井戸とスライム
とんでもないスピードで投稿を続けております。甘い蜜蝋です。みなさんよろしくお願いします。ランキング情報が日々出てきてワクワクしてます。ただ、投稿スピードが異常なのでこっそり修正もしております!ごめんなさい。
夏の日差しがえげつなくて、地面はひび割れてカチカチ。
ハルトン村の広場に立つと、目に入るのは――空っぽの水瓶と、底が見える古井戸。
……うん、これは笑えない。みんな喉がカラカラだ。
「――まずは水だ。水がなきゃ、始まらない」
俺がそう言うと、広場のあちこちでざわめきが起きた。
「またかよ」「昔やったけど無理だったんだろ」とか、不安まじりの声が飛ぶ。
まあ仕方ない。前に挑戦して失敗したらしいからな。
「ここを掘る」
俺が指差すと、村の代表バルドさんが首を振った。
「若い領主様よ。そこは硬い岩にぶつかって、誰も進めなかった場所だ」
「岩はある。でも、その下に水が流れてる。俺の目を信じてくれ」
――というか、《洞察眼》で見えてるんだよな。
土の層の向き、湿り気の残り方、全部が“ここだ”って言ってる。
けどそれを素直に説明すると「何言ってんだこいつ」って顔されるから、言葉はシンプルに。
すると横で、カインが腕を組んで笑った。
「お前がそう言うなら、道具は俺が用意する。岩を割るツルハシだな」
「助かる」
アリアは黙ったまま剣の柄に手を置き、俺を見てうなずく。
エルムはといえば、目を輝かせて手を挙げた。
「トリス様、僕もやります! 小さい石ならたくさん運べます!」
「頼む。君の速さは役立つ」
少年の顔がぱっと明るくなる。……こういう素直さ、俺も見習いたいな。
⸻
作業が始まった。
カインが作った新しいツルハシは、見た目は普通でも刃の部分が妙に光っている。魔力を通す工夫をしたらしい。
バルドさんは人足を集め、女たちは土をこねて壁材を準備。
エルムは汗をかきながら石を運んでいる。子どもに混じってはしゃぎながら。
「エルム、籠は腰で支えろ。肩にかけると潰れるぞ」
「わかりました!」
アリアは木槌で石を叩いて角を落とす。
「こんな感じでいい?」
「完璧だ。崩れにくい」
……正直、俺が指示出すだけでここまで形になるの、すごいな。
《采配》の力って、こういう場面でめちゃくちゃ効く。
俺の合図ひとつで、人の流れが自然に揃っていくのを感じる。
⸻
数日後。
朝から滑車がきしみ、桶が上下する音が広場に響く。
掘った土の色は少しずつ変わってきて、エルムが耳を澄まして言った。
「……トリス様、音が昨日と違う。なんか、やわらかい」
「お前、いい耳してるな。そうだ、湿り気が近い」
周りの大人たちも「ほんとだ」「土の匂いが違う」とざわつき始める。
みんなの動きが早くなる。あと少しで水が出る――そういう空気になってきた。
……その時だった。
⸻
「ひっ……!」
井戸の底から、ぬるりと半透明の塊がせり上がってきた。
最初は拳大。次の瞬間には人を丸ごと呑み込めそうなほど膨らむ。
内部には石や釘、なくしたはずの道具まで浮いていた。
だがそれだけじゃない。
わざわざそれらを“見せつけるように”前に押し出し、光を反射させて揺らす。まるで――嘲笑っているかのように。
「下がれ! 魔物だ!」
アリアが剣を抜いた瞬間、スライムはぴちゃりと床を叩く。
水音ではなく、不気味な拍手のように。
《鑑定》を走らせる。
――――
《鑑定》:虚袋スライム(ユニーク)
・触れた物を体内に格納する
・光や動きに強く反応
・核は普段は奥深く。勝ったと思うと前に出る
――――
(……やっかいだな。核を隠して、人を舐めるようにからかうタイプか)
アリアの斬撃が沈むと、スライムはわざと切り口を“見せびらかすように”前に突き出す。すぐ塞がる傷をひけらかし、「効かないぞ」と言いたげに。
「効かない……でも牽制はできる」
エルムが槍を握りしめ、一歩前に出た。
「僕、やってみる!」
「いいか、核が前に出た瞬間を狙え。それ以外は無理だ」
俺はポーチから小石を投げる。
スライムは光に飛びつき、核をちらりと前に押し出す。まるで「当ててみろ」と挑発しているように。
「今だ!」
エルムの槍が核をかすめ、小さな傷がつく。
その瞬間――スライムはぐにゃりと体を揺らし、内部の石や釘をカラカラ鳴らす。「惜しかったな」とでも言いたげな音を立てながら、さらに膨れ上がった。
(勝てると思ったか……なら、利用させてもらう)
俺はわざと小刀を井戸の縁から落とした。
スライムは待ってましたとばかりにそれを飲み込み、内部で小刀をくるくる回して“戦利品”のように見せつける。
(……性格が悪ぃ。絶対に叩き割る)
さらに俺は足を滑らせたふりをして、自分ごと抱き込ませる。
スライムはぴちゃり、と満足げな音を鳴らした。まるで勝ち誇った笑み。
「トリス様ぁ!」
エルムの悲鳴。アリアが必死に押さえて止めている。
スライムは勝利を確信したのか、核を誇示するように前へ出した。
自慢げに、わざと弱点を見せつけて――“もう勝った”と信じ込ませようとする。
だが、今が好機だ。
「……俺の負けだと思ったか?」
刀「繋」を抜き、核に亀裂を走らせる。
一瞬、スライムがびくりと震え、内部の釘や石を必死に揺らす。最後の抵抗のように。
「勝ったと思ったな。騙されたのはお前だ!」
《スキル詐奪》が発動する。
――――――――
【ログ】
・《スキル詐奪》が発動しました
・ユニークモンスター《虚袋スライム》から《無限収納》(レジェンド)を獲得しました
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核は砕け、巨体は悔しげに身をよじりながらしぼみ、消え、久しぶりの感覚が胸を満たした。
【レベルアップ】
名前:トリス(15歳)
Lv:10 → 11
HP:420 → 460
MP:3000 → 3600
STR:65 → 70
VIT:58 → 62
AGI:75 → 80
DEX:90 → 95
INT:80 → 85
MND:70 → 74
LUK:150 → 158
(魔力がとんでもない上昇してるな)
その瞬間、井戸の底から轟音。透明な水柱が空へ向かって噴き上がった。
あのスライムが水を独占していたようだ。
「み、水だぁぁぁ!」
「井戸が生き返ったぞ!」
村人たちの歓声が広がり、エルムは槍を抱きしめながら涙をこぼす。
「トリス様、僕……!」
「よくやった。君の一突きが、村を変えたんだ」
アリアは剣を収めて、じろりと俺を見る。
「……ほんとに心臓に悪いわ」
「反省してる。……でも、勝った」
「ふん。次からは、もうちょっと安全に頼む」
カインは刀を見てニヤリとした。
「“繋”、いい音だったな。お前の振りに合ってる。あとで鍛え直してやる」
「頼む」
水音は次第に落ち着き、村全体を潤すように響いた。
俺は刀を納め、心の中で小さく息を吐く。
(《無限収納》……使い道は慎重に。派手に見せびらかすスキルじゃない。守るためにこそ使うんだ)
夕暮れ。
水面に映る光が、村人たちの顔を一人ひとり照らしていた。
初投稿です!みなさんおてやわらかにお願いします。
AIをとーても使いながらの執筆となっております。




