帰還と報告
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50層の転送陣が光を放つ。
蒼晶の粒が舞い、視界が白くほどけ
次の瞬間、
あの懐かしい夜風の匂いが頬を撫でた。
「……帰ってきたな」
俺が呟くと、広場の蒼晶灯が揺れた。
アリアがその場にへたり込み、両手を広げる。
「はぁぁぁ……地面が柔らかい……最高……」
ノクスは影から出てきて、
屋台の匂いを“くんくん”。完全に帰宅モードだ。
アージェはミーナの横に座り、
背中を預けるように寄り添う。
「みんな、お疲れさま。今日はもう……休むどころじゃないわね」
ミーナが苦笑する。
「だな。あれは……報告しないといけないレベルだ」
50層で遭遇した魔族。
蒼晶の汚染。
紅と蒼の異常な混合。
そして、まだ下に“本命”がいるという確信。
どれも軽く扱える内容じゃない。
「行くか。領主館に」
⸻
蒼晶による照明が柔らかく部屋を照らす。
この部屋で行われる会議は、
ハルトン全体に影響が出る案件ばかりだ。
机の上には、蒼晶地図が展開されている。
俺、アリア、ミーナ、
そして研究所の魔導官たちが席についた。
「それで、本当に魔族だったんですか?」
若い魔導官が震えながら尋ねる。
「ああ。間違いない」
俺は頷く。
ミーナが机に指を滑らせ、
魔導具を起動して“記録光像”を映し出す。
50層で見た、蒼と紫の歪んだ光。
大量に剥ぎ取られた蒼晶。
そして紫晶魔族。
部屋の空気が凍りついた。
「蒼晶が……食われている……?」
「紅晶の暴走が、魔族の仕業……?」
ざわめく魔導官たちを、
ミーナの強い声が制した。
「みなさん、落ち着いてください。
あいつは“侵入者”です。
蒼晶の力を歪め、何かを探しているようでした」
「探している?」
アリアが眉を寄せる。
「ええ。しかも……トリスを“蒼晶の器”と呼んだ」
視線が一斉にこちらに集まる。
俺は苦笑しつつ肩をすくめた。
「知らないうちに変な称号つけられたみたいだな」
「笑い事じゃないわよ!」
アリアが机を叩く。
「器って何よ!? 狙われてるってことじゃない!」
「まあ……そうだな」
ミーナが唇を噛む。
「問題はそこじゃないわ……
さらに深くへ降りた魔族が“本命”……あれはまだ前座。
蒼晶の汚染……紅晶の暴走……全部、下から広がってる」
「つまり、放置したら──」
アリアが呟く。
「地上にまで影響が出る可能性がある、ってことか」
「……ありえるわ」
ミーナの声は震えてなかった。覚悟の声だ。
魔族を野放しにはできない。
⸻
「トリス」
ミーナがこちらを見た。
「すぐ潜るのは危険よ。
ディスカリアと戦った疲労が残ってる。
それに、装備も魔導具も“深層仕様”に整えないと」
「わかってる。あれより強いのが下にいるって、全員わかったからな」
アリアが腕を組む。
「まずは、私の矢を強化する。
紅晶に斬られたし、紫晶の波動にも耐えられなかった。
もっと深層仕様の素材がいるわ」
「私はノクスとアージェの補助装備を作る」
ミーナが続けた。
「深層は音と魔力が乱れてる。
感覚系の従魔の負担が大きいわ」
「俺は……蒼晶との“干渉反応”を調べる」
俺は静かに答えた。
「紫に汚された蒼晶と、俺の魔力が反応した理由。
それを知れば……たぶん、次の階層での鍵になる」
まとめ役の魔導官が言った。
「準備に三日いただければ、
“深層攻略用の蒼晶装備”を開発できます」
「三日後、再突入だな」
アリアが頷き、ノクスが“シャッ”と鳴いた。
アージェは低く唸って賛同の意を示す。
そしてミーナが微笑む。
「三日後、私たちが、蒼晶の未来を決める」
戦いは終わっていない。
むしろここからが“本当の深層”。
紫晶魔族の本命が眠る、地の底へ……
俺たちは必ず辿り着く。
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