海の宴、蒼き航路の夜
評価ポイント押してもらってたり、最後に親指グッドとかの数が増えてたり、ランキング情報が日々出てきてワクワクしてます。ただ、投稿スピードが異常なのでこっそり修正もしております!ごめんなさい。
王都エルディアの夜が、まるで昼のように明るかった。
港区一帯に灯された魔導灯が海を照らし、蒼と金の光が波間に踊る。
初航海《レガリオン号》の帰還を祝う大宴――その名も《蒼航祭》。
広場の中央には長卓が並び、人々の笑い声と音楽があふれている。
潮風に混じるのは焼いた魚の匂い、甘い果実酒の香り、そして――
海の上で戦い抜いた仲間たちの笑顔。
「いやぁ、まさか王都で祝われるなんてね!」
アリアが果実酒の瓶を片手に、上機嫌で笑っている。
「港の子たちが“雷伯様の船だ!”ってはしゃいでたわよ?」
「その呼び方、そろそろ封印してくれ」
「もう遅い。定着してる」
“にゃ”とノクスが鳴いた。
ミーナが吹き出しながらグラスを差し出す。
「ほら、トリス。飲みなさい。これ、王都の海葡萄酒よ。珍しいの」
「……一杯だけな」
「嘘ね。二杯目、絶対いく顔してる」
アージェは子どもたちに囲まれていて、背中に花飾りを付けられていた。
ノクスは料理の皿の横で丸まり、子どもから魚をもらっては嬉しそうに尻尾を揺らす。
そして――
「キュルッ!」
ルメナが空へ飛び上がった。
青白い光の軌跡が夜空を描き、波が一瞬だけ蒼く染まる。
見上げる市民たちの歓声が、星空へ吸い込まれていった。
「……きれい」
ミーナが呟く。
その頬には、光が映っていた。
「まるで、海の女神が祝福してるみたい」
「そうだな。……この光景、忘れられない」
俺はグラスを持ち上げ、みんなの方へ向けた。
「乾杯だ。海に、航路に、そして――生きて帰ってきた俺たちに」
「乾杯!」
声が重なり、杯がぶつかる。
果実酒の甘い香りが広がり、笑い声が夜に溶けた。
⸻
しばらくして、宰相オルヴィウスが現れた。
白銀の衣をまとい、穏やかな目をしている。
「やぁ、楽しんでいるようだね。君たちが王都に持ち帰ったものは、“勝利”じゃない。“希望”だ」
「希望、ですか」
「ああ。南の海が、また人の手に戻った。
君たちが航路を切り拓き、争いを止めた。その意味を王も重く見ておられる」
オルヴィウスは杯を掲げた。
「ハルディア航路の開通に、祝福を」
広場中が歓声に包まれた。
胸の奥が熱くなる。
言葉が出なかった。
オルヴィウスは微笑み、グラスを掲げた。
「今夜くらいは、肩書を忘れて飲みたまえ。王もそう望んでおられる」
⸻
宴が進むにつれ、音楽が変わった。
楽師たちが弦を弾き、潮風がリズムを運ぶ。
アリアが腕を掴んでくる。
「ほら、踊るわよ!」
「いや、俺はそういうの――」
「拒否権なし!」
強引に引っ張られ、広場の中央へ。
ミーナが呆れながらも笑っている。
ルメナが空を飛び、ノクスとアージェがその光を追う。
海の匂い、酒の香り、笑い声。
すべてが混ざって、まるで夢みたいだった。
⸻
夜も更け、潮風が少し冷たくなったころ。
港の方で、ルメナが月明かりの下に降り立つ。
波が足元で揺れ、光が広がる。
まるで海そのものが“息づいている”ようだった。
「なぁ、ミーナ」
「なに?」
「これからも、守っていこうな。海も、人も、全部」
「うん。……あなたが“雷の辺境伯”でよかった」
アリアが笑いながら寄ってくる。
「じゃあ次は、空でも開拓しようか?」
「やめろ、胃が死ぬ」
ノクスが“にゃふっ”と鳴き、アージェが大きくあくびをした。
月が照らす海に、ルメナの光が重なる。
波間で反射した蒼い輝きは、ハルディアの海そのものが笑っているように見えた。
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