違和感
このまま、1日2話更新で年内走り抜けますが、更新の時刻はまちまちになります。すみません。
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紅晶の仮面が砕け、
白光が弾けて霧のように消えた。
部屋の空気が一瞬だけ軽くなる。
アリアが弓を下ろし、
ミーナが安堵の息を吐き
「……終わった、のよね?」
俺も刀をゆっくりと下げる。
「戦闘はな。だが……」
言いかけた瞬間だった。
足元の蒼晶が、
チッ……チッ……と小さく赤く染まり始める。
退色のようでもなく、
傷のようでもなく
まるで 何かが上書きしてる。
「……あれ?」
アリアが目を瞬く。
「クリムアーキストを倒したんだよね?
だったら紅晶の変質も……」
普通なら終わる。
ボスを倒せば、異常な生成源は途絶えるはず。
ところが。
チ……チ……ッ……
蒼晶の脈が不規則に赤を混ぜる。
「待って。おかしいわ」
ミーナが魔導計を展開した瞬間、
針が狂ったように暴れた。
「反応が……消えてない!
クリムアーキスト由来の魔力、まだ流れ込んでる……!?
でも、ここにはもう“核”が存在しないはずなのに……!」
「つまり、発生源が他にあるってことだ」
俺が言うと、
ミーナが蒼ざめた顔で首を振る。
「違う……もっと悪いわ。
これは……“上位存在からの干渉”。
ここの層とは別の場所から、紅の魔力が注がれてる」
その言葉が落ちた瞬間、
空気がひやりと震えた。
紅晶の光が、床下へ向かって吸い込まれるように流れている。
アリアが息を呑む。
「ねえトリス……こういうのって普通なのかな?」
「……いや。絶対にありえない」
蒼晶は“自律した成長鉱石”だ。
上からの魔力に反応はしても、下層からの逆流はない。
それなのに
45層の蒼晶が、まるで 誰かの指示を聞いている かのように紅く明滅している。
まるで。
紅の魔力を、
下層
もっと深い“中心”から押し上げているような。
ノクスが低いうなり声を上げ、毛を逆立てる。
アージェも背を低くし、
洞窟の奥。46層へ続く階段の闇を睨んだ。
ルメナが肩で羽を震わせる。
「……ッキュル……」
震えている。
まるで、見えない“何か”の匂いを感じているように。
「ミーナ、まとめてくれ」
ミーナは深呼吸し、短く言った。
「クリムアーキストは“生成装置”。
でもその装置を動かしていた“操縦者”が、まだ下にいる……」
「操縦者?」
「それも……人間じゃない」
アリアが息を止めた。
「魔物……じゃないの? じゃあ何?」
ミーナは蒼晶脈を睨み、唇を噛む。
「……魔族よ。
こんな動き、魔族以外にできるはずがない」
部屋の空気が一瞬で冷えた。
蒼晶が赤く染まり続ける音が、
まるで嘲笑に聞こえる。
俺は階段の奥を見据え、刀の柄を握った。
「……46層から下に、“いる”ってことか」
「そう。
この紅晶化は、クリムアーキストじゃなく
下の階層の“本体”が起こしてる」
アリアが息を飲み、ノクスとアージェがうなる。
ミーナは震える声で続けた。
「感覚的に……50層に近い場所からの干渉。
たぶんそこに、“原因がいる”。
クリムアーキストはその代理でしかなかったのよ……!」
俺はゆっくり刀を抜いた。
「……よし。
だったら確認しに行くしかないな」
蒼晶の足元が、再び赤く瞬いた。
まるで誘うように
まるで嘲笑うように
下へ、来い。
そう言われているようだった。
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