砕けぬ甲殻
巨亀が吠えた瞬間、空気そのものが振動した。
耳の奥が痺れる。振動が骨を震わせ、全身の感覚を狂わせる。
「……来るぞ!」
岩盤を蹴る轟音。
巨体が戦車のごとく一直線に突進してくる。
速度は鈍重に見えて、実際は矢のように鋭い。
「アージェ!」
「ワンッ!!」
銀の守護犬が前へ躍り出る。
足裏から光が奔り、展開された障壁が蒼晶の輝きを反射する。
ガァァァンッッ!!!
衝突の瞬間、耳をつんざく金属音。
火花と衝撃波が奔り、壁際にいた俺とアリアの髪を逆立てた。
「くっ……押し込まれてる!」
アリアが叫ぶ。
アージェの足が岩盤に食い込み、必死に耐えるが巨体の重みが上回っている。
障壁の表面に、蜘蛛の巣状の亀裂が走った。
「ガウゥゥッ!!」
アージェが吠え、さらに障壁を二重に展開する。
だがその分、魔力の消費が激しい。長くはもたない。
⸻
「今だ、ノクス!」
「ニャアッ!」
影の猫が壁の影へ飛び込み、一瞬で巨亀の背後に現れる。
鋭い爪で後脚の関節を狙い
ガキィンッ!
「……硬いっ!?」
爪が弾かれ、ノクスの体が宙に跳ね返された。
背面、側面、どこを斬っても、すべて分厚い鉱殻に覆われている。
唯一の弱点は
首か、腹か。だが突進の最中に狙える余裕はない。
「トリス! どうするの!?」
アリアが弓を引きながら声を上げる。
矢を放っても、結晶の甲殻に弾かれる音しか返ってこない。
「くそ……防御一辺倒のくせに、理不尽なほど固い!」
⸻
巨亀は突進を止めると、首を甲羅に引っ込めた。
次の瞬間
ゴウン……ゴウン……!
甲羅そのものが回転し始めた。
円環の広間いっぱいに、巨大な岩の車輪が転がる。
「っ! 回転突進!?」
「伏せろ!」
俺とアリアは飛び退き、地面に身を伏せる。
アージェとノクスも同時に退避。
転がる甲羅は壁に激突し、砕けるような轟音を立てて跳ね返った。
岩盤の壁に亀裂が走り、蒼晶の破片が降り注ぐ。
「わざと狭い広間にしてあるんだ……避ける余地を潰すために!」
ここで盾役がいなければ、冒険者たちは次々と押し潰される。
これが《初心者殺し》の所以。
⸻
「なら……突破口を作る!」
俺は【武王術】で全身を強化し、巨亀の進路へ踏み込んだ。
「トリス! 無茶よ!」
「やらなきゃ押し潰される!」
迫る岩車輪。
俺は刀を抜き、全身の筋肉を極限まで研ぎ澄ませる。
「はああああっ!!」
刃が閃き、甲羅の結晶に叩きつけられる。
ギィンッ!!
刀が震え、腕に鈍い衝撃が走った。
刃は通らない。表面を掠めたにすぎない。
(やっぱり……正面突破は無理か!)
巨亀の体当たりが直撃する寸前。
「アージェ!」
「ワオォンッ!!」
銀の障壁が俺の前に展開され、衝突の勢いを殺した。
俺はその隙に横へ転がり、かろうじて直撃を免れる。
⸻
「……はっきりしたな」
荒い息を吐きながら立ち上がる。
「こいつの甲殻は“正面からじゃ絶対に抜けない”。なら、狙うべきは――」
「動きの死角」
アリアが矢を番え、冷ややかに微笑んだ。
「突進の直後、回転が止まる一瞬。そこしかないわ」
「ワンッ!」
「ニャッ!」
アージェとノクスも同意するように鳴いた。
⸻
「よし……戦術を変える」
俺は短く仲間に指示を飛ばす。
アージェは盾となって突進を逸らせ。
ノクスは影渡りで死角に回り込め。
アリアはその瞬間を射抜け。
俺は武王術と覇剣術で突破口を斬り開く。
「ここからが本番だ……!」
巨亀が再び首を伸ばし、吠える。
振動が広間に響き、岩盤が軋む。
死闘はまだ始まったばかりだった。
評価してくれると、とってもとっても嬉しいです!
初投稿作です!みなさんおてやわらかにお願いします。
AIをとーても使いながらの執筆となっております。
あと、AI様にお絵描きをお願いするのにハマり中です。




