南方の盾、雷神と呼ばれ
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三日後のリヴェール港。
潮風はようやく血の匂いを薄め、焼け焦げた木材の香りへと変わっていた。
海辺には新しい木杭が並び、船大工たちが鉄槌を振るう音が響く。
港を覆っていた黒煙はもうない。
代わりに、王国の旗が潮風に翻り、子供たちが再び浜を走っていた。
リヴェール港、防衛成功。
その報は王都に届くや否や、光のように王国全土へ広がった。
だが、勝利の余韻に浸る暇はなかった。
その日の午後、王都エルディアより紋章付きの黒馬が駆け込み、伝令が声を張り上げる。
「南方総指揮官トリス・レガリオン殿!
王都会議への出席を命ず! 陛下直々の召喚にございます!」
王の「直召喚」それは名誉と同時に、国家の命運を背負う者への呼び声だった。
⸻
王都エルディア。
白金の柱が林立する玉座の間は、神殿のような静寂に包まれていた。
大理石の床には南方の地図が広がり、赤い駒が戦線を示す。
玉座の奥では、王アルトリウスが沈黙のままその地図を見つめていた。
中央に立つ青年、黒い外套を纏った子爵、トリス・レガリオン。
年わずか十八にして、南方を救った“雷神”と呼ばれる男。
その異名は王都の兵士たちの間で、もはや伝説として囁かれていた。
貴族席の一角から、ひそひそと声が漏れる。
「雷神だと? まやかしだ」「辺境の子爵にすぎぬわ」
だが、トリスは一言も返さず、膝をついて頭を垂れた。
「子爵トリス・レガリオン、陛下の召喚に応じ、参上いたしました。」
その声は静かに、それでいて玉座の間を満たすほど響いた。
宰相オルヴィウスが一歩進み、杖を鳴らす。
「陛下。報告にございます。リヴェール港防衛戦、勝利。
敵国カローネ侯国の主力艦隊、壊滅的打撃を受け退却いたしました。」
ざわめき。
それを抑えるように、王が立ち上がる。
「……よくぞ守ったな、トリス。民を、港を、そしてこの国を。」
その声に、貴族たちが息を呑んだ。
王の言葉は厳しくも温かく、威厳と誇りが混じる響きだった。
「この功、並ぶ者なし。南方の盾として、王国はお前を誇る。」
オルヴィウスが地図を指し示す。
「陛下、偵察によれば、カローネ侯国は再編成を進めております。
次の標的は、再びリヴェール、もしくはトリス領内の穀倉街と推定されます。」
広間がざわめく。
「再侵攻……!」「奴ら、まだ諦めていないのか!」
トリスが静かに顔を上げた。
「ならば、迎え撃ちます。リヴェールは復旧中、防衛線の再構築も完了間近です。」
王が問う。
「何が必要だ?」
「兵糧、鉄、そして、人の覚悟です。
守るだけではなく、終わらせるための準備を。」
宰相が短く笑う。
「……聞いたか、陛下。“雷神”は嵐の止め方も知っているようです。」
王は微笑を浮かべ、宣言する。
「よい。南方の全補給線をトリス・レガリオンの指揮下に置け。
補給、造船、募兵、鉄鋼、すべてをだ。」
「なっ……!」「一人に全権を!?」
貴族たちが騒ぐが、王の一声が雷鳴のようにそれを断ち切る。
「民を救ったのは、彼だ。それ以上の理由は要らぬ。」
オルヴィウスが続ける。
「雷神よ。王国は、そなたに託す。」
トリスは胸に拳を当て、深く頭を垂れた。
「必ず勝利を。もう二度と、この国の海を踏みにじらせません。」
⸻
会議後、王宮の回廊。
夕陽が白い壁を赤く染め、宰相オルヴィウスの影が長く伸びる。
「……覚悟はできているな。」
トリスはわずかに笑った。
「ええ。次は“防衛”ではなく、“終戦”のための戦いです。」
「うむ。それでいい。ただし、背負いすぎるな。」
その言葉に、トリスは空を見上げた。
雲の奥に、淡く光る雷雲が見えた気がした。
「大丈夫です。俺の背中には、仲間がいますから。」
宰相は満足げに頷き、去っていった。
残されたトリスは静かに掌を見つめる。
そこにはまだ、微かに電流の痺れが残っていた。
(この力も、戦も。終わらせるために使う。)
空に雷鳴が轟き、王都の塔に反響した。
南方決戦の幕が、静かに上がろうとしていた。
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初投稿作です!みなさんおてやわらかにお願いします。
AIをとーても使いながらの執筆となっております。
あと、AI様にお絵描きをお願いするのにハマり中です。




