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転生したら孤児院育ち!? 鑑定と悪人限定チートでいきなり貴族に任命され、気付けば最強領主として国を揺るがしてました  作者: 甘い蜜蝋
蒼き都、動き出す

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音を喰う階層と喰晶獣

このまま、1日2話更新で年内走り抜けますが、更新の時刻はまちまちになります。すみません。

読んでくださる方々ありがとうございます。どうか顔文字の評価ボタンか★マークを押してもらえるとありがたいです。

 階段を降りた瞬間、鼻の奥がツンとした。


 蒼晶の澄んだ匂いじゃない。

 紅晶の金属っぽい匂いでもない。


 もっと……嫌な、鉄と血を混ぜたみたいな空気。


「……空気、重すぎない?」

 アリアが眉をひそめた。


「うん。魔力じゃなくて“匂い”で喉が痛い」

 ミーナが胸元を押さえた。


 わかる。

 空気そのものが、何かに“汚染されてる”。


 しかも、この階層の空気は“静かすぎ”た。

 足音さえ吸い込まれていく。


「ノクス、どうだ?」

“……シャ”


 ノクスが影を伸ばすが、すぐに戻ってきて耳を伏せた。


「音……吸われてるな」

 俺は小さく呟いた。


 音が消える階層なんて、今までなかった。


「ここの主、絶対まともじゃないわ」

 アリアが矢を番える。


「気を張っていけ。ここから“何か来る”」


 その時。


 ズルッ。


 通路の奥で、石が“食われた”みたいな音がした。


「……今の、何?」

「石を“噛んだ”音だ」


 アリアの顔が青くなる。


 そしてゆっくり、奥の暗闇からそれは姿を現した。


 四足の獣。

 大人の狼より一回り大きい。


 だが普通じゃない。


 喰晶獣クリスタル・ガルム

 頭部は蒼晶の仮面。

 胴体は紅晶の筋肉。

 背中には紫色の晶のトゲ。


 そして口には

 砕けた蒼晶の“破片”が挟まっている。


「……食ってるのかよ、蒼晶を」

 俺は思わず呟いた。


 ミーナが震える声で言う。

「こんなの、見たことない……。蒼晶も紅晶も“喰って”強化してる……」


「やばっ。見た瞬間わかるやつじゃん。強いに決まってるじゃん」

 アリアが乾いた笑いを漏らす。


 喰晶獣クリスタル・ガルム


 名前を言った瞬間

 ガルムの喉がグッと鳴った。


 次の瞬間、


 音もなく、消えた。


「ッ!?」

「トリス、右!!」


 アリアの叫び。

 そっちへ振り向くより早く


 ガギィンッ!!


 アージェの障壁へ、ガルムの爪が叩きつけられる。


「ガウゥッ!!」


 銀の火花が散った。


 ただの爪じゃない。

 晶の刃だ。障壁が削れている。


「ノクス、影走り!」

“シャッ!!”


 ノクスが影から跳びかかる。


 だがガルムは瞬時に後ろへ跳ね、影を踏み潰すように晶刃を振り下ろした。


「にゃ!!!!」


 ノクスが転がって避ける。


 速い。

 強い。

 硬い。



「アリア!」

「任せて!!」


 アリアの矢が三連射。

 だがガルムは晶の爪で矢をすべて砕いた。


「ちょっ!? 矢を砕くの!?」

「こいつ……相当だぞ」


 間違いない。

 “喰って”成長しているタイプの魔物だ。


 なら


「ミーナ、足止めできるか?」

「できる! けど……外したら私が持ってかれる!」


「外させねえよ」


 刀《繋》に雷を流す。


「アージェ、正面から押し込め! ノクス、右斜め!」

「ガウッ!」「シャッ!」


 アージェが正面から牽制し、ガルムの足を止める。

 ノクスが斜めに走り、動線を切る。


 今だ――ミーナ!


「《水鎖》!!」


 床から巻き上がる渦が、ガルムの脚を絡めた。


「今!! トリス!!」


「おう!!」


 雷の脚で一気に踏み込む。

 ガルムがこちらを振り向いた瞬間、


「させねえよ!!」


 刀が紫晶のトゲを切り裂き、

 その勢いのまま――


 蒼晶マスクの額へ一閃。


 パリン――!!


 晶が砕け、紫の光が飛び散る。

 ガルムは大きく体勢を崩し、


「ノクス!!」

“シャァッ!!”


 影の爪が、喉元を貫いた。


 ガルムの身体が蒼と紅の粒になって崩れた。


 


 静寂。


「……終わった?」

 アリアが弓を降ろす。


「いや……まだだ」


 ミーナの声が震えていた。


「空気の結晶濃度……ガルムを倒したのに上がってる」


「奥にいるんだな」

「うん。今のガルムを“作った奴”が、もっと奥で待ってる」


 奥の通路から、薄い紫の風が吹いた。


 まるで

 『ここへ来い』

 と誘っているように。


「……行くぞ」

 俺は刀を握り直す。

応援ありがとうございます!

皆さんのブクマや評価が更新の大きな力になっています!٩( 'ω' )و

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