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小さな妖精に転生しました  作者: fe
八章 混迷
326/342

322. 私のおかげで

 洞窟を抜けるとそこは砦だった。

 森の中に立派な石レンガの砦が佇んでいる。私を見つけたからか兵士たちがなんかワチャワチャと騒いでるね。ワチャワチャしてる兵士たちの見た目はいつもお城で見る兵士より立派な気がする。



 森で見つけたお肉を食べた後そのまま檻の中で一晩ぐっすり寝たら頭もスッキリした。やっぱり透明化してると思考能力が落ちるっぽい。

 そして頭のスッキリした私はスマートな結論に至ったのだよ。洞窟が塞がってるなら吹き飛ばせば良いんだって。

 入口だけじゃなくて奥まで岩がギッシリ詰まってたけど、妖精ビームは全てを吹き飛ばすのだ。さすが私。


 で、なんとか洞窟の穴まで貫通させた後に洞窟の中を進んでみると、まぁ長いのなんのって。マップで確認したらなんと東の山脈まで超えてたのだ。

 洞窟は人が歩けるように整えられた通路になっていた。つまり自然の洞窟じゃなくて人に攻略させることが目的のダンジョンかと思ってワクワクしてたんだけど、なーんもなかったよ。山を越えたことを考えるとただの山越えトンネルだったんだろうね。


 む、ファンタジーゲームなら山越えトンネルは立派なダンジョンか。

 じゃぁどうして、このトンネルはダンジョンっぽく感じなかったんだろう? やっぱ魔物が出てこなかったからかな。まぁ、コウモリとかはいたんだけど。


 やっぱり宝箱とか罠とか先に進むには謎解きギミックとかがないと……、って、入口の謎解きギミックは私が吹き飛ばしたんだった。じゃぁもしかして魔物とか宝箱とかも一緒に吹き飛ばしてたのかもしれない? ……まぁ、いいや。


 今はそんなことどうでもいいのだ。目の前の兵士たちをなんとかしないと。

 ダンジョン出口でまさかこんなに人が待ち構えてるなんて思ってなかったから私の存在はすぐにバレた。暗い洞窟の中に光った私が飛んでたら目立つもんね。見つかったのはしょうがない。


 でも、ここの兵士たちは思いっきり私に怯えているんだよね。あと、罵声を浴びせてくる兵士。大型犬に出会った小型犬みたいにギャンギャン吠えている。

 なぜだ? 私なんかした? 初めて私に会った人って割と友好的なんだけどなぁ。だって妖精だよ? 最近じゃケガとか治せるってウワサが広まって友好的を超えて狂信的な人だっているっていうのに。


 ってか、なんか見たことある気がする装備なんだよなぁ。

 そう思って左に行くと吠えてる兵士も左へ、怯えた兵士は右へ。私が右に行くと吠えてる兵士も右へ、怯えた兵士は左へ。なんだか楽しくなってきちゃったぞ。右へ、と見せかけて左! と思ったけどやっぱり右! って思った? 残念、左!


 ハッ! この反応、思い出した。

 去年の夏、大量にお城の地下に捕まってた兵士たちだ!

 私の記憶が確かなら、いつもいる国がファルシアン王国で、東の山脈を超えたここはサルディア帝国っていう別の国だったハズ。

 さらにさらに私の記憶が確かなら、この帝国ってのは王国と敵対してたハズだ。私の勝手な思いだけど、アニメとかゲームだと帝国って付く国ってだいたい悪い国だよね。


 なるほどなるほど、話がつながってきたよ。

 つまり去年大量に捕まってた地下の兵士たちは戦争に負けた捕虜だったんだね。でもそれでも分からないことがある。どうしてこんなに怯えられてるんだろう?


