残光を喰うもの(6~8層)
蒼晶の眠る洞 6層。
壁に散る青白い鉱石が、まるで星屑のように瞬いていた。だがその光はどこか不安定で、目を凝らすと残光が尾を引くように揺らめいている。
「……見え方が変ね」
アリアが眉をひそめる。
「光が残るせいで距離感が狂う。矢筋が乱されるわ」
「幻覚系じゃない。これは環境そのものの特性だな」
俺は《真鑑定》を展開した。
――――――
【鑑定:迷光回廊】
特徴:光の残滓が視覚情報を乱す。残光を餌とする魔物が生息。
注意:《グロウリーク》
――――――
「残光を喰う魔物……出るぞ」
⸻
次の瞬間、ひゅるりと風のような音が走った。
壁の光が裂けるように、尾を引く影が飛び出す。
「来た!」
アリアが矢を放つ。しかし
「えっ、すり抜けた!?」
矢は影を貫いたように見えて、虚空を刺しただけだった。
「いや、残光に紛れてるだけだ!」
俺は刀を構え、気配を追う。
影から這い出したのは、光の触手を持つ怪魚じみた魔物。
残光を吸い込み、偽の影を残して幻惑する性質を持っていた。
「アージェ、ノクス!」
「ワンッ!」
「ニャッ!」
銀毛のアージェが前へ飛び出し、影を纏うノクスが逆側から駆ける。
「残像を追うな! 本体は別だ!」
俺は《魔脈感知》を展開、魔力の流れを読み取る。
「左、アージェ!」
「ガゥッ!」
アージェの突進が空気を裂き、見えない膜のようなものにぶつかった。
直後、姿を隠していた《グロウリーク》が弾かれる。
「見えた!」
アリアの二本目の矢が正確に頭部を射抜いた。
ぐにゃりと身体を歪め、魔物は霧のように崩れた。
⸻
「ふぅ……厄介ね。目じゃなくて感覚に頼らないと」
アリアが汗を拭い、矢筒を確認する。
「視覚に幻惑を仕掛けるなら、《心音聴覚》を使う」
俺は耳を澄まし、鼓動のリズムを拾う。
残光に惑わされても、命あるものの心音は隠せない。
「心音で……狙える?」
「試す価値はある」
⸻
7層。
迷光はさらに濃く、目の前のアリアすら二重にぶれて見える。
「これ……酔いそう」
「ノクス、影渡りで周囲を探れ!」
「ニャッ!」
ノクスが闇に溶けるように走り、囁くような鳴き声を響かせる。
同時に《情報網》が繋がり、ノクスの感覚が俺の脳裏に流れ込んだ。
(……影の裏に、三体)
「アリア、三時方向に二体! 九時に一体!」
「了解!」
アリアが弓を引き、俺は刀を振り抜く。
残光の中で、本体だけが鼓動を放っていた。
アージェが前に立ち、光の触手を防御障壁で弾く。
「ガゥッ!」
銀の壁が閃き、仲間を守る。
「今だ!」
矢と刃と影が交差し、三体の《グロウリーク》が同時に絶命した。
⸻
8層に降りる頃、視界はようやく落ち着いた。
残光の迷路を抜け、広い洞窟にたどり着く。
「ここまで来れば……残光の影響は消えるな」
俺は深呼吸した。
「アージェもノクスも、よくやったな」
「ワンッ!」
「ニャアッ」
二匹が嬉しそうに鳴き、アリアがしゃがんで毛並みを撫でる。
「……ほんと賢いわね。可愛いし、頼りになる」
その目はすっかり柔らかく、仲間を見る視線そのものだった。
(最初の“初陣”は超えた。こいつらなら、深層まで共に行ける)
俺は刀を背に収め、足を進めた。
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初投稿作です!みなさんおてやわらかにお願いします。
AIをとーても使いながらの執筆となっております。
あと、AI様にお絵描きをお願いするのにハマり中です。




