありがとうご苦労様。じゃあ入ろう」


 門扉を葵が開けてくれて中に入ると一狼が出迎えてくれた。


「警備ご苦労様一狼。何も無かった?」


『はい、何も問題はありませんでした。我が主』


 出迎えてくれた一狼は、相変わらず言葉遣いが固いが尻尾は左右に振れているので俺達の帰宅が嬉しいのだろう。愛いやつめ。


「一狼。今日から、うちの屋敷で働くことになった霞と陽だ。彼女達も家族みたいなものだからよろしく頼むな。二狼達にも伝えておいてくれ。あとで改めて紹介するけどね」


『わかりました。我が主』



「あ、あの……兄様?」


「ん?どうした陽。トイレか?」


 システィナの背中から妙に震えた声を出す陽。トイレに行きたいのなら早く屋敷に連れて行ってあげないといけないだろう。


「いえ!そうではなくて……どうしてお屋敷にこんな大きな狼が、あっちにもうろうろしてますよね?狼」


 ああ!そういうことか。俺達にはもう慣れた景色だけど普通の人は魔物の狼とかが近くにいたら、そりゃ怖いか。


「この白くて大きくて綺麗なのが一狼で俺の従魔。あっちには二狼~九狼まで8頭いて、そっちは葵の従魔なんだ。だから危険はないから安心して」


「あ、葵姉様があの狼を8頭も使役してるんですか?」


「ええ!そうですわ陽。わたくしのこの溢れる魅力が二狼達のハートを鷲掴みにしたのですわ!」


 陽が驚きの声を上げると、待ってましたとばかりに葵が前に出て声を上げる。


「そうなんですね!葵姉様は調教師の方だったんですね!」


 調教師というはおそらく、魔物を使役できる職の1つなのだろう。まあ、刀娘達には職という項目はないから結論から言うと調教師ではないんだけど。


「調教師ではないのですが……まあ、いつも山猿をしつけていますし似たようなものかもしれませんわね」


「ふん!まるで孫を猫かわいがりする祖母のようだな」


 ほほほと笑う葵にさすがにカチンと来たのか蛍が俺が思ってても決して言わなかったことをいってしまう。


「……あら?なんか言ったかしら山猿。さっきはあなたも蛍姉様とか言われて鼻の下を伸ばしていたように思うのですけど?」


「はん!そんなことある訳なかろう」


「あらあら、ねえ霞に陽?この山猿はあなたたちのことがあまり好きではないようですわ」


「「あ…すいません」」


「な!卑怯だぞ年増!霞、陽、そんなことは思っていない!」


 ぎゃあぎゃあとだんだん程度の低い争いに発展していく2人を、とりあえず放っておいて屋敷に戻る。


「あの……よろしいのですか?旦那様」


「いい、いい。放っておけば。いつものことだから。2人もすぐ慣れるよ」


「……そう、なんですか」


「うんうん、蛍ねぇと葵ねぇは桜が羨ましく思うくらい仲がいいからねぇ」



 屋敷に入るとまず2人をリビングのソファーに下ろす。

エリオさんのところでもちょっと試してきたけど、2人は普通に歩くくらいは今の状態でも出来るらしいので屋敷の中ではリハビリも兼ねて動いてもらう方がいい。屋敷の案内も歩いて回った方がいいだろう。


 でも、案内よりもまずは長い間寝たきりだったんだから何をさておいてもあれ(・・)が先だろう。


「システィナ、桜、まずは2人をあそこへ連れて行ってあげて。蛍達が戻ってきたら手伝いに行かせるから、システィナは入れ替わりで戻ってもらって食事と部屋の準備を頼む」


「はい」


 エリオさんのところで軽く食べさせたが、思った以上に回復しているみたいだしもう少ししっかり食べさせても大丈夫だろう。


 部屋に関してはまだ2人のベッドとかは準備していないけど、どうせみんな夜は俺の部屋に来ちゃうしシスティナか蛍、葵の部屋を使って貰えばいいかな。桜の部屋は俺の部屋の隣だし、いろいろ仕掛けがあって壁が薄かったりするから聞こえちゃいけないものが聞こえてしまうとあれなので却下。


 最初は2人一緒の部屋がいいだろうからベッドを1つシスティナの部屋に運び込んで使うか。

 そのまま今日は休んでもらって、明日は2人の部屋のベッドや、着替えなんかの生活必需品を買ってきてあげないと……これは女性陣の誰かにお願いするか。俺はディランさんに頼まれている壁材を集めに行かなきゃならない。今日思いついた案も伝えたいしね。


 そうすると、システィナと葵で動ければ霞と陽もつれて買い物に行ってもらって。桜はシスティナの依頼でルミナルタへの偵察。俺と蛍は一狼ともう一頭くらいを連れて壁材集めかな。





「凄かったです旦那様!」

「本当に凄いです兄様!外でお湯に浸かるのがあんなに気持ちいいなんて!」


 システィナの持っていた寝間着に着替えた2人がさっきまで入っていた露天風呂に興奮している。相変わらずこの世界の人に露天風呂は絶大な威力を発揮するようだ。露天風呂で刀娘達に隅々まで洗われた2人は風呂に入る前も可愛かったけど更に可愛さのレベルが上がっている。


「喜んでもらえて良かった。温泉は怪我とか疲れとかにも効くから、いつでも入っていいからね」


「「はい!ありがとうございます」」


 

 その後の2人はシスティナの作る料理に感動の声をあげすぐにレシピを確認したり、後片付けを手伝ったりと仕事に意欲を見せ、案内されたシスティナの部屋に置かれたベッドの柔らかさにうっとりしながら健やかな眠りに落ちたらしい。この調子ならこの新しい職場でもきっとうまくやっていけるだろう。



 さあ、明日からまた忙しくなる頑張ろう。……もちろんその前にベッドで頑張るんだけどね。


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