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転生したら孤児院育ち!? 鑑定と悪人限定チートでいきなり貴族に任命され、気付けば最強領主として国を揺るがしてました  作者: 甘い蜜蝋
蒼き都、動き出す

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機巧戦獣

このまま、1日2話更新で年内走り抜けますが、更新の時刻はまちまちになります。すみません。

読んでくださる方々ありがとうございます。どうか顔文字の評価ボタンか★マークを押してもらえるとありがたいです。

 紅晶合成獣クリムギアビースト

 天井から、壁から、床から――

 一斉に“落ちてきた”。


 ガギャアッ!!


 金属を噛み合わせたような濁った咆哮。

 核を中心に組み上がった獣の形は、

 狼でも虎でもない。


 〈四足獣のシルエットをした機巧戦獣〉。


 肩と背中に刃の板を背負い、

 関節は紅晶の節を連結したように“カキンカキン”と音を鳴らす。


 赤い光の眼が、標的である俺たちを正確に捉える。


「ミーナ、後衛固定! アリア、右側を抑えろ!

 ノクスは影から急所狙い、アージェは前衛固定!!」


「了解っ!!」


 指示が飛ぶと同時に、

 最初の一体が俺の頭上へ降りてきた。


 紅晶の前脚が刃そのもので、

 空気を裂くように振り下ろされる。


「――遅いッ!」


 俺は半歩下がり、

 刃の腕の下を滑り込むように潜り、


 ズガンッ!


 《繋》を振り抜いた。

 斬撃が紅晶の胴を裂き、獣が火花を散らしながら弾け飛ぶ。


 しかし――


「再結晶化!? まだ動くのかよ!」


 倒したはずの破片が、

 その場で“細い糸”に引かれるように再構築される。


 核の紅い光が点滅し、

 砕けた破片がもう一度獣の形へ――。


「トリス! “核”を壊さないと無限再生よ!!」


「わかってる!!」


 再生中の核へ駆け込もうとした瞬間――


 パチン。


 また、指を鳴らされた。


 その合図で、

 クリムギアビーストが“二倍の速さ”で跳んだ。


 ギギギギィィ!


 アリアの横から二体が飛びかかり、


「させない!!」


 アリアが反転し、

 影が残るほどの速さで弓を三連射。


 矢はそれぞれ、

 脚関節・喉元・核――

 全部、最短距離で射抜かれる。


 カキィィン!!


 しかし核に当たった矢は弾かれた。


「核の硬度……高すぎ!!」


「ミーナ!! 分析頼む!!」


「くっ……ちょっと待って!!

 紅晶、通常の蒼晶より密度が二段階上……!

 核だけ“魔族加工”が入ってる可能性がある!!」


「魔族加工……!」


 やっぱり、こいつはただの結晶使いじゃない。


 その時、


 ――影が裂けた。


 ノクスだ。

 影を線に伸ばし、

 一体の背後から一瞬で喉元へ飛びかかる。


 ガキィィ!!


 鋭い牙が紅晶の喉を噛み砕き、

 獣が“上半身だけ”粉砕された。


 核がむき出しになる。


「そのまま行け、ノクス!!」


 影猫は即座に影へ潜り、

 核へ急降下――


 だが。


 クリムアーキストの“紅晶の目”がノクスを捕捉した。


 赤い縦線がノクスの動きをトレースし、

 その先へ“紅晶の槍”が生える。


「ノクスッ!!」


 言葉より先に、

 アージェが突っ込んだ。


 銀狼の突進が槍の根元をへし折り、

 ノクスを影ごと弾き飛ばす。


 アージェの肩を紅の破片が裂く。


「アージェ!!」


 ミーナの悲鳴。

 だがアージェは痛みを振り切り、

 俺の横まで戻ってくる。


 低く唸り、尾を振る。


 ――大丈夫だ、行け。


 その目がそう言っていた。


「行くぞ……!!」


 俺が横目でミーナを見る。


「核を壊す方法、何かあるか!!」


「ある! 一つだけ!!」


 ミーナが震える手で魔導板を展開した。


「核は“紅晶化した蒼晶”……つまり、

 蒼晶の『正反対の魔力』を強くぶつければ割れる!!」


「正反対……!」


 紅晶は火属性にも似た暴走結晶。

 なら逆は――


「――“冷却”だ!!」


「そう!! 蒼晶の状態に戻すほどの冷気なら、核が耐えられない!」


「やるしかねぇ!!」


 俺は刀《繋》を構えた。


「アリア!! 核を露出させる!!」

「了解!!」


 アリアが跳躍し、獣の脚関節へ正確な射撃を放つ。


「ノクス!! 影を繋げて通り道を作れ!!」

“ニャッ!!”


 影が獣の背から背へ一本の“道”のように伸びる。


「アージェ!! 俺の正面を開けろ!!」

「グルルッ!!」


 アージェが獣を弾き飛ばし、

 核までの一直線の道が開けた。


 その中央――

 クリムアーキストの紅晶の目が、

 俺の動きを完全に捕捉する。


 赤い線が俺の影をなぞった。


「……トリス、狙われてる!!」

「上等だッ!!」


 俺は地を蹴った。


 影の道を蹴り、

 紅晶の群れを走り抜け、

 視界すべてが赤に染まる。


 核が、真正面にある。


「――砕けろォッ!!」


 刀に冷気を纏わせ、斬り下ろす。


 凍気の刃が核に叩き込まれた。


 バキィィィィン!!!!


 紅晶核が凍りつき、

 一瞬だけ、脆い“蒼の結晶”へと戻る。


「今!! アリア!!」


「任せて!!」


 アリアの矢が飛ぶ。


 キィン!!!!


 霧散。


 核が砕け、破片が光の粉となって消えた。


 直後――


 紅晶合成獣たちが動きを止め、

 一斉に崩れ落ちた。


 ギシィ……ガラガラッ……


 紅く染まる床に、粉雪みたいに散っていく結晶片。


 その奥で、

 クリムアーキストが“仮面をわずかに傾けた”。


 まるで、


 「ほう……?」


 と言っているように。

応援ありがとうございます!

皆さんのブクマや評価が更新の大きな力になっています!٩( 'ω' )و

「次話も楽しみ!」と思っていただけたら、ポチっとお星★様を押してもらえると嬉しいです!

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