紅牙の咆哮、獣道を切り拓け
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蒼晶の眠る洞 第46層
空気が変わった。
階段を一歩降りた瞬間、
まるで“獣の巣の中心”へ踏み込んだみたいに、
胸の奥を低い唸りが這い上がってくる。
光源はいつもの蒼晶じゃない。
壁に走る無数の結晶が、淡く紅色に脈動している。
「……完全に染まってるわね」
ミーナが息を呑む。
蒼晶の淡い青ではなく、
血のような赤が壁を照らし、床の影を長く歪ませていた。
アリアが弓を構えながら、周囲を見渡す。
「感じる? この圧。……“肉食獣の気配”よ」
「うん。……嫌な静けさだな」
俺は刀《繋》に手を置き、ゆっくり前へ出る。
ノクスが“シャッ”と尻尾を立てた。
アージェは低く唸り、毛並みが逆立つ。
ルメナの翼がわずかに震え、光が細くなる。
いる!
紅晶の向こうに、確実に“何か”が潜んでいる。
それも一匹なんて数じゃない。
鼓動を刻むように結晶がチカチカ光り、
洞窟の奥へと誘う。
「トリス……何か聞こえない?」
ミーナが不安げに囁く。
「……ああ。聞こえる」
ギリッ……ギリリ……
牙が擦れ合う音。
ゆっくり、ゆっくり近づいてくるその音が、
紅晶の壁を震わせていた。
そして
バキッ!!
紅晶の地面が割れた。
飛び出してきたのは、
真紅の結晶を棘のようにまとった巨大な虎。
紅晶牙虎。
肩までの高さが俺の胸近く。
背中には紅晶の結晶棘がいくつも突き出し、
歩くたびに赤い破片がパラパラと落ちる。
目は血のような赤。
牙は蒼晶の光を反射して妖しく輝く。
吠える
「ガァァアアアアアアッ!!」
その咆哮と同時に、
紅晶壁がビリビリ震え、奥の暗闇がざわめいた。
「……いやいや待って、これ……」
アリアが苦笑いする。
「群れだわ。完全に群れで出てくるパターンよ」
影の奥で、
十数の紅い瞳がぽつり、ぽつりと灯る。
ミーナが小さく息を呑んだ。
「紅晶に汚染されて……群れ全体が、狂暴化してるのよ……!」
「来るぞ……!」
ノクスが影を走り、
アージェが前へ躍り出て《魔障壁》を展開する。
ルメナが羽を震わせ、
蒼と紅の光が入り混じる。
クリムファングタイガー一体が地を蹴った。
床ごと砕けるほどの踏み込み速度。
アリアがすぐに矢を番える。
「初手から大技ねッ!」
だが、攻撃は一匹じゃない。
天井から、壁から、床から、
紅晶棘をまとう虎たちが一斉に飛び出した。
「団体歓迎かよ……!」
俺は刀を構え直す。
紅晶の瞳が一斉に俺たちを捉える。
そして、
牙が、迫った。
「行くぞ!!
ここから先、紅晶の奥に何が潜んでるのか……全部ぶっこじ開ける!!」
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