第60話 な、なんて恐ろしい事を思いつく人なんだ
「兄上。今、何て言ったの?」
「ジェシカとそのリウイとやらと夫婦にさせぬかと言ったのだ」
「なん、ですって⁉」
驚きの大声をあげるリリアンさん。
気持は分かる。
というよりも、この人。良くそんな事が言えたな。
イザドラ姉上が今の言葉を聞いたら。
ブルブル。恐怖で身体の震えが止まらない。
「兄上。『八獄の郷』を味方にするつもりですか?」
「その通りだ。遠くと結び近くと戦うという召喚した渡来人から面白い話を聞いたので、それを行っているのだ」
遠交近攻の策か。その渡来人は兵法か歴史が好きなのだろう。
しかし、ここら辺の地図は見た事が無いからこの国の勢力図と地形が分からない。
それが分かれば、副都に居る皆に連絡を送る手段があるかもしれない。
待てよ。いっその事、ジェシカとの式で皆に知らせるという手段もあるな。
でも、それをしたら激怒しそうな人達が二人いや今頃は副都に着いている可能性もあるから三人居るな。下手したら国に攻め込んで来そうなんだよな。
う~ん。『八獄の郷』に居る御祖父さん達にだけ連絡できる様にするか?
いや、話を聞いて見た限りだと、そんな連絡しようものなら軍を率いて攻め込んできそうな気がする。
しかし、誰にも連絡できないというのも問題だ。
どうしたものかな。
「兄上。この子はまだ十五ですよ。ジェシカも同い年です。まだ結婚は出来ないですよ。我が国の法では男子は十九。女子は十八にならないと結婚できないという法があるのですよっ」
「ならば、今は婚約式を結ぶと言うのはどうだ? 悪い話ではなかろう」
「ですがっ」
「それに傍から見ても、二人はお似合いだと思うがのう。ジェシカよ」
「は、はい」
スティードン一世に話しかけられて驚きながらも反応するジェシカ。
「お主はそのリウイの事をどう思っているのだ?」
「えっ、それは・・・・・・」
顔を赤らめもじもじとしながらチラチラっと僕を見るジェシカ。
くっ、そんな可愛い仕草をされると何も言えない。
「ふむ。憎からず思ってはいるようだな」
ジェシカの反応を見てスティードン一世は悪い笑顔を浮かべた。
むっ。このままでは婚約式を今でも行いそうな感じだ。
「お待ちくださいっ」
そう思っているとニコルさんが大声を上げた。
「どうした。ニコル?」
「伯父上。いえ国王陛下。妹の婚約式をする前にする事があります」
「する事? 何だ?」
「古来より結婚又は婚約の儀は年長の者からするのが道理です。その道理を捻じ曲げては王族の威厳を示すのは難しいと思われます」
「ふむ。一理あるな。しかし、そうなるとお前達の姉であるシャロンの結婚か婚約させるのが道理だが、その本人は居ないぞ」
「ですので、わたしが先に式を行うのが道理です」
ニコルさんは胸に手を当てて言う。




