閑話 とんでもない身内をお持ちだ
今回はダイゴク視点です
若と共に『八獄の郷』に向かったクレハから手紙が来たので、中身を読むなり目を疑った。
その後にセクシャーナト様から手紙を届いた。その中身を読みこれはあっし一人で判断する事ではないと思い直ぐに商会の主要メンバーを集めた。
「本当なの?」
「クレハがわざわざ手紙に嘘を書いて送って来る理由はないぜ」
「確かにそうだが」
ソフィーとハヌカーンは頭を悩ませた。
他の者達も同様であった。
二つの手紙の内容はほぼ同じ。
若が二コラとジェシーと共に何者かに攫われたとの事だ。
セクシャーナト様が書いてある手紙には犯人はハノヴァンザ王国の者達である可能性があると書かれていた。
どうして、そんな事が分かっているんだと疑問に思うがそれよりも今は若達の事だ。
更に驚いたのがクリストフの奥さんのリリーも何者かに攫われたそうだ。
「こうも状況が重なると何かあると思うのだが、どう思う?」
「・・・・・・クリストフ」
若の信頼が厚いリッシュモンドが問いかけると答えないで、クリストフに訊ねた。
「は、はい」
「妻が攫われた理由は分かっているのか?」
「それは・・・・・・」
口籠るクリストフ。
これは何か隠しているなと直ぐに分かった。
「何かあるのであれば直ぐに話すが良い。リウイ様が攫われた理由の繋がるかもしれぬ」
「・・・・・・」
「口外したくない秘密でもあるのであれば、我らの胸の内に収める。だから、攫われる訳を話してくれ」
「・・・・・・分かりました。お話しします」
そう言ってクリストフはポツポツと語りだした。
「わたしは元はハノヴァンザ王国の首席技術官でした。国の為に色々な物を開発しました」
「技術官ね。だから、魔石を使った魔道具を開発できたのか」
それであれだけ技術力があったのか。
「運と実力もあったお蔭で、わたしは次期技術局局長になると言われた時です。わたしは妻と出会いました。その当時は公爵でリリアンと名乗っていました」
「ハノヴァンザ王国で公爵でリリアンって言えば、現国王の妹じゃねえか」
「その通りです。最初に顔を合わせた時からどうも惹かれたと言いますか、一目惚れと言った方が良いのですしょうね。わたしと妻は恋に落ちたのです。技術局局長になる事は決まっていましたので、結婚するのは問題ありませんでした」
それで、何となくこの後の話の流れが分かった。ようは追放されたか国外逃亡して今に至るって所なんだろうな。
案の定、奥方が国王に歯向かい過ぎる為に謀反の疑いを掛けられたので、国外に逃亡。そして今に至ると。
「つまり、奥方と娘さん達にはハノヴァンザ王国の王家の血が流れていると?」
「その通りです」
これでリリー達が攫われる理由は分かったが、どうして若まで攫われるんだ?
「犯人を特定させない為に一緒に捕まえたとか?」
「その可能性も無いとは言い切れないが、もしかして、リウイ様の身分がバレて『八獄の郷』との交渉を上手くいく為の攫ったという可能性もあるぞ」
むうっ。その可能性も無いとは言えないな。さて、どうするべきか。
「・・・・・・そんな事はどうでも良いわ」
会議に参加している椎名嬢ちゃんがポツリと言う。
目に光は無く背中には大弓を背負い腰には変わった形のナイフを二本交差する様に差していた。
側にはリリムも居る。腰には二本の剣を差していた。
「リウイ君が其処に居るのでしょう。じゃあ、助けに行かないと」
「今回ばかりは貴女に同意するわ」
そう言って外に出ようとする椎名嬢ちゃん達。
「何処に行く?」
それをリッシュモンドが止める。
「なに? 邪魔をするの?」
「リウイ様からお前達を好きに行動させるなと言われているのだ。故にお前達を行かせるつもりは無い。自重せよ」
「面白い事を言うのね。死人風情が」
「貴方とはそれなりに長い付き合いだけど、久しぶりに腕試しでもする?」
そう言うなり、二人は獲物を抜いた。
「ほざけ。貴様ら如きが何人束になろうとわたしに敵うと思うのか?」
そう言ってリッシュモンドは仮面に手を掛けて身体から魔力を溢れさせた。
「主命に従うのは良いけど、その主人が危険な目に遭っているのかも知れないのに。よく平然としていられるわね」
「所詮は死人。主に対する忠心などあまりないのでしょう」
「そのような事を二度と言えないように、貴様らも死人にしてやろうか?」
三人が戦闘態勢に入った。
やべえ。此処に居たらとばっちりをくうな。
此処は離れるべきだと思っていたら。
「今の話、本当?」
この声はティナ嬢か。
確か知り合いが近くに来たとか言っていたので迎えに行くとか聞いていたな。
ティナ嬢の後ろを見ると女性が五人ほど居た。
「リウイが危険な目に遭う?」
「どういう事?」
「誰か説明せいっ」
「う~ん。リウらしいと言えばらしいかな~」
ティナ嬢が連れて来た女性達を見て、俺は言葉を失った。
そして超怖いと思った。
姐さんと共に色々な戦場を駆け『義死鬼八束脛