紅に染まる異形
このまま、1日2話更新で年内走り抜けますが、更新の時刻はまちまちになります。すみません。
読んでくださる方々ありがとうございます。どうか顔文字の評価ボタンか★マークを押してもらえるとありがたいです。
階段を降りた瞬間、地面がうねった。
土ではない。紅晶が波打ったのだ。
足元が脈を打ち、赤い光が一斉に走る。
視界の端で、壁が生き物のように蠢く。
「……っ! 動いてる!?」
アリアが弓を構える。
ミーナの声が重なる。
「紅晶が……生き物を取り込んでる!」
壁の中から、黒い影が飛び出した。
紅い蔦に覆われ、四足の姿をしている――だが、目がない。
頭部には紅晶が突き出し、まるで角のように光を放っていた。
それが、声を上げた。
悲鳴とも獣ともつかない、耳を裂く鳴き声。
紅晶寄生獣。
動きは狼よりも速く、蛇のように滑らかだった。
身体の紅晶が空気を切り裂き、光の尾を残す。
「寄生タイプ……!?」
ミーナが魔導計を叩く。
「内部に紅晶が根を張ってる。肉体を操ってるのよ!」
ノクスが影を走らせ、奴の足元へ潜る。
しかし、床の紅晶が“跳ねた”。
影が引き裂かれ、ノクスが後方に飛び退く。
“ニャッ”と怒りを上げ、毛を逆立てた。
「紅晶そのものが防衛してるのか……!」
トリスは刀《繋》を構える。
「アージェ、正面! アリアは側面援護!」
「了解!」
「ウオオオオォン!」
銀狼の突進。
牙が寄生獣の肩に食い込むが、肉ではなく紅晶を噛んでいた。
金属音が響き、火花が散る。
「硬すぎる!」
「紅晶が骨にまで入り込んでる!」ミーナの声が震える。
「でも、魔力の核は胸の奥……あそこが本体よ!」
「了解!」
トリスが飛び込み、雷を纏って一閃。
刃が紅晶の鎧を裂き、蒼い火花を散らす。
中から黒い血が吹き出し、寄生獣がのけぞる。
だが――倒れない。
裂け目から紅晶が再生を始めた。
まるで、血が結晶化して肉を再構築していくように。
「再生速度が上がってる……! 前よりも!」
「紅晶が“成長”してやがるのか」
トリスは舌打ちし、蒼光を纏わせた。
「ミーナ! 抑制できるか!」
「やってみる!」
ミーナが杖を突き立て、蒼光陣を展開する。
光が広がり、紅と蒼がぶつかる。
バチバチと音が弾け、洞窟全体が震えた。
寄生獣たちが苦悶のように叫ぶ。
身体の紅晶が軋み、蒼い光に押されていく。
「今だ!」
トリスが踏み込み、連撃。
雷閃が走り、寄生獣の胸を貫く。
紅晶が砕け、光の霧を吐き出して崩れ落ちた。
静寂。
しかし、終わりではない。
天井が鳴いた。
紅い線が上から垂れ、蔦のようにうねり始める。
「上……!? まだいるの!?」
アリアが叫ぶ。
紅晶の天井を破って、巨大な塊が降ってきた。
形を持たない肉塊。
だがその中で、いくつもの顔が蠢いている。
獣、人、鳥――過去にこの層で死んだ者たちの姿を、紅晶が取り込んでいた。
紅晶融合体。
空気が震えた。
ミーナの目が恐怖に見開かれる。
「……これ、紅晶が自分で進化してる!」
「上等だ」
トリスは雷を纏い、刀を握り直す。
「なら、ここで止める!」
アージェが咆哮し、ノクスが影を走る。
ルメナが蒼光を放ち、紅の肉塊を照らす。
紅と蒼。
光と影。
爆音と閃光が交錯し、洞窟全体が揺れた。
紅晶の破片が舞い、
その中心でトリスが雷閃を叩き込み、轟音が弾けた!
紅晶が砕け、光が弾ける。
やがて霧が晴れ、紅の波が静まった。
洞窟の奥に、かすかな脈光だけが残る。
「……これで、少しは紅晶の増殖が止まるか」
ミーナが息を吐く。
「でも、この現象……自然の域を越えてるわ」
トリスはうなずいた。
「誰かが、“紅晶”を操ってる。
やっぱり、ただの魔物じゃないな」
彼の視線の先。
奥の壁に、異様な刻印が浮かんでいた。
まるで、何者かの手による“印”のように。
応援ありがとうございます!
皆さんのブクマや評価が更新の大きな力になっています!٩( 'ω' )و
「次話も楽しみ!」と思っていただけたら、ポチっとお星★様を押してもらえると嬉しいです!




