第40層 紅晶の深奏
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轟きが、止まらなかった。
崩れ落ちた紅晶蛇鎧の残骸が、まだ微かに光を放っている。
それが脈を打つたび、洞窟全体が“低く唸った”。
「層そのものが……歌ってるみたいね」
ミーナの声は静かだったが、どこか震えていた。
蒼と紅――相反する光がゆっくりと混ざり合い、地の底で音を紡いでいる。
それは、不気味なほど美しい“調べ”だった。
「この響き……まるで“誰かに聴かせてる”みたいだ」
アリアが弓を下ろし、眉をひそめる。
「そう聞こえる」
トリスが頷く。
蒼晶の明滅がリズムを刻み、紅晶の光が旋律を描いている。
「……待って。これ、地上にまで届いてる」
ミーナが魔導計を操作し、声を強めた。
「ハルトンの蒼晶塔が反応してるわ! ダンジョンビューの中継回線に“干渉”してる!」
⸻
同じ頃、地上。
ハルトン中央広場の巨大スクリーンに映し出された映像が、突然ノイズを走らせた。
観客たちはざわめき、技師たちが魔力計を叩く。
「蒼晶塔の共鳴が強すぎる! 映像信号が反転してる!」
「出力落とせ! ……いや、待て、あれは──!」
画面の奥。
紅と蒼が交差し、光が渦を巻く。
その中心に立つのは――刀を構えるトリス。
雷が走り、観客席に歓声が沸いた。
それは恐怖ではなく、熱狂だった。
⸻
洞窟に戻る。
「地上の映像塔が反応してる……?」
トリスが小さく笑った。
「つまり、今の俺たちの戦い、全部見られてるってわけか」
「ええ。都市中が見てるわよ」ミーナが頷く。
「……でも、これ、紅晶が“人の魔力波”に干渉してるの。
つまり、観測することそのものが刺激になってる」
「つまり、注目されるほど強くなるってことか……めんどくせぇな」
アリアが苦笑する。
「やっぱり見世物ってのは性に合わない」
その時、紅の光が大きく脈打った。
天井の蒼晶が音を立てて割れ、
そこから、巨大な腕のような紅晶が突き出した。
「うわっ……何、これ!?」
「まだ終わってなかったのか!」
腕は絡み合い、やがて形を取る。
紅晶の獣――いや、紅晶の巨人。
紅と蒼の光を纏い、洞窟の中央でゆっくりと立ち上がった。
「……まるで、この層そのものが立ち上がったみたいだ」
トリスが呟く。
ミーナの魔導計が悲鳴を上げる。
「ダメ……これ、共鳴値が振り切れてる! “層の支配個体”よ!」
「やれやれ、いいところを見せてやるか」
トリスが刀《繋》を抜く。
雷が刃を走る。
地上の映像が、その瞬間を鮮烈に映した。
⸻
“地上と地下が呼応する”。
蒼晶塔が鳴り、紅晶層が唸る。
魔力の波が都市全体を包み、観客たちは息を呑む。
トリスの瞳が光を映した。
――戦いが始まる。
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