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南洋の決闘 〜日米海軍の一騎打ち〜  作者: 扶桑かつみ


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第四章「錯綜」(三)

 窓の外は、夏の海洋だというのに暗く、波も大きく荒れており、床や船そのものも大きく揺れていた。


「西太平洋というものは厄介だな。日付変更線の向こうはいつもこんな感じなのか」

「気象部は悪天候の可能性が高い日時を苦労して探し出したそうです」


 彼らの眼前少し遠方では、タンカーから駆逐艦にホースが伸びる様が見える。

 今は、敵勢力圏に入る前の最後の補給作業中だった。

 補給作業は荒い海での作業のため一時間以上の遅れを見せていた。

 しかし時間も過ぎ、作業そのものは最後の駆逐艦が燃料を受け取る段階まできていた。


 準備は事前段階では完璧とは言わないまでも最善と思われていた。


 海軍所属、民間徴用を問わず艦隊随伴タンカーに、洋上補給のための新装置を設置するなど事前の準備を多数整えるなど、創意工夫も凝らされていた。


 だが、荒波の中での無理を押しての作業のため、ここまでに幾人かの遭難者も出ていた。

 人々は、南の外れとは言え北太平洋が生半可な海でない事を肌で思い知らされていた。


「なるほど、彼らの努力には敬意を表すべきだな。夏の海と言えばハワイ同様穏やかなものだと思いこんでいたよ。これでは、氷に閉ざされる前のダッチハーバーとさして変わりない」


「はい。しかし、この波と暗さなら敵の目視監視からは逃れられます。無防備な洋上補給には最適でしょう」


「向こうもレーダーは持っているだろう。ドイツとは今や何の障害もなく交流できる上に、イギリスからも色々と手に入れていると聞く。レーダーがイギリスからの技術による発展型ばかりの我々より高性能の可能性すらあるぞ」


 会話を交わしているのは、チェスター・ニミッツアメリカ太平洋艦隊司令長官と参謀長のレイモンド・スプルアンスだ。作戦参謀として同行していたロバート・アンダーソンは、彼らの後ろでただの傍観者となっていた。


 トップダウンを基本とする欧米では日常的なもので、アンダーソンも特に異議はなかった。

 抜擢されたとは言え、彼はただの新米参謀に過ぎなかった。


 そして彼らの乗艦にして全艦隊旗艦でもある戦艦アイオワは、会話にもあるようにたった今西太平洋上にあった。

 もちろん眼前に広がる大艦隊も同様だ。


 この段階までこれほどの規模の艦隊が日本軍に気付かれていないのは、彼らが真珠湾を出港後、マリアナ諸島に一直線に向かった艦隊と分かれて、北太平洋上を踏破してきたからだ。


 北太平洋は夏期でも往来する船舶の数は少なく、日本とアメリカの緊張状態が続くここ十年ほどはさらに減少していた。


 しかもイギリスも戦争で疲弊してカナダからの北太平洋航路をあまり使っておらず、行き交う船のほとんどは西海岸からハワイを経由してフィリピンや中国大陸を目指すアメリカ船籍だった。


 しかも米軍は、欺瞞の電波や情報を中部太平洋であからさまでない程度に日本に掴ませており、先だって発見された第一四任務部隊が、欺瞞の仕上げとなった。


 第一四任務部隊の発見が、アンダーソンの予測より一日早いことは意外だったが、彼も相手がいることだとして諦めるより他なかった。

 それに、彼の知人がグループ・フリートの先任参謀とあっては、この程度は当然と割り切るべきだった。


 それに戦略的な奇襲部隊となる主力がいまだ発見されていないのは、人ならざる者の加護があるからと思いたくなるほどの順調さだった。


 かつて、日本に観戦武官に行ったとき、日本の海軍将校が奇蹟は人が作り出した奇蹟と人ならざる者の奇蹟が合わさったとき始めて出現すると聞かされたが、今がまさにその通りと感じる。


