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水源の過去エッセイまとめ  作者: 水源
2019年1月

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ラノベ初期のファンタジーブーム作品と現在の異世界作品の最大の差は何か?それは権力者の主人公に対する態度ではないか

 さて、スニーカー文庫や富士見ファンタジア文庫などが立ち上げられたラノベ初期においてはロードス島戦記やスレイヤーズなどのファンタジーが大ブームでした。


 しかし1998年電撃文庫のブギーポップは笑わないや富士見ファンタジアのフルメタルパニックなどがでてきた頃にはファンタジーはほぼ絶滅状態というか全く売れないようになっていました。


 これは人気シリーズが長く続き過ぎてそれまで高校生だった読者が卒業し社会人になってラノベを読まなくなっていったり(20世紀はまだ大人になって漫画やゲームをしてるのは幼稚だと思われていたのですが、それと同様にラノベは子供向けの本という認識でした)、主人公は英雄と呼ばれるような特別な存在で高い能力を持っているが、それ相応に世界を救うようなとても大変な使命をクリアしないといけないような話も多かったからではないかと思います。


 私は冴木忍さんの作品が大好きですが今のなろう読者には主人公たちが痛々しすぎて受け入れられないでしょう。


 またこの時代の主人公は王や大臣などから与えられるのは基本的に命令でした。


 主人公自身は王のような権力を持つ立場ではなくそれを覆すような武力や権力もなかったのですね。


 特別な存在にはなりたいけどそのために辛い目には会いたくない。


 そのように読者の意識が変わったのは1990年代のバブル崩壊によって世相が暗い方に変わって生活にも余裕がなくなった人も増えたのもあるでしょう。


 デビルマンやマーズのような人間の醜さ故に人間が滅ぶという作品は精神的余裕がある時代ではいいですがそれがなくなってしまうとなかなか読むのに躊躇してしまいます。


 逆にあずまんが大王やまんがタイムきららの日常系作品が受けるようになったのも普段の生活に対する不安の解消と言う要素があったでしょうね。


 その後入れ替わるように増えたのは学園+他要素作品ですね。


 学園異能バトル、学園SF、学園ラブコメなどですが、前述のブギーポップやフルメタルパニックにくわえ、灼眼のシャナや涼宮ハルヒの憂鬱、とある魔術の禁書目録(インデックス) などですね。


 ゼロの使い魔と言うファンタジー作品のヒットもありましたが、それはファンタジーラノベの復活となるほどではありませんでした。


 この時代から2010年代くらいまではファンタジーは売れないというのが、出版社における常識だったようです。


 2000年台後半は”俺の妹がこんなに可愛いわけがない ”や”僕は友達が少ないの大ヒットもあって、それまで以上に学園ラブコメが増えましたが、ソードアートオンラインやまおゆう魔王勇者 の大ヒットあたりで潮目が変わって、一時は魔王と勇者者の現代ローファンタジーも増えますが、ISインフィニット・ストラトスのヒットで戦闘ハーレムが粗製乱造され、それが飽きられた頃になろうの魔法科高校の劣等生、オーバーロードなどのヒットから異世界転生がもてはやされる現状となっていますね。


 では現状の異世界とかって流行したファンタジー作品の差がなんだろうかというと、主人公の持つ能力や権力が昔のファンタジーに比べて格段に上がっているということでしょう。


 要は主人公に対しての世界の厳しさ甘さの違いかなと。


 現在の異世界作品では魔王の軍勢など自分達では処理できない問題を召喚者に処理してもらうという側面が強いので、王族や大臣、貴族でも主人公に頭を下げてお願いするような感じで魔王討伐などの使命を与えられる感じですが、バブル期では上の人間に従っていれば自分も出世するという感じだったのですが、現状では上の人間の言うことなどきいても給料が上がるわけでもなく意味はないと言う認識に変わってきてるからだろうかと思います。


 また最初から召喚や神様チートなどで何でもできる能力を与えられているので、魔王を倒すとか世界を救うというレベルでも困難ではないのが普通ですね。


 では現代異能バトルがなぜ廃れたかといえば、現実の常識と異能が相容れない存在で主人公が強くなればなるほどそんな存在がいるのはおかしいと考えられたり、力があろうが法律などで縛るのが簡単だったりするため、暴力的な強さで社会的に成功するというビジョンが見にくいというのがあるでしょう。


 またそうでない現代物でも息の長いシリーズだと作品中の年月経過に対してのキャラクターが持つ通信機器などの変化に合わない、たとえば1巻目ではパソコンでミクシーをやっていて、携帯電話ははガラケーだったりでメール交換してるのが最近なのにいきなりスマホやLINEにかわってるとかで明らかにこれおかしくないとなったりしますしね。


 これはSF作品にも言えることですけど。


 またファンタジーとちがって最初の学園階層(スクールカースト)が低かったりするとそれをひっくり返すというのはとても難しいのですがそれを跳ね返したら跳ね返したでおかしくないかと突っ込まれたりします。


 やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。はそのあたりかなりうまくやってると思いますが、もうぜんぜんぼっちじゃねーじゃん、嫌味かと言う声も出てますが。


 そして殺人を犯せば現代だと重い刑罰を受けますね。


 そもそも秩序維持のための戦闘は警察や軍隊の担当ではという話だったりします。


 それが許される立場である設定などがある場合もありますけど。


 結局、ファンタジーに舞台が戻ってきたのはファンタジーは現代物と違って、技術変化が主人公が何かやらない限りはないのでそのあたりの違和感がない、冒険者ギルドのような便利な舞台装置があるので最初の階層が下層だとしても能力が高ければ比較的簡単に名声が得られて社会的に成功できる、細かい法律のような制約がなくて暴力で解決するのが容易、何らかの能力は最初に与えられるため大変な努力やその描写を必要としない、などが楽なのでしょう。


 人間は組織への所属や恋愛欲求がありますがそれはあくまでも組織に所属したり、恋愛することで快適な状況になる場合ですから現代の人間は組織に所属することでかえって苦痛を味わっているというのが、王などからの命令から要請だったり懇願だったりに変わってる理由なのでしょうね。


 このようにバブル期と現在では世相なども違うので読者が面白いと思う要素を見極めるのは余計に難しくなるのでしょうね。

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