一年目の証 ―槌音に宿るもの―
とんでもないスピードで投稿を続けております。甘い蜜蝋です。みなさんよろしくお願いします。ランキング情報が日々出てきてワクワクしてます。ただ、投稿スピードが異常なのでこっそり修正もしております!ごめんなさい。
修行を始めて一年が経った。
十一歳の夏に工房の戸を叩いた俺は、もう十二歳になっていた。
最初は槌を握るだけで腕が震え、火の熱に近づくと息が苦しくなった。
だが今は違う。手の豆は硬くなり、火傷の跡も勲章のように残った。
炎に包まれても体は自然に動き、槌は掌に馴染んでいる。
――失敗の積み重ねが、俺をここまで連れてきた。
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「今日はお前に任せる」
ガルドの低い声に、背筋が伸びる。
「任せる……?」
「釘を作れ。小さなものだが、鍛冶の基礎だ」
隣で鉄を磨いていたカインが口笛を吹いた。
「おお、とうとうだな。でもな、釘って意外と難しいんだぜ。俺も最初は何度も折った」
「ふふ、トリスならやれるでしょ」
アリアは真剣な顔でこちらを見つめた。
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炉から鉄を引き上げ、火を読む。
赤から橙、そして黄へ――鉄の呼吸が見える。
「……今だ」
槌を振り下ろす。
ガンッ、ガンッ!
力任せではなく、響きを確かめながら一定のリズムで叩く。
工房に響く音が、少しずつ歌のようになっていく。
「へぇ……音が変わったな」
カインが感心したように呟く。
「最初はガチャガチャだったのに、今はちゃんと響いてる」
「当然よ。毎日やってきたんだから」
アリアが微笑む。
「トリス、自信を持ちなさい」
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やがて一本の釘が台に転がった。
頭は歪んでいるが、確かに釘だった。
「……できた」
「よし。まだ粗いが、形にはなっている」
ガルドが受け取り、目を細めて頷いた。
胸の奥が熱くなった。
けれど、それで終わりではなかった。
「次はこれだ」
ガルドが差し出したのは、細長い鉄片だった。
「小刀を打て。釘よりもずっと難しい。だが、ここを越えねば一人前とは言えん」
アリアが驚いた顔で父を見る。
「父さん……もうそんな課題を?」
「叩くしぶとさはある。あとは形にできるかだ」
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鉄を炉に入れる。
火の中で息づく音を聞き、橙から黄へ変わる呼吸を逃さず掴む。
槌を振り下ろす。
火花が飛び、鉄は伸び、形が少しずつ刃に近づいていく。
豆が裂け、血が滲んでも止めない。
額の汗が目に入ってもしぶとく叩き続けた。
「もっと角度を! 刃に息を吹き込め!」
ガルドの檄が飛ぶ。
「くっ……!」
歯を食いしばり、槌を打ち込む。
ガンッ、ガンッ!
音が変わった。鋭く澄んだ響きが、工房に広がった。
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やがて夕暮れ。
台の上には一本の小刀が横たわっていた。
歪みはある。刃も甘い。だが確かに“刃物”だった。
「……できた」
その瞬間、視界に淡い光が浮かぶ。
――――――
【スキルログ】
・《鍛冶》 Lv1 取得
――――――
「……っ!」
胸が震えた。努力が、報われたのだ。
「やったな」
カインが豪快に肩を叩く。
「初めてにしちゃ上出来だ!」
「父さん、どう?」
アリアが小声で問う。
ガルドは無言で小刀を持ち上げ、しばし眺めると短く言った。
「……悪くない。よく続けた」
それだけだった。だがその言葉の重みは、どんな褒め言葉よりも深く響いた。
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孤児院に戻り、子どもたちに小刀を見せた。
「すごい! 本当に作ったの?」
「これでパン切れる?」
歓声と笑顔に囲まれ、院長先生は涙ぐんで俺の頭を撫でた。
「立派になったねえ、トリス」
アリアが隣で笑う。
「パン切り包丁にはまだまだだけどね」
「う……確かに」
照れ笑いしながらも、胸は誇らしかった。
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その夜、布団の中で小刀を握りしめる。
俺の道は鍛冶じゃない。けれど、この火と鉄に向き合った日々は無駄じゃない。
炎の中で学んだのは、よく見ること。
何度折れても立ち上がること。
そのしぶとさは、必ずこれからの戦いに繋がっていく。
「……俺は、もっと強くなる」
胸の奥で、まだ槌音が響いている気がした。
それは失敗と努力の証。そして未来へと続く、俺だけの節拍だった。
初投稿です!みなさんおてやわらかにお願いします。
AIをとーても使いながらの執筆となっております。