 周囲は暗い海で天候も曇天だったが、雲の隙間から光がさしたら信心深いと言えないアンダーソンといえども、祈りたいような心境が心の隅にあった。


 そんな風にややセンチメンタルな気分で静かに周囲を観察していると、そこでニミッツがアンダーソンの方に視線を向けてきた。


「アンダーソン大佐、君は観戦武官として日本に半年ほど行っていたそうだが、内実はどんなところだった。なに、気分的なものでいいぞ。どうせ向こうも全部見せたワケじゃあるまい」


「はい閣下。一九四三年春の時点で、主要艦艇には我が軍のSCレーダークラスのものが装備されていました。ただし、表示装置は遅れた形式の方が主力だと考えられます。他にも、ほとんどの艦艇にも小型の簡易レーダーは装備されていたように見受けられます。

 しかし、射撃管制レーダーや対空射撃レーダーの類は見受けられませんでした。航空機レーダーも、まだ初歩的な機材のように見受けられました」


「うむ。軍からの報告書と同じか。では、日本近海の海はどうかね」


「はい。私が主に過ごしたのは波の穏やかな日本海と呼ばれる、事実上の彼らの内海です。ソ連が崩壊した今、文字通り日本以外の軍艦が入ることは難しいでしょう。

 また、今回想定される海へは通過の折りに数度行っただけでしたが、今回のように波の荒いのが印象的でした。なんでも、暖流と寒流がぶつかる場所が日本近海にあり、良い漁場を提供する代償として、荒い波を作り上げているそうです」


「良い漁場の代償か。神とは公平だな。報告書には、さすがにそんな言葉はなかったぞ」ニミッツが破顔しながら続ける。


「で、年中こんな有様かね」

「はい。夏の海がこれほど荒れる事は珍しいです。しかし、冬はもっと酷いそうです。日本海軍は今だひた隠しにしていますが、不安定な艦の転覆事故や、船体の切断事件なども過去に起きているようです。

 冬であったのなら、我が海軍の艦艇ではより多くのリスクがあった可能性が高かったでしょう。そのようなニュアンスの言葉を、日本海軍の将校から自慢話のように聞かされました。貴国の艦艇だと、日本近海の運用は苦労するでしょうと」


「ふむ。現に苦労しているので、言い返せないのが癪に触るところだな。ここは、その日本海軍の将校に一発ガツンと見舞ってやらないとな」


 ニミッツが最後にジョークで会話を締めた。周りからも、笑顔や小さな笑い声が聞こえてくる。


 しかしアンダーソンは例外で、真剣な眼差しのままニミッツに視線を据えていた。


「長官、意見具申を構わないでしょうか」


 ニミッツは片方の眉を上げて、アンダーソンの言葉を促した。


「グァムやフィリピンから、今以上に偵察機を飛ばす事は不可能でしょうか」

「ふむ、またその話か。スプルアンス君どうかね」

「グァムのカタリナ部隊には、すでに限界以上の任務を課してしまっています。今日一日というならともかく、今後も活躍してもらわなくてはならないので、命令を下したところでハワイや西海岸から増援を送り込まない限り実現不能です。

 また陸軍は、フィリピンとグァムにB一七をかなり持ち込んでおり、既に偵察も十分行っているます。情報も可能な限り迅速にこちらに手配されています。今以上求めるのは、カタリナ部隊同様でしょう」

「潜水艦からの報告は改善したか」


 少し考えてから、ニミッツが情報参謀に問いかけた。


「潜水艦の報告は、我が方のハワイ出撃以後、依然として定時報告すら遅れがちです。報告も日本海軍の飛行艇が一日中張り付いていて、有効な情報はほとんどありません。何しろ、発見された潜水艦のほとんどは警告爆雷を受けています。あの、これは未確認なのですが」


