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魔剣師の魔剣による魔剣のためのハーレムライフ  作者: 伏(龍)
第5章

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奴隷商人 エリオ

前話と前々話でシスティナが気になる出来事があったのをダパニーメとしていましたが宗教都市ルミナルタの間違いでした。それに伴いほんの少し内容が変わっています。全体としては影響はほとんどありません。


【本文】

 扉を開けて入ってきたのは恰幅のいい中年男性だった。ちょっとお腹は出ているように見えるけど、顔にはそんなに脂肪がついてないので太っているという感じはしない。


 にこやかに部屋へと入ってくるその表情にも嫌なものは感じないし、人のよさそうな親戚の伯父さんみたいな雰囲気だ。システィナが清廉な人格者じゃないと務まらないと言っていたのもあながち間違いじゃない感じ。そして彼こそが真の奴隷商!…………いや、だってそう書いてあるんだから仕方ない。


『エリオ  業 -31

 年齢: 39

 種族: 人族

 職 : 真・奴隷商』


 俺の『読解』補正がかかっての職名なんだろうけど、この人は本当に奴隷商として素晴らしい人物なんだろう。是非今後ともいいお付き合いをしていきたい人材だ。


 俺とシスティナも一度立ち上がって奴隷商人エリオを迎える。


「今日はよろしくお願いいたします」


 交渉はシスティナだが、リーダーは俺なので先方のトップとの会談なら挨拶ぐらいは俺が切り出した方がいいだろう。見た感じエリオさんも警戒のためか硬い感じがするのでなるべくにこやかに柔らかい対応を心がける。


「これはこれはご丁寧に。私はこの店の主であるエリオと申します。こちらは弟子のラナルです。今日は勉強のため商談に同席させることにしました。邪魔はしないと思いますのでよろしくお含みおきください」


 うん、多分勉強のためではなく護衛のためだよね、これ。あぁ……でも考えようによっては困難当事者への対応の勉強とみることも出来るか。


「いえ、こちらこそ奴隷購入の前にお時間を取って頂いて申し訳ありませんでした」


「とんでもありません。奴隷購入前に希望を確認するために話し合うのは良くあることですからお気になさらなくても結構です。さて、立ち話もなんですからまずはお掛け下さい」


 エリオさんは丁寧に対応する俺達に少し安心したのか、幾分緊張を和らげてくれたらしい。俺とシスティナもお礼を言うと勧められるままにソファーに腰を下ろす。それを確認して、エリオさんとラナルさんもソファーに座った。


 さて、ここからはシスティナにお任せなんだが……誤解されたまま腹を探り合うのも無駄な時間だろう。


「私はちょっと交渉がうまくないものですから、具体的な話は私の侍祭(・・)であるこちらのシスティナからさせて頂きます」


 俺が無造作に投げ込んだ爆弾にある意味予想通り、エリオさんとラナルさんの表情が固まる。せっかく和やかムードを作ろうとして挨拶に気を使ったのに失敗だったかと後悔しなくもないが、よく考えたら誤解は早めに解いておかないと建設的な話が出来ない。まぁ、こっちはちゃんと事情を話せば良いだけだしシスティナならうまく説明してくれるはず。


「はい。まずは私からお二人に言わなければならないことがあります」


「……なんでしょうか」


 システィナの深刻な表情に何を言われるのかと警戒の度合いを増す2人に対し、システィナは深々と頭を下げた。


「侍祭ステイシアの不正によってエリオ殿に多大なるご迷惑をかけたことを同じ【侍祭】として深くお詫びいたします」


「「……」」


 おそらくエリオさんとラナルさんは、俺達が性戦士の関係者だと分かったことでまた何か無理難題を言われるような可能性を考えていたのだろう。システィナが侍祭だと分かってからは、再び騙されることの無いように細心の注意を払ってもいた。


 だが、シャフナーやステイシア本人ではないシスティナからいきなり謝罪を受けることはまるっきり想定外だったらしい。2人は一瞬ぽかんとした顔をした後、お互いに顔を見合わせている。もちろん、その間もシスティナは頭を下げたままである。


 俺も一緒に下げた方がいいのかもしれないが、これは同じ【侍祭】の不始末であるから私が謝罪すべきことなのでご主人様はそのままでいてくださいとのことだった。日本なら使用者責任とか問われる可能性もあるのかなとは思ったけど、その場合でも謝罪すべきはシャフナーだろうということでなんとなく居心地は良くないがなるべく悠然と構えるようにする。


「……お顔を上げてください。侍祭様。詳しい事情は分かりませんが、あなたが先日私たちが出会った侍祭とは違うということは分かりました。あんなことがあったゆえ、すぐに信用する訳にはいきませんがお話を聞かせて頂くに値するお相手だと思いますので」


 エリオさんの言葉に合わせてラナルさんがシスティナの肩に手を添えて身体を起こしてくれている。


「ありがとうございます。信用していただけないのは当然のことだと思います。本来であれば『真実を話す』という契約をしてお話をすれば良いのですが……今は逆効果だと思います」