 王国と帝国の戦争の内容は絵本と演劇でだいたい知ってたつもりだったけど、たぶんそれが全部じゃなかったんだろうなぁ。

 帝国が王国を滅ぼそうとして緑のオッサン(オーク)を送り付けて、それをお酒マンとおじゃーさんが防いで、その後ドラゴンも送り付けたけど(フラッシュ)様が空中戦で撃退した。


 それが私の知ってる全部だけど、それだと大量に捕まってた捕虜の説明がつかない。たぶん私の知らないところで兵士対兵士の戦いがあったんだろう。まぁそりゃそうか、だって戦争だもん。

 だけどそこに私は関わってない。だから怯えられる理由はないと思うんだけど……。


 まぁいいや。

 それより観光だ。こんな良い感じの雰囲気の砦なかなかない。兵士はうるさいけどちょっと勝手にまわらせてもらおう。

 森の中に隠されるように建ってる砦、最近建て増ししたっぽいね。だって古ぼけたところと新しいところがあるもん。私的には古い側の方が味があって好みかな。古い側には苔むした感じでおもむきがある。おもむきマックスだ。


 でも防衛するような作りになってない気がする。城壁すらない。厩舎とかが砦のまわりにムキ出しで建ってるよ。なんていうか、人を大量に待機させておくための施設のような感じ?

 隣国につながる洞窟の前に大量に兵士を待機? もしかしてトンネル掘って攻め入るつもりだった?


 いや、それだとおかしいか。だって洞窟は1度は山向こうまで掘られて、その後埋められたような感じだったもん。冒険者達も洞窟が埋められたって話してたもんね。


 ハッ!

 しまった。これはやってしまったかもしれない。というか、やってしまったに違いないって!


 このトンネルはたぶん戦時中に帝国が掘ったんだ。こっそり王国へ攻め入るために。だけど戦争は王国勝利で終戦した。で、王国は当然帝国に「てめぇ、トンネル埋戻しとけよ。次掘ったら許さんからな!」と言ったに違いない。

 それで帝国兵は頑張ってトンネルを埋めてる途中だったんだ。だから王国のトンネルは埋まってて、まだ作業中だったこちらは洞窟が開いてたんだね。


 でもせっかく埋めたトンネルを私が開通させてしまった。帝国としては「トンネル埋めて攻められないようにしますので許してくだされ~」って状況なのに、またトンネルが開通しちゃったら王国的には「やっぱまた戦争する気満々やんけワレェ!?」となって帝国は「ひぃ!? ちがうんです、その妖精が勝手にやったんですぅ!」ってなる。


 ヤバイ。せっかく訪れた平和なのに私がきっかけでまた戦争が勃発するかもしれない。そりゃ兵士たちも怯えるよ!


 これは責任とってちゃんと埋め戻しておかないと。埋め戻すのは当然として、ここの偉い人にも詫びを入れておくべきだ。そして口止めするのだ。「妖精さんはここには来ていません。トンネル再開通には無関係ですって」言わせるのだ。

 わーい、ダンジョンだー、なんて言ってる場合じゃなかった。


 よし、まずは偉い人を探そう。

 偉い人と言えば1番豪華な部屋にいるって相場が決まってる。1番豪華な部屋は……、雰囲気が1番豪華な部屋だ。つまり、1番すごいところに行けば……。いた。おじいさんだ。


 こんな砦に場違いなおじいさんが天蓋付き超豪華ベッドで寝てる。その豪華さはおじいちゃんって感じじゃなくて、まさにおじいさんだ。おじい様と言っても過言じゃない。豪爺(ごじい)様だ。ベッドの横には豪華なおばあ様もいる。豪婆(ごばあ)様だ。


 うーん、豪爺(ごじい)様は病気っぽい? なんか肌にピンクの斑点がいっぱいある。いかにも病気ですって感じだよ。枯れ木のように細くてシワシワだ。

 そうすると豪婆(ごばあ)様は看病か? わ、部屋の隅には召使いっぽい人たちがいた。ビックリした。気配なさすぎでしょ。


 んー、よし!

 豪爺(ごじい)様の病気を治して恩を売って口止めしよう、ナイスアイデア! さすが私。ほいっとな。豪婆(ごばあ)様もなんか元気ないし、ほいっとな。

 よし、起きて豪爺(ごじい)様! もう病気は治ったよ! そして私のことは黙ってろ! 私はここに来なかった、良いね? ほら、頷け!


 よしよし、驚愕の表情だけどなんとか頷かせられた。

 後はトンネルを埋めながら戻れば全て解決だ。これでまた戦争なんてことは回避されたハズ。


 世界平和は保たれた!

 私のおかげで!


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― 新着の感想 ―
せっかく埋めたトンネルを開通させてまた埋めるのかよ!
ちょくちょく察しが良いようで悪い 体サイズ相応の小さな脳ミソをフル回転させてる妖精様 とても可愛いですね
豪爺様って まさか こ う て い?
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