表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら孤児院育ち!? 鑑定と悪人限定チートでいきなり貴族に任命され、気付けば最強領主として国を揺るがしてました  作者: 甘い蜜蝋
蒼海に生まれた絆 ― 小さな竜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

235/287

第34層 光る影の群れ

評価ポイント押してもらってたり、最後に親指グッドとかの数が増えてたり、ランキング情報が日々出てきてワクワクしてます。ただ、投稿スピードが異常なのでこっそり修正もしております!ごめんなさい。

踏み出した瞬間、空気が変わった。

 冷たく、けれど乾いていない。

 壁という壁が蒼く光り、まるで“洞窟そのものが呼吸している”ようだった。


「……綺麗、だけど……嫌な感じね」

 アリアが囁く。

 光が柔らかすぎる。奥の景色が滲んで見えるのだ。


 俺は腰を落とし、掌を床に当てた。

 ひやりとする氷の感触――いや、氷じゃない。

 これは……鏡のような蒼晶だ。


「反射してる。壁も、床も、全部……」

 ミーナが顔を上げる。

 光の揺らぎが彼女の眼鏡に映り込み、細い眉が動いた。

「魔力波が不安定。……ねえ、トリス。蒼晶自体が“共鳴”してるわ」

「共鳴?」

「そう。空気に魔力が混ざってて、視覚と聴覚が狂わされる。……これ、自然じゃない」


 その時だった。

 ノクスの耳がピクリと動く。

 影の中で瞳が縦に細くなった。

 低い唸り声。警告だ。


 俺は即座に刀《繋》を抜く。

 アージェが前へ出て、低く咆哮した。


 ――床が、動いた。


「下っ!?」

 アリアの声と同時に、蒼い床面が波打ち、光の筋がうねりながら形を変えた。

 細長い。鋭い。

 それは一本の“光る蛇”だった。


 瞬く間に、十、二十、三十――

 蒼晶影蛇フロストヴァイパーが床下から這い出す。


 群れ。

 まるで光の洪水が這い回るような光景だった。



「ノクス、影走り! 右前を索敵!」

 “ニャッ!”

 影が床を走る。ノクスの足跡に沿って、光の蛇が一斉に反応した。

 まるで影に釣られるように、動きが読める。


「ミーナ! 反射を止められるか!」

「やってみる!」

 ミーナが両手を組み、詠唱を重ねる。

 《蒼環の理》の輪が展開し、蒼の光が地面を包む。

 だが、すぐに光が弾かれた。

「駄目っ……光が自分で“生きてる”!」


 アリアの矢が放たれる。

 一本が影蛇を貫き、蒼い火花を散らした。

 だが、当たった瞬間

 光が分裂し、別の二体が生まれた。


「増えた!?」

「やばいね、こいつら……!」


 ノクスが天井を蹴り、アージェの背を踏んで飛び、影に潜る。

 次の瞬間、数匹の蛇が同時に“斬れたように”霧散した。

 ノクスの影撃ちが的確に核を断ったのだ。


「核を狙えば分裂しない!」

「了解!」


 ミーナが蒼環を再展開。

 今度は波紋を広げるように、空間全体の“魔力波”を測定する。

 光の蛇の動きが止まった。

「見えた……核の波長、マークした!」

 空中に淡い光点が浮かぶ。


「アリア!」

「任せて!」

 連射。矢が光点を正確に撃ち抜く。

 破裂音。

 群れが一斉に崩壊し、蒼の霧となって散った。



「……静かになった?」

 アリアが矢を下ろす。

 霧の奥、反射する壁の向こうに通路が浮かび上がる。

 だが、まだ空気が震えていた。


 俺は刀を構えたまま、奥を睨む。

「今のは“前哨”だ。まだいる」

 ルメナが肩で鳴き、薄く光を放った。

 光が天井に当たり、反射して周囲を照らす。

 そこには――

 蒼い結晶の中に、まだ数百の影が蠢いていた。


 その中心。

 一際大きな蛇が、鎌首をもたげる。

 全身を覆う結晶が脈動し、周囲の小型を操っている。


「群れの統率個体か……!」

「なら、まとめて落とす!」


 俺は刀《繋》を構え、魔力を込めた。

 雷光が刃を這う。

 アージェが吠え、障壁を展開。

 ノクスが影を走り、アリアが狙いを定める。


「一斉攻撃――行くぞ!」


 雷鳴と矢光が交錯した。

 蒼晶の洞が白く染まり、轟音が反響する。

 光の蛇たちが一瞬にして霧散し、巨大な統率個体が悲鳴のような音を立てて崩れ落ちた。



 残響が止んだ後――静寂。

 霧が晴れ、床の反射がゆっくりと消えていく。

 ただの岩と氷が戻った。


 ミーナが膝をつき、深呼吸する。

「……何とか、制御できたわね」

 アリアが笑いながら息を吐く。

「こんな“光る蛇地獄”は二度とごめんだわ」


 俺は刀を収め、前方を見た。

 奥の壁がひとりでに開き、青白い光が漏れている。

 その先――35層への道が輝いていた。


「ここまで来たな」

「うん。でも、まだまだ余裕でしょ?」

 ミーナが微笑む。

 ルメナが肩で鳴き、ノクスが尻尾を立てる。

 アージェが短く吠え、光が波のように広がった。


「行こう。蒼晶の眠る洞は、まだ“本気”を見せていない」


 その言葉に、仲間全員が頷いた。

 足元の蒼晶がわずかに光る。

 まるで――彼らの覚悟に、洞窟が応えたように。


次の階層へ。

そして、新たな“蒼の脈動”が、再び鳴り始めた。

応援ありがとうございます!

皆さんのブクマや評価が更新の大きな力になっています!٩( 'ω' )و

「次話も楽しみ!」と思っていただけたら、ポチっとお星様を押してもらえると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