第99話 そんな、有り得ない
恐慌状態の竜人君達が落ち着いたのを見計らい、僕達は船を出た。
グズグズしていると面倒な人達に見つかる可能性があるからだ。
「Gruuuuu」
外に出ようとしたらMRー001が鼻で突っついて来た。
何だ? お腹でも減ったのか?
弱ったな。今、プリアが居ないから何を言っているのか分からないんだよな。
『恐らく、自分も連れて行けと言っておるのじゃろう』
其処で腰に差している魔剣アンゼリカが声を掛けた。
「付いて行きたいって事?」
『恐らくな』
ふむ。本当の所はどうなのだろうか。
「付いて来る?」
「Gau」
僕が尋ねるとMRー001が頷いた。
「う~ん。でもな~」
外に出たら間違いなく見つかる。
そんな事をしたら密かに付いて行くのがバレてしまうからな。
申し訳ないが、此処は大人しくしてもらおうか。
「悪いけど」
『お主。小さくなる事は出来ないのか?』
僕が言い終わる前に被せるようにアンゼリカが言って来た。
というか、そんな事出来る訳ないだろう。
「いや、そんな事が出来るわけが、あああぁぁぁっ‼」
何か口をモゴモゴしたと思ったら吐き出した。
その吐き出された物は最初液体だったけど、徐々に形づくられていった。
最終的に僕と同じ身長ぐらいのMRー001が出来た。
同時に本体?のMRー001が膝を曲げて地面に伏した。
目に光が無くなったので眠りいやこの場合はスリープ状態になった感じか。
代わりにこの小さいMRー001が動いていた。
「これはあれか? プリアみたいな感じか」
プリアも元は今も魔国に居るケニギンアーヌルの端末とか何とか言っていたからな。
「これだったら連れて行っても問題ないか」
小さくなったMRー001の身体に触れながら皆に訊ねた。
「多分、大丈夫じゃない」
「わたしもマイと同意見だ」
「僕達もそう思います」
誰も反対しないと。
「良し。じゃあ、連れて行くか」
「Gyu」
嬉しそうに頷くMRー001。
「ねぇ、りっ君」
「何でしょうか? マイカさん」
一応、竜人君達が居るので敬語で話す。
マイちゃんは少しだけ首を傾げたが、直ぐに言葉の意味を悟った様で仕方がないと言わんばかりに頷いた。
「この子に名前を付けないの?」
「名前ですか。そう言えば考えてなかったな」
「じゃあ、わたしが付けて良い?」
「えっ?」
マイちゃんが付けるの?
「止めて置け。マイカのネーミングセンスは常人では理解し辛い上にどうしてそんな名前を付ける様になったのか分からないというセンスだからな」
それって要するにネーミングセンスが変と言っているのかな?
「むっ、じゃあ、ユエはどういう名前を付けるのよ」
「ふむ。そうだな」
ユエは顎に手を添えて少し考えた。
「…………バォバロンというのは如何だ?」
「「バォバロン?」」
どういう意味だ?
「わたしの故郷ではティラノサウルスの事を暴龍と書いてバォロンとも覇王龍と書いてバワンロンと読む。その二つを合わせて別にこいつは王様でもないだろうから王を取って、バォバロンつまりは暴覇龍という名前にしたのだ」
「おお、カッコいいな」
「悪くない名前だ」
「僕も賛成だ。じゃあ、今日からお前はバォバロンだ」
「Sygaaaa」
名前を付けられたMRー001ことバォバロンは喜びの咆哮を上げた。
「ちぇ、わたしはレメゲトンのほうが良いと思うんだけどな~」
悔しそうに呟くマイちゃん。
というか、何でそんな名前になるの?
訳が分からないな~。
「まぁ、とりあえず名づけも終わったし、そろそろ行こうか」
「そうだな」
「ん~、りょうかい~」
僕が外に出ようと促すと、マイちゃんだけ不服そうな顔をしながらも皆ついて来た。
そうして、外に出て古びた要塞に向かうと。衝撃的な物を見る。
まさか、要塞の中であの人に出会うとは。
「お前達、この要塞に何用だ?」
……どうして、この人が此処に居るんだ?
………………第一王女アウラ・エクセラ・ロンディバルア殿下。




