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勇者転生ライブリンガー  作者: 尉ヶ峰タスク
第六章:災いの源
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150:災厄の予言

 私ライブリンガーが代表する鋼の勇士たちと人々との連合は、戦いの末にウィバーンの手に落ちたメレテ王都の奪還を果たした。

 メレテを乗っ取った鋼魔残党との総力戦であったこの戦い。だが裏で手を引いていた邪神にとっては、ただの陽動作戦に過ぎなかったのだ。

 ウィバーンから力を捧げられて、邪神・インバルティアが封印から解き放たれた。これを知った私たちは、四聖獣の知恵を頼りに動き出そうとしていた。

 していたのだが。


「なんなんだよ。この死霊はッ!?」


「清めても清めても出てこられてはなッ!?」


 私の拳とスパイクシューターが土で肉付けされた骨格を砕く!

 そして怯んだところをビブリオの魔法が冥府へ導く。

 そしてビブリオに襲いかかるものは人の護衛と、頭身低い人型のロルフカリバーが打ち払う。


「殿! 大物はともかく、細かいものの数が! ろくな壁の無い今の都では!」


「ゲートベロスとグリフィーヌも回ってくれている! なんとか手を広げて持たせてくれッ!!」


「殿に言われて、後ろに人がいると分かっていて、やらぬわけには行きませんな!!」


 都とは言っても更地の戦場跡である。城壁も仮組も仮組で、簡素な石壁の間を土塁で繋いだ程度。

 こんな状態で繰り返し四方八方から攻めたてられてしまったら、とても外に向けて動くことなど出来はしない。

 仮にできたとしても__


「ライブリンガー! ビブリオ! 賢者たちはまだ戻らん……戻れんのかッ!? キツネたちもッ!?」


 周辺各国の救援要請に応じるくらいだ。

 各地に飛んだ仲間たちが戻らないのに焦れたグリフィーヌの叫びに、ビブリオはまた冥府送りのゲートを開いて首を横に。


「あっちも戻る途中で凶暴になった魔獣の群れを見つけたって!」


「是非もなしかッ!!」


 無い物ねだりならば無駄だと吐き捨てたグリフィーヌのサンダーブレードが死霊を打つ。

 この威力と輝きに死霊の行進曲が止まったところへ、私もプラズマショット連射を見舞う。

 だがそれで足止めが出来ている範囲の外から人骨を象った暗いシルエットが迫ってくる。

 そんな絶えない進撃の出鼻を暗い色をした光弾が遮る。

 着弾点から開かれた冥府の門は、ひたすらに前進だけをする亡者たちをどんどんと飲みこんでいく。


「ゲートべロスッ!?」


「やはりこの辺りは先の戦いの影響もあってか、迷える者どもが使われることが多いな。私には都合が良いが」


 言いながらゲートベロスは左右に握った銃剣付き拳銃を乱射。辺りの迷える魂たちを安らぎの地へ送っていく。

 そうしてこの場に押し寄せてきた死霊を残らず送り返して、ゲートベロスはクルクルと銃を回して脹ら脛に納める。

 これでおしまいだとばかりの仕草に辺りを見回せば、たしかに死霊の纏う瘴気はすっかりに晴れていた。


「なんと、まだまだ数がいたはずだと思ったが!?」


「勇者殿とビブリオがいるならば突破はないと信じていたからな。任せきりにしてしまったのは悪かったが」


 空からも襲撃の終わりを認めたグリフィーヌの驚きに、ゲートベロスはどうということはないと、三首の番犬になってその場に伏せる。


「悪いなど。むしろ任されていてここまで押し込まれてしまったのが申し訳ないくらいだ」


「わっほい! それはしょうがないって。マキシビークル三つ全部に任せたポイントがあって、合体できなかったんだからさ!」


「その通りだぞ。事実、壁に届く前にゲートベロスが全部を片付け、仕上げに駆けつけられたではないか!」


「ああ。マキシアームもだが、ローラーとローリーか。あれらの巨体もよく進撃を食い止めてくれたよ」


 ビブリオとグリフィーヌのフォローに、ゲートベロスの三首とロルフカリバーもうなずいてくれる。

 そう言ってもらえると、マキシビークル二機も戦線復帰を果たした甲斐があるというものだ。


「うむ! これで私との合体によるマキシマムウイングも選択肢に入って、幅も出るというものだ!」


 グリフィーヌが目の輝きと声を弾ませて言うように、これからは二パターンの合体を状況に合わせて使い分けられるようになったのだ。 

 まあ贅沢を言えば都の奪還戦に間に合えば一番だったのだが、過ぎたことは言っても仕方がない。