 情報参謀が言いよどんだので、ニミッツに代わりスプルアンスが目で促す。


「はい、未確認なのですが、上空から発見されるはずのない潜水深度で継続的な追跡と警告爆雷を受けた潜水艦が複数存在すると判断するより他ない状況です。日本海軍は、何らかの方法で我が方の潜水艦を探す方法を持っていると考えるべきです」

「何らかとは? 全く不明なのかね」


 それは私から、と新設されたレーダー参謀が一歩前に出た。


「航空機からある程度の深度を潜水中の潜水艦を探す方法は、今まで目視による監視しかありませんでした。しかし、船である以上磁気を発します。これを電子的な情報として捉えることができれば、深い深度であっても追跡はもちろん攻撃も可能となります」


「そんな事が可能なのか」


「理論上は可能です。しかし、地磁気など地球自身の磁力の影響を考えれば技術的にはまだ問題が多く、我が国はもちろん電子先進国であるイギリスも研究段階を出ておりません」

「それを日本は実用化したかもしれない、ということか。……ドイツからの技術輸入という可能性は?」


「今までドイツから日本に渡った技術に関しては、可能な限り調べましたがありません。ドイツから日本だと、レーダー技術もありますが航空機や戦車ばかりです。艦艇に関する技術輸出は、基礎分野を除くと逆に日本から輸出されている技術の方が多数です」


 情報参謀が答えた。


「分かった。何にせよ日本海軍は我が方の潜水艦を封じる魔よけを持っており、潜水艦の情報はアテにはできないという事だ。さてアンダーソン大佐、以上のように我々は現状で満足するしか他ないわけだ。手に出来るカードで最善を尽くそうじゃないか」


 アンダーソンは小さな敬礼で答えた。そして現状の再確認と整理を始めた。



 八月四日の時点で、日本海軍主力が日本本土を出撃。四国沖に展開してから消息が不明。


 八月十日現在に、我が方の艦隊が発見される。発見そのものは想定上の事態だが距離が問題。日本の偵察圏が数百キロ伸びており、索敵の範囲の角度も広がっている。

 加えて、想定より多数の潜水艦や哨戒艦艇が出撃している。

 数はどちらも不明だが、今までの日本海軍が出撃させた数の数倍の規模に達する。

 イギリス、ロシアを倒して後顧の憂いがないとは言え、偵察への偏重が見られる。


(おかげで俺の計画にも齟齬ができたじゃないか)


