雷閃一刀
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紅い羽根が十六枚。
空気を裂き、空間を削り、広間を“殺す機械”に変えてゆく。
クリムアーキストが、再び指を鳴らした。
パチン。
赤い閃光が散り
十六の殺意が、空中で弧を描く。
その瞬間、
仲間たちが一斉に動く。
「アリア、右上! 絶対にそっちが本命!」
「わかってる!!」
アリアが矢を連射しながら、
羽根の軌道をわずかに乱す。
しかし、軌道が“修正”される。
紅晶の羽根はまるで意思を持つかのように蛇行し、再び俺たちへ向かう。
「くそ……避けても追ってくるの!?」
「“誘導機構付きの刃”よ! 魔族の工兵部隊に使われてたって聞いたことあるわ……!」
ミーナが叫ぶが、説明している暇はない。
上から四枚、
横から六枚、
床からは紅晶の槍が一斉に伸び
完全包囲。
逃げ道はゼロ。
アージェが咆哮し、
ノクスが影を裂いて飛び出す。
「トリス!! どうするのよ!!」
アリアの声。
ミーナの震える声。
従魔たちの唸り。
無理だ。このままじゃ防ぎ切れない。
紅晶の羽根は、速度も威力も、もう“中層”の域じゃない。
ここで押し返せなきゃ終わる。
俺は刀《繋》を構えた。
刃に走る雷光が、いつもより荒々しい。
胸の奥が熱を帯びる。
息を吸う。
蒼晶でもなく、紅晶でもなく、
俺自身の魔力だけを――全開で走らせる。
「トリス……? その魔力の出し方……危険よ……!」
ミーナが青ざめる。
「いいんだ」
俺は前へ踏み出す。
紅晶の羽根が迫る。
刃先の赤光が視界に満ちる。
「本気で行かないと……誰も帰れねぇ!」
雷が俺の背中に走り、
一気に全身に駆け上がる。
髪が逆立ち、視界が白く染まる。
刀《繋》が雷鳴を吐く。
奥の手。
トリスが封じていた“やりすぎる力”。
《雷閃一刀》――暴走限界。
仲間たちが息を呑む。
「トリス!! それはダメ!! 身体がもたない!!」
「今はいい!! 今だけでいい!!」
紅い羽根が、
距離ゼロの間合いに迫った瞬間。
俺は叫ぶ。
「全員伏せろォォォォッ!!!!」
雷が爆ぜた。
刹那。
視界が白に染まり、空気が消えた。
世界が一瞬、無音になる。
そして――
バアアアアアアアアンッッ!!!!!!
雷の奔流と、
俺の斬撃が重なって“衝撃波”になった。
床が砕け、
紅晶の壁が割れ、
紅い羽根たちが一瞬で蒸発していく。
クリムアーキストの操っていた結晶が、
まとめて吹き飛ばされる。
閃光の中心にいた俺の身体を、
ルメナの光翼が必死に包んだ。
アリアが耳を押さえ、
ミーナは結界を必死に維持し、
アージェとノクスは地面に身体を伏せる。
雷の斬撃が収まったとき――
紅晶の海が一か所、
ぽっかりと“抉れて”いた。
そこにクリムアーキストが立っていた。
しかし、
仮面にヒビが入っている。
胸元の紅晶が砕け、
内部の黒い金属が露わになっていた。
「……効いたな」
刀を肩に担ぎ、
苦笑いを浮かべる。
ミーナが駆け寄り、怒鳴る。
「バカ!! 死ぬ気なの!?」
「死んでねぇから大丈夫だ」
「大丈夫じゃない!! その魔力、明らかに限界突破して……!」
そのとき。
ガラ……ガラガラ……
クリムアーキストが動いた。
仮面の赤い線が、
ゆっくりと“縦”に割れた。
まるで――笑っているように。
「マジかよ……まだ立つのか……!?」
次の瞬間、
奴の背中で“紅晶の羽根”が再構築され始める。
だが、枚数が少ない。
四枚。
けれど輝きが違った。
今までの十六枚と比べて、強度も密度も異常。
「ねぇトリス……これ……」
「わかってる。
今ので追い詰められたのは向こうだ……!」
クリムアーキストが腕を広げる。
四枚の“極紅結晶”が、
空気をえぐるように震える。
「次が来るぞ……!」
アリアが弓を構え、
ミーナが結界を張り直し、
従魔たちが身構える。
そして
パチン。
戦いは次のラウンドへ突入した。
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