「ともかく。今回もまた清めておいたからしばらくは平気だろう。それが一日か、数日かは分からないが……」


 ゲートベロスはやれやれとばかりに頭三つを揃えて左右に。

 封じても封じても短期間で繰り返し現れるとなれば、それは徒労感で嫌気も差すことだろう。


「ではその間にできる限りに防備を整えよう……と言いたいところだがその前に、やることがあるね」


「姉ちゃんを迎えに行かなきゃ、だよね!?」


 目を輝かせるビブリオにうなずいて、私はカーモードへチェンジ。

 ドアを開いて友を迎える。

 襲撃続きのこの状況。当然に負傷者は増える。だからホリィはビブリオに都を任せて、近隣の集落の怪我人に回復の魔法をかけに行っているのである。


「うむ。行ってくると良い。その間の守りは我らが引き受けるからな」


「ありがとう、グリフィーヌ。みんなも任せるよ」


「なんの。殿に頼られたとあれば。それよりも早く行って差し上げてください」


「そーそー。急いだ方がいいよ?」


 覚えはある。しかし仲間たちのものではない声の割り込みに、私は違和感に固まる。

 その分遅れて声のした方角を向いたのなら、そこには黒髪の少女の姿が。


「我が主よ。ご機嫌麗しゅう。冥府の様子はいかがでしょうか? バルフォットはよく勤めていますでしょうか?」


「うん。こっちはダイジョブダイジョブー。新顔のクレタオスとクァールズが門番やってくれてるしー。元々仲間だったバルフォットとも上手くやってるよー」


 相変わらずの平坦ながら軽い言葉で応える冥精霊神エウブレシア様の分体。ゲートベロスに手を振った彼女は思い出したように私たちの方を見る。


「そうそう。新顔たちから伝言ねー。解放してくれてありがとよーって。死んだけれどもってさー」


「そうですか。まあ、ありがとうと言ってもらえてるならなによりです」


 まさか討ち取ったことで礼を言われるとは思わなかった。ウィバーンに取り込まれているというのは、それほどな状態だったと言うことだろうか。


「ああ、ウィバーンだっけか。彼もちゃんとう冥界うちにいるから安心していいよ。まー邪神からの汚染がひどいから、洗い流すのにも時間はかかるし、終わる頃には世界の流れに溶けきっちゃうだろーけど」


「あの! エウブレシア様、それも大事ですけど、早く姉ちゃんをむかえに行ったほうがいいって言うのは?」


 逸れていた話に焦れたビブリオが意を決して問いかけると、精霊神様の分身は手の平を合わせる一本調子な仕草を見せる。


「それはあの娘に死の気配が近づいてるからね。自然なのじゃなくて創造主がねじ曲げて作ったやつが」


 それを皆まで聞くまでもなく、私は甲高い音を立ててスピンターン。

 ホリィの反応を目掛けてタイヤを回す!


「姉ちゃん! 姉ちゃんッ!? 答えてよ姉ちゃんッ!?」


 急ぐ私の中で、ビブリオも繰り返しに呼びかけるが応答はない。ダメだと、通じないと、ビブリオは泣き出しそうな顔になる。だが諦めるにはまだ早い!


「しっかりするんだビブリオ! ライブシンボルはホリィの生命にまだ触れている! 彼女は生きているぞッ!!」


「分かったよ、ライブリンガーッ!!」


 浮かんだ涙を乱暴に拭って呼びかけを繰り返すビブリオを乗せて、私もまた機体が唸りを上げるほどにパワーを高める。


 だがそうして急行した先にあったのは、荒らされ焼き尽くされた村の跡しかなかった。

 しかしホリィの、ライブシンボルの反応はここから離れていっている。恐らくは何者かに拉致されている途中だ!

 だがもしここに生存者がいるのならば、そちらも放置しては……!


「なんと惨い有り様だ……このような村落を焼き払うとは、卑劣な!」


「グリフィーヌ!?」


 逡巡する私の傍らに降りてきたのは、追いかけてきてくれたグリフィーヌだった。彼女は掴んでいた兵士たちを地面に降ろすと、私たちへ顔を向ける。


「ここは私に任せろ。救いを求める手を掴む人手を運んでやるというのもライブリンガーの翼としての勤めよ。だからホリィの事を頼む。私も後から追いかける」


「ありがとうグリフィーヌ! そうだ、マキシアーム!!」


 頼もしい彼女の後押しを受けた私は、マキシアームをコール。グリフィーヌと共にこの場を預けて、ホリィの追跡を続けるのであった。

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[一言] 姉ちゃああああああん!? どんな奴の仕業なんだ……?
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