第61話 首の皮一枚繋がった気分だ
「ふむ。確かに道理で言えばその通りだな」
顎を撫でながら頷くスティードン一世。
でも、直ぐに渋い顔をした。
「しかし『八獄の郷』との同盟を結ぶ方が大事だと思う。だから、ジェシカの婚約を先にしても良いと思うのだが」
どうやら余程僕とジェシカを婚約させたいらしい。
それを聞いてもニコルは平然としていた。
「婚約とは家と家との結びつく事です。ですので、道理に合わない事をすれば天に唾をするも同じです」
「むっ」
「更に言えばわたしがお見合いをして相手を見つけて、ジェシカと婚約させたらめでたい事が二つ重なるという良い事だと思います」
「ふむぅ。そう言われるとそうだな」
スティードン一世はそれも悪くないなという顔をした。
「という訳で、わたしの方から先にお見合いをさせて頂けますか?」
「分かった。ああ、そうだ。相手を探す前に聞いておきたい。何か条件はあるか?」
「別にこれと言って条件など、美醜は問いませんが。一つだけ条件があります」
「その条件とは?」
どんな条件を言うのか気になり僕達は固唾を飲んだ。
「わたしよりも強い事です」
「ふっははは、そうか強い男が好きか。良かろう。我が国でも一~二を争う強者を呼び寄せて、その者達を戦わせて最後まで勝ち残った者と見合うという事で良いか?」
「ええ、ですが。見合いなど要りません。そのまま婚約しても良いと思います」
「ははは。そうか。ならばそうするとしよう」
よっぽど面白かったのか大笑いするスティードン一世。
笑い終わるとリリアンさんを見る。
「お前の娘は中々に剛毅だな」
「ええ、その通りです」
「では、直ぐに準備いたす。それまで待っておるが良い」
そう言ってスティードン一世は肘置きの傍にあるテーブルから呼び鈴を取り鳴らした。
少しすると、僕達が入って来たドアが開き執事服を着た人が入って来た。
「お呼びですか?」
「妹達と客人を部屋に案内せよ」
「畏まりました」
執事服を着た人が一礼して、僕達について来る様に手で指示して来たので僕達はその後に続いて謁見の間を後にした。
その夜。
僕は案内された部屋に居た。
案内された部屋はかなり広かった故郷の城で使っていた部屋よりも狭いが十分に広いと言えた。
天蓋付きのベッドに腰掛けながらこれからどうしたものかと考えた。
先程はニコルさんの機転で何とかなったが、ニコルさんの相手が決まったら直ぐに僕とジェシカとの婚約式が行われるだろう。
そうなったら想像すら恐ろしい事が起こる。
最終戦争かラグナロクもかくやという大惨事が起こるのが見える。
見も知らない人達とは言え傷つくのは、流石に心が痛むな。
そんな事は流石に起きない様にしなければ。
しかし、下手に連絡すれば恐らく此処に来るだろうな。
「八方塞がりだな。だとしたら、此処から脱出しかないな」
でも、この国の地理が分からない状態で逃げるのは無謀と言える。
此処は早い所、地図を手に入れないと駄目だな。