 小さくない悪態でごく短い思考を締めくくったアンダーソンは、周囲の変化に気付くのが一瞬遅れた。


 周囲では様々な情報と言葉が行き交っている。


「前衛のハンターキラーより入電。我、潜水艦を発見。これより攻撃を開始する。撃沈は認められるや否や」

「撃沈を許可すると伝えろ。あと、火の玉小僧に念のため連絡だ。航空機を低空以外で出さないようにとな」

「低空旋回の対潜哨戒機も本来は出したくないところですが」

「止むをえまい。それに事前の偵察での敵哨戒艦艇のラインまではまだ先だ。今は潜水艦を潰さねば、我々はこのまま引き返す羽目に陥るぞ」


 そこまで会話が進んだ時点で、アンダーソンにも前衛のさらに先でピケットと潜水艦掃討を行っている小規模な艦隊が、日本海軍の哨戒潜水艦と接触したと分かった。


 確かに敵の連絡前に撃沈してもらわなくては、全てが水泡に帰してしまう。


 そうしてジリジリするような数十分が経過する。

 艦隊の中核に位置する太平洋艦隊司令部は何事もないように補給作業の終了を目指していたが、内心は全将兵が荒れ狂わんばかりだ。

 こういうときは、待つより行動している方がマシに思えてくる。


 普段は冷静なアンダーソンも、少しばかり焦りの色を浮かべていた。

 他のスタッフの多くも同様だが、司令長官のニミッツと参謀長のスプルアンスは、さすがというべきか焦りを表に出すことはなかった。

 もしかしたら、本当に焦ってなどいないのかも知れないと思えてくる。

 彼らを見たアンダーソンも自らの若さと未熟を振り返り自嘲することで、今少し冷静さを取り戻し、自軍の編成と現状についての反すうを行った。



太平洋艦隊所属艦艇


 ・第一任務部隊

戦艦:アイオワ、ニュージャージ

戦艦:サウスダコタ、アラバマ

戦艦:インディアナ、マサチューセッツ


 ・第二任務部隊

戦艦:コロラド、メリーランド、ウェストバージニア

戦艦:テネシー、カリフォルニア

戦艦:ニューメキシコ、ミシシッピ、アイダホ


 ・第十三任務部隊

戦艦:ペンシルヴァニア、アリゾナ

戦艦:ネヴァダ、オクラホマ

軽空母:ラングレー、ロングアイランド、アーチャー

 +高速輸送船二〇隻


 ・第三任務部隊


 (第1群)

空母:エセックス、イントレピット、フランクリン

空母:タイコンデロガ、ハンコック


 (第2群)

空母:エンタープライズ、ホーネット、ヨークタウン

空母:サラトガ、レキシントン



 各艦隊の主要艦艇は以上。それぞれ一から二個ずつの巡洋艦戦隊と駆逐戦隊を護衛に従えている。


 戦艦は、最新鋭のアイオワ級、サウスダコタ級が全艦。アイオワ級はさらに二隻が東海岸で建造中だが、軍拡停止によって建造が遅れており、アイオワ、ニュージャージも今年に入ってようやく就役した文字通りの新品だった。


 しかもアイオワ級は、四万五〇〇〇トンの巨体と、新型の長砲身一六インチ砲、三三ノットの健脚を備えていた。

 まさに、合衆国海軍が自信と威信を持って送り出した、新世代の主力艦としてのモダンさと風格を生まれながらに持っている駿馬だった。


 条約型戦艦として建造されたサウスダコタ級戦艦も、合衆国海軍の戦艦らしい無駄のないボディーと新鋭艦特有の色彩が混ざり合った頼もしさを感じさせている。

 しかも、全艦が太平洋艦隊に配属されているだけで、今回の作戦に賭ける合衆国の意気込みを感じさせる。

 サウスダコタ級も四三年に相次いで就役した新鋭戦艦だったからだ。


 しかも既存の戦艦も、有力な艦艇のすべてが太平洋艦隊に配属されていた。

 戦艦の中には、日本軍などの目を欺くために、長期演習航海と銘打って南アメリカ大陸最南端のホーン岬経由で遠回りしてハワイに至ったものもある。


 そうして揃えられた戦艦の総数は一八隻。

 これだけの数の戦艦が一つの作戦に投入されるのは合衆国海軍史上初めてであり、世界的に見ても第一次世界大戦のジュットランド沖海戦に次ぐものだった。


 しかも次世代の主力艦として注目されるキャリアー、空母も手抜きされていない。

 まだ戦艦ほど主力としての地位は得ていないが、第二次世界大戦、赤色戦争での日本海軍の活躍と、自らの航空機の発達によってその地位は鰻登り。

 途中で霧散してしまった両洋艦隊法でも重要視されていた艦種だ。


 母艦数は、サラトガ級、ヨークタウン級の全艦と最新鋭のエセックス級が七隻就役したうちの五隻がこの度エントリーしていた。

 しかもエセックス級は、純粋な空母として建造された中では日本の未知の新鋭空母に次ぐ大きさと見られており、斬新な格納庫と飛行甲板のレイアウトもあって、約一〇〇機の機体が運用可能だった。

