第34層 光る影の群れ
評価ポイント押してもらってたり、最後に親指グッドとかの数が増えてたり、ランキング情報が日々出てきてワクワクしてます。ただ、投稿スピードが異常なのでこっそり修正もしております!ごめんなさい。
踏み出した瞬間、空気が変わった。
冷たく、けれど乾いていない。
壁という壁が蒼く光り、まるで“洞窟そのものが呼吸している”ようだった。
「……綺麗、だけど……嫌な感じね」
アリアが囁く。
光が柔らかすぎる。奥の景色が滲んで見えるのだ。
俺は腰を落とし、掌を床に当てた。
ひやりとする氷の感触――いや、氷じゃない。
これは……鏡のような蒼晶だ。
「反射してる。壁も、床も、全部……」
ミーナが顔を上げる。
光の揺らぎが彼女の眼鏡に映り込み、細い眉が動いた。
「魔力波が不安定。……ねえ、トリス。蒼晶自体が“共鳴”してるわ」
「共鳴?」
「そう。空気に魔力が混ざってて、視覚と聴覚が狂わされる。……これ、自然じゃない」
その時だった。
ノクスの耳がピクリと動く。
影の中で瞳が縦に細くなった。
低い唸り声。警告だ。
俺は即座に刀《繋》を抜く。
アージェが前へ出て、低く咆哮した。
――床が、動いた。
「下っ!?」
アリアの声と同時に、蒼い床面が波打ち、光の筋がうねりながら形を変えた。
細長い。鋭い。
それは一本の“光る蛇”だった。
瞬く間に、十、二十、三十――
蒼晶影蛇が床下から這い出す。
群れ。
まるで光の洪水が這い回るような光景だった。
⸻
「ノクス、影走り! 右前を索敵!」
“ニャッ!”
影が床を走る。ノクスの足跡に沿って、光の蛇が一斉に反応した。
まるで影に釣られるように、動きが読める。
「ミーナ! 反射を止められるか!」
「やってみる!」
ミーナが両手を組み、詠唱を重ねる。
《蒼環の理》の輪が展開し、蒼の光が地面を包む。
だが、すぐに光が弾かれた。
「駄目っ……光が自分で“生きてる”!」
アリアの矢が放たれる。
一本が影蛇を貫き、蒼い火花を散らした。
だが、当たった瞬間
光が分裂し、別の二体が生まれた。
「増えた!?」
「やばいね、こいつら……!」
ノクスが天井を蹴り、アージェの背を踏んで飛び、影に潜る。
次の瞬間、数匹の蛇が同時に“斬れたように”霧散した。
ノクスの影撃ちが的確に核を断ったのだ。
「核を狙えば分裂しない!」
「了解!」
ミーナが蒼環を再展開。
今度は波紋を広げるように、空間全体の“魔力波”を測定する。
光の蛇の動きが止まった。
「見えた……核の波長、マークした!」
空中に淡い光点が浮かぶ。
「アリア!」
「任せて!」
連射。矢が光点を正確に撃ち抜く。
破裂音。
群れが一斉に崩壊し、蒼の霧となって散った。
⸻
「……静かになった?」
アリアが矢を下ろす。
霧の奥、反射する壁の向こうに通路が浮かび上がる。
だが、まだ空気が震えていた。
俺は刀を構えたまま、奥を睨む。
「今のは“前哨”だ。まだいる」
ルメナが肩で鳴き、薄く光を放った。
光が天井に当たり、反射して周囲を照らす。
そこには――
蒼い結晶の中に、まだ数百の影が蠢いていた。
その中心。
一際大きな蛇が、鎌首をもたげる。
全身を覆う結晶が脈動し、周囲の小型を操っている。
「群れの統率個体か……!」
「なら、まとめて落とす!」
俺は刀《繋》を構え、魔力を込めた。
雷光が刃を這う。
アージェが吠え、障壁を展開。
ノクスが影を走り、アリアが狙いを定める。
「一斉攻撃――行くぞ!」
雷鳴と矢光が交錯した。
蒼晶の洞が白く染まり、轟音が反響する。
光の蛇たちが一瞬にして霧散し、巨大な統率個体が悲鳴のような音を立てて崩れ落ちた。
⸻
残響が止んだ後――静寂。
霧が晴れ、床の反射がゆっくりと消えていく。
ただの岩と氷が戻った。
ミーナが膝をつき、深呼吸する。
「……何とか、制御できたわね」
アリアが笑いながら息を吐く。
「こんな“光る蛇地獄”は二度とごめんだわ」
俺は刀を収め、前方を見た。
奥の壁がひとりでに開き、青白い光が漏れている。
その先――35層への道が輝いていた。
「ここまで来たな」
「うん。でも、まだまだ余裕でしょ?」
ミーナが微笑む。
ルメナが肩で鳴き、ノクスが尻尾を立てる。
アージェが短く吠え、光が波のように広がった。
「行こう。蒼晶の眠る洞は、まだ“本気”を見せていない」
その言葉に、仲間全員が頷いた。
足元の蒼晶がわずかに光る。
まるで――彼らの覚悟に、洞窟が応えたように。
⸻
次の階層へ。
そして、新たな“蒼の脈動”が、再び鳴り始めた。
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