表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら孤児院育ち!? 鑑定と悪人限定チートでいきなり貴族に任命され、気付けば最強領主として国を揺るがしてました  作者: 甘い蜜蝋
犬と猫に振り回される領主兼冒険者

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

129/287

都市のざわめき

とんでもないスピードで投稿を続けております。甘い蜜蝋です。みなさんよろしくお願いします。ランキング情報が日々出てきてワクワクしてます。ただ、投稿スピードが異常なのでこっそり修正もしております!ごめんなさい。

 蒼晶の眠る洞・十五層の守番ストラタタートルを落としてから、一晩だけ転送陣の小部屋で仮眠を取った。

 翌朝、腕輪を起動。白い光がほどけ、俺たちはハルトンダンジョン都市の転送広場に戻ってきた。


「おかえりなさいませーっ!」


 広場の屋台も宿屋も、朝から活気で沸き立っている。湯気に混じる肉とパンの香り、鍛冶場から響く槌音、子どもたちの歓声

 全部が、胸の奥にすっと染み込んだ。

 アージェ(銀の守護犬)が尾を大きく振り、ノクス(影猫)が俺の肩で気持ちよさそうに喉を鳴らす。


「帰ってきたな」

「うん。……いい匂い」アリアが笑って、矢筒を軽く叩く。

「市場も宿も満席ね。噂、もう回ってるわ」ミーナが周囲を一巡して目を細めた。

「ストラタタートル撃破、ってやつ?」

「そう。『初心者殺し』を正面から崩した、って見出しでね」


 ふいに、屋根の上からひょいと影が落ちた。

 ギルド巡回の少年が、ゼェゼェ言いながら駆け寄ってくる。


「ト、トリスさま! ギルド、新人冒険者達で満場です!」

「満場?」

「討伐報告の掲示、みんな見たくて……押し合いでして!」


 顔を見合わせ、俺たちは笑って歩き出した。



 ギルド支部の重い扉を押すと、ざわめきが波のように寄せては返す。


「来たぞ!」

「本物だ!」

「あれが噂のアージェとノクス!」

「可愛い……いや、強そう!」


 受付前まで進むと、支部長のクローヴェが腕を組んで待っていた。

 四十手前の精悍な顔。目が笑っている。


「戻ったな、子爵殿。では、頼む」

「ああ」


 俺は《叡記》にて、15層までに見てきたものを完全に記録した討伐報告書と、甲殻片・核片・環境記録を提出する。


 アリアが淡々と補足を読み上げ、戦闘の要点を短く整理した。


「確認した。……掲示する」

 クローヴェが頷くと、書記たちが一斉に動き、掲示板の一番上へ『十五層守番ストラタタートル討伐、確認』の札が打ち付けられた。


 次の瞬間、酒場スペースが沸騰する。


「うおおおお!」

「初心者殺し、落ちたぁぁ!」

「領主様の情報詳しすぎる!」

「やっぱ“我らが子爵”よ!」


 誰かが叫んだ「子爵」の一言が、火に油を注いだ。

 笑い声、口笛、椅子のきしみ、全部が嬉しい騒音だ。


「ワン!」アージェが胸を張って吠える。

「ニャ」ノクスが前足でちょん、と受付台を叩く。

 受付嬢が目じりを下げて撫でた。「今日もおりこうさんですねぇ」


 クローヴェが軽く手を挙げ、場を収める。

「静粛に。討伐の要点を、本人から」


 俺は一歩進み、短く話す。

 巨亀の転がり抑止は“合図の一致”で受け、傷付与は“隙の共有”で刺す。魔術無しでも落とせるが、情報の段取りが要る。最後に討伐した際の知識を《情報網》を使い共有した。