 この点は、世界一の空母と言って間違いなかった。


 そして、それぞれのキャリアーは七〇から一〇〇機の艦載機を搭載でき、今回は一〇隻の空母の中に九〇〇機も飲み込んでいる。


 船団護衛に従事している軽空母は、実際は貨物船改造の防御力がなきに等しい簡易空母だったが、艦載機は詰め込めば三〇機以上搭載できた。

 そして空母の戦闘力は艦載機が全てであり、コストパフォーマンスに優れている上に十分な側面援護が期待できた。


 いっぽう、警護の騎士となる補助艦のうち、新鋭艦は軽巡洋艦のアトランタ級が四隻、クリーブランド級の生き残り六隻が全艦配備されていた。

 比較的新しいブルクッリン級も三隻もらっている。

 補助艦の主力となる重巡洋艦は、増援を受けて十五隻。

 駆逐艦の数に至っては、十隻以上のタンカーを護衛している補給艦隊所属を除いても七十隻以上に達している。

 一時的ではあれ、大西洋の防備を見せかけだけ残した根こそぎ動員と言って間違いはなかった。

 今回アメリカ合衆国海軍は、第一線戦力の実に八〇%を太平洋艦隊に配備して、本作戦に臨んでいた。


 しかも日本近海を中心に、四十隻以上の潜水艦が数ヶ月も前から哨戒任務に就いており、逐次情報をもたらしていた。


 グァムには三百機の陸軍機がいるが、政治的要素により防衛以外の行動は認められていない。

 海軍所属のカタリナ飛行艇と陸軍のB一七だけが頼りだ。

 艦載機総数は、機動部隊で九〇〇機、軽空母が一〇〇機。


 以上が今回の手駒だ。

 参加艦船約二〇〇隻。航空機一二〇〇機は、合衆国海軍始まって以来の規模だ。


 これだけの兵力を動かす作戦をアンダーソン自身が考え出したというだけで高揚感を覚える。

 ニミッツとスプルアンスから裁可をもらった日は、有頂天になって婚約者アリスの前ではしゃいだものだ。

 今では高揚感より重圧の方が大きかったが、空前の大艦隊が自分の書いた楽譜を見ながら動いていると思うと高揚感が上がるのは避けられなかった。


(しかし)


 合衆国がこれから相手にする日本は、合衆国と同等かそれ以上の海上戦闘部隊を用意しており、しかも待ちかまえる側だった。

 海の上でのランチェスターモデルが顕著に現れることを考えると、正面からぶつかれば日本海軍が勝つ可能性の方が高かった。


 だからこそ今回、合衆国海軍伝統のレインボープラン・オレンジではなくアンダーソンが考え出した奇抜な作戦案が採用された。


 そして彼の考え出した作戦案は戦術的奇襲要素が大きく、事前に敵に察知されることは作戦の失敗を意味した。


 もちろん、すでにマリアナ諸島を速力十二ノットで西進している第十四任務部隊は発見された。

 だがこれは、発見想定時間が一日近く早いだけで、失敗にはならない。

 敵の入念な偵察態勢に警戒はすべきだが、十分に許容範囲だ。


 しかし、この時点での主力艦隊発見は何としても防いでもらわなくてはならなかった。



 アンダーソンは、ふと目の前の時計を見つめた。

 よほど長く考え込んでいたらしく、あれから二〇分近く経っていた。

 しかし、アンダーソンが沈思の間、事態は大きな変化はなかった。

 変化があったのは、補給作業完了の報告だけで、敵潜水艦撃沈の報告はなかった。

 しかしさらに数分後、前衛のハンターキラーチームは任務を無事やり遂げ、勝利の凱歌を伝えてきた。


『敵潜水艦撃沈確実。残骸の中に死体も確認せり』と。


 その報告をしばしかみしめたニミッツ長官は、スタッフの側に身体ごと向けると言い切った。


「さて諸君、これで我々はルビコン川を渡ったことになる。結果がどうなるかはカエサルですら知らない事だが、我らのローマを目指して進もうじゃないか。……フィリピンから文句を言い立てて来るマッカーサー将軍ならこう言うんじゃないかな」


 ウィンクとスタッフ全員の笑い声が号令となって、補給を終えた米太平洋艦隊は、進撃を再開した。


 後はゴールインのテープを切るまで止まることは許されなかった。


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