 本来の契約文が読めないのをいいことに本来約束した内容と全く違う内容で契約をさせられたエリオさんに今の状況で再び侍祭の契約書に署名をさせるのは酷だろう。


「ですから、私が話すことを信用するかどうかはエリオ殿にお任せいたします」


 システィナはそう前置きをすると性戦士達との出来事とその結末を委細隠さずに全て語って聞かせた。




「そうですか……あの2人組は捕まったのですね」


「はい、エリオ殿の他にも数人の方に同じような不正を働き、その内の何人かは塔で殺害されていることが分かっています。おそらく近いうちに冒険者ギルド主体で処刑が行われるはずです。……ただ、申し訳ないですが侍祭という職が世間に与える影響力の大きさから、ステイシアが侍祭であったということは伏せられるかもしれません」


 申し訳なさそうに顔を伏せるシスティナにエリオさんは僅かに微笑んで首を振る。


「構いません。あなたは私が思い描く侍祭そのものです。あなたと言う本物の侍祭を見た後ならば、確かにかの侍祭が本来まだ世に出るべき侍祭では無かったという言葉も真実なのだと信じられます」


 エリオさんはそう言うとラナルさんに視線を送る。ラナルさんはそれにやや抵抗するような素振りを見せたが、エリオさんの視線が動かないのを知ると小さな溜息と共に手を二回打ち鳴らした。


『扉の向こうの気配が遠ざかって行ったな』


 なるほど……今の音が臨戦態勢の解除の合図だったのか。いずれにせよ変な行き違いから戦闘に発展しなくて良かった。


『音か……受付にあった三つのベル。あれはきっと音で危険度を表すためなのかな?』


『あぁ……とするといささか不自然な帽子の色に対する言及は人員配置への指示を兼ねていたのかもですわ』


 後ろで刀娘達が奴隷商の警備体制をがんがん暴いていく。いや、そこはそっとしておいてあげようよ。ああいうのはばれていないと思うから『青が綺麗ですね』とか言えるんであってばれてたら口にしづらくなるから。


「信じて頂いてありがとうございます。近々彼らが処刑されればエリオ殿が結ばれた契約は自然と消失します。ですが、契約内容によってはその期間にまたエリオ殿に迷惑がかかる可能性があります。できればどのような契約をしたのか教えて頂けませんか?」


 結局誰と、どんな契約をしたかまでは確認していなかったので、もしエリオさんの契約が『毎日1人ずつ奴隷をシャフナーに届ける』だったりすると、シャフナーが捕まっていても契約に違反しないためには毎日奴隷を届けないとペナルティが発生してしまうだろう。


「ご心配して頂きありがとうございます。私の契約は彼が捕まっているのなら問題はないと思います。彼との契約は『彼から要望があったらその通りに女性を届ける』ということでしたから」


「……それではあなたの管理する奴隷の方たちにも被害が」


 奴隷とは言っても犯罪奴隷以外は結構しっかりした人権的なものがある。シャフナーに言われたからと言って無理矢理奴隷の中から女性を連れて行くことは本来の奴隷商の職務から逸脱した行為だろう。


「大丈夫です。この街の娼館の方達に事情を話して多めの報酬で彼の下へ出張して貰っていましたので奴隷たちの中からは誰も彼の下へは送っていません。送った女性達も彼は面倒を見るのを嫌がり、朝になると追い出されるので娼婦の方達にとっては場所が違うだけで、いい稼ぎだったようです」


 デリバリーヘルスのようなものか。高校生だった俺はもちろん使ったことはないが。


「それでも、エリオ殿に本来必要のない出費を……」


「お金など、また稼げばいいだけです」


「失礼だが奴隷商よ。お前ほどの人物がなぜあのような者と契約をしようと思ったのだ?」


 今まで後ろでことの成り行きを見守っていた蛍がどうしても気になったのか質問を投げかける。確かに契約を結ぼうとしなければ偽の契約書に署名することもなかった。


「…………侍祭様は治癒侍祭の資格は持っておられますか?」


 確か、侍祭になるためには必須スキルである家事全般のスキルに加えて護身術スキルを覚えた上に、回復術、護衛術、交渉術のいずれかを覚える必要があったはず。


 そして回復術を修めた侍祭が治癒侍祭、護衛術を修めた侍祭が近衛侍祭、交渉術を修めた侍祭が交渉侍祭。3つの内2つを修めた侍祭は高侍祭、そして、全てを修めた侍祭がシスティナのような……


「私は聖侍祭の資格を持っています」


「なんと!」


 エリオさんは驚愕の表情を浮かべた後、目に涙を溜め始める。


「聖侍祭様がこうして今、私の前にいるということは彼らに騙されたことも無駄ではなかった!お願いがあります!聖侍祭様!助けて欲しい奴隷達がいるのです!」


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