「以上。細かい戦術図と、合図表はギルド閲覧席に置いていく。新人でも読めるよう、図は大きめにしておいた。使ってくれ」


 爆発したかのような拍手が起き、アリアが肩をすくめる。「優しいのよね、あなた」

「領で死人を出すより、先に知識を渡した方がいいだろ?」


 ミーナが小声で付け加える。「噂は資本。いま“強い子爵の街”という物語を、みんなの口で広げさせるの」


「物語?」

「人は数字だけでは動かないわ。誇りがつくと、財布も兵も動く」


 クローヴェが口角を上げた。「その通りだ」



 掲示が終わると、ギルド前の通りはもう祭りの空気だ。

 屋台の親父が湯気の立つ肉包を差し出す。「子爵! 景気づけに!」

 隣の魚屋が負けじと叫ぶ。「うちの燻製も!」

 菓子屋の少女がノクスに猫用クッキーを渡して、頬を赤くした。


「ありがたく」

 全部は受け取れない。代わりに組合票を数枚、その場で購入して屋台に投じる。

「組合票の買いは正義」ミーナがにっこり。

「そう言うと商売っぽい」アリアが笑う。

「商売です」


 通りの向こう、湯の白い息が立ちのぼっていた。

 ハルトン外れに湧いた小規模泉、テルマハルトほどではないが、疲れた冒険者が足を延ばすには十分だ。

 炊き出しの湯気と混じり、街全体がほんの少し柔らかい匂いになる。


「この温泉、評判いいのよ」アリアが目を細める。

「テルマほど熱くないから、長く入れる。

 ねっ!アージェ?」

「ワン」

「ノクスは湯気だけね」

「ニャ」


 ふと、耳に入った会話がある。

「十五層まで子爵が開けたなら、俺たちも十層いけるかもな」

「合図表、写して練習しようぜ」

「“我らが子爵”だもんな」


 我らが、か。

 胸の内側で、何かがカチリとはまる音がした。



 午後、評議室で簡易の報告会。

 クローヴェ、警邏の隊長、宿組合の長、商会の代表 顔ぶれはいつもの、でも今日の空気は少し明るい。


「まず治安。今朝から『子爵が十五層を落とした』という話が、抑止として効いてます」警邏隊長が言う。

「スリ、喧嘩、賭場の揉め事“今やると目を付けられる”と、連中が勝手に慎んでる」


「冒険者の入出、増加傾向」ギルド側。

「トリス様の情報から十五層までの安全な攻略路が見えた、という受け止め。新人パーティが“便乗”で来ています」


「宿も満室近い」宿組合。

「冬祭り前なのにこの勢い。食堂は昼の二巡目で売切れが出た」


「市場は活況。温泉卵と蒸し野菜のセットが人気」商会。

「温泉卵はテルマ産だが、“子爵の討伐祝い”の口実でハルトンでも出る。物語は物を動かす。ミーナ嬢の言う通りだ」


 ミーナが淡く笑う。「ありがとうございます。数字は夕刻に集約します」


 俺はうなずき、短く締めた。

「浮かれすぎは禁物だ。噂は味方にも敵にもなる。今日は、味方にした。それでいい」


 席が立ち始める。クローヴェが近づき、声を落とした。

「正直に言うぞ。十五層でここまで街が沸くとは思わなかった。

 お前が“自分で降りている”こと自体が、最大のセールスポイントだ」


「領主が現場にいる、ってこと?」

「ああ。『椅子に座らない領主』は、口伝で広がる。抑止力だ」

 彼は肩を叩いた。「明日、掲示板に“十五層の読み方”講座を出せ。若いのが群がる」


「了解」



 夕方。領主邸の庭先で、軽い打ち上げ。

 焼いた肉に温泉卵、焼きたてのパン。素朴だが、こういう食事が一番うまい。


「ワン!」

「ニャ」

 アージェとノクスにも味の薄い分を少しだけ。こいつらは戦友だ。


「で、アリア」ミーナがニヤリ。

「喉射、とんでもない精度だったようね。絵を見たけど、あの角度、普通は怖くて打てない」

「ノクスの足癖がいいのよ。あの“半歩のずらし”が見えたら、射線は取れるわ」

 アリアがナイフで肉を押さえながら、さらりと言う。


「トリスも覇剣術の冴えが増したんじゃないか?」

「よく甲羅なんて切れたもんだ」カインが笑う。

「よく言う」

「いや本気だ。鍛冶で言えば、“地金の目”を読んで割った仕事だ」


 話題は自然に街の話へ滑っていく。


「明日から鍛冶場は悲鳴よ」ミーナが帳をぱらぱら。

「盾と槍と軽弓、発注が跳ねる。『十五層対応』って言葉に、人は弱いの」


「弱いねぇ」フレイアが杯を傾ける。「じゃ、火の通り道は私が整える。炉が怒鳴っても落ちつく火にしてあげる」


「助かる」カインが手を合わせた。「俺は“受け止め盾”の芯材、試してみる。アージェの二重障壁、再現できるかも」


 アリアがアージェの首元をぎゅっと抱く。

「ダメ、アージェの方が可愛いから」

「ワン!(胸を張る)」

「ニャ(肩で得意顔)」


 笑いが広がる。

 その時、門番が駆け込んできた。


「子爵! 広場で“我らが子爵”の合唱が――」

「合唱?」

「いや、その、子どもたちが歌を……」


 アリアとミーナが同時に吹き出した。

 フレイアが肩をすくめる。「物語は歌になる。いい兆候よ」


「恥ずかしい」俺は額を押さえた。

「誇れ」ミーナが真顔で言う。「噂は盾。今夜の歌は、明日の無用な揉め事を一つ減らすわ」


 ……そうか。

 強さをひけらかすためじゃない。守るために、強いという物語が要る。


「明日、ギルドで講習をやる。“受け止め”“刻み”“射線”の三点だけは、街中に広げよう」

「了解」

「任せて」

「ワン」

「ニャ」



 夜。

 屋敷の窓を開けると、街のあちこちから、かすかな歌声が重なって届く。


十五の門を 越えて帰る

銀の盾と 猫の道

弓の星と 剣の輝

おかえり、我らの子爵さま〜


挿絵(By みてみん)



 上手い歌じゃない。音程も外れてる。

 でも、どうしようもなく良い。


「……戻ってきて、よかったな」

 独りごとのように呟くと、肩のノクスが「ニャ」と短く返し、足元のアージェが「ワン」と喉を鳴らした。


 明日はまた、街の仕事と、冒険の準備。

 噂は盾に。数字は背骨に。鍛冶の火は心臓に。


(守る。進む。その両方をやる)


 静かな決意を、胸の中で一度、確かめた。


評価してくれると、とってもとっても嬉しいです!

初投稿作です!みなさんおてやわらかにお願いします。

AIをとーても使いながらの執筆となっております。

あと、AI様にお絵描きをお願いするのにハマり中です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