自分が好きなことを書きたい作者は傷つき葛藤しながら弱者を救うヒーローを求めるが、なろうの読者の多くはそれより爽快感を求るのはおそらく両者の精神状態の余裕の差などだろうね。
さて、私が大好きな漫画に皆川亮二先生のARMSがあります。
この漫画は自分はごく普通の高校生だと思っている、実はちっとも普通でない主人公の高槻涼が、普通の高校生として幼馴染みの異性である赤木カツミと共に平和な学園生活の日常を送っているのだけど、ある日突然転校してきた新宮隼人に喧嘩を売られることから、その平穏な日常は崩れ去り「ARMS」という宇宙から来たケイ素生物を利用しためちゃくちゃ強力なナノマシンによる生体兵器兵器を巡ってエグリゴリという秘密組織との血なまぐさい抗争を経て、最終的には人類滅亡を防ぐための戦いをおこなう。
みたいなお話です。
主人公はめちゃつおいですが、だからといってハーレムをつくるわけでもなく、その強い力での一方的な戦いを楽しむわけでもなく、むしろ強すぎる力そのものや戦いに巻き込まれる人やたまに現れる強敵に負けて苦悩したりもします。
でも、まあそういう話ってある程度心や時間に余裕がある人じゃないとおそらく楽しめないのでしょうね。
作家というのは最終的には自分の何らかのエゴを満たすためかもしれませんが、基本的には他人に楽しんでもらいたいため、要するに他人のために作品を作り上げる傾向がありますが、これはマズローの欲求段階説で言うならかなり上位の尊厳欲求:他人から求められたい、尊敬されたい、社会的な名声がほしい欲求か自己実現欲求:自分の力を発揮したい、何かを生み出したいという欲求のどちらかに近いと思います。
そして他人に読まれるためにはどうすればいいのか悩んだりもするので、苦悩する主人公に割と共感しやすい気がします。
とは言えあくまでも自分の理想のキャラを書きたい作家と読者に読まれることを優先する作家では当然その内容は異なってくると思いますが。、
なろうで主に男性向けと思われる読まれるテンプレ的な作品を見ると、とりあえず金と力があればモテるし、最終的には何でも個人的欲望を満たせる爽快感優先な作品のほうが人気ですね。
比率的に多くの読者がみたしたいものは安全欲求:これは主に金の確保に対する欲求か、生理的欲求:これは食欲か性欲などの生命の維持の根源に近い欲求のような気がしますし、爽快感を求めがちな気がします。
いや作家でも単純に金がほしいという人もいると思いますし、読者でも尊厳欲求を満たすに足る作品が読みたいという人もいるとは思いますけど。
現実としても赤の他人のためになにかしたいという行動の一部はメサイア・コンプレックスという言葉で表され、ひたすら困ってる人を助けたいと行動することがあるわけですが、これは独善的で相手がありがた迷惑と受け取る場合が少なくなく、実際に本当に相手のためを思っているわけではないので、相手がその援助の申し出を断ったり、注文をつけたりすると不機嫌になったりしたりもしますが、これは他人とのつながりを持ちたいがためというのが大きいようで。
なろうの男性向けのテンプレ的な作品を好んで読む人はおそらくつながる相手がほしいという以前の状態なんじゃないかなと思ったりします。
ただしアニメの視聴者に関してはまた違うと思いますけど。
ブッダ様は他人を救いたいという執着は一番棄てるのが難しいといったそうですが、他人を救いたいという執着を持つ以前に、偉そうにしてるエリートに主人公がザマアするのがいいという精神状態の人が多いのは、あまり良いこととも思えなかったりしますけど、それだけ現状の日本は世知辛いのかなとも思いますが、ロスジェネ世代から見れば、まあそうなるよとうなずけます。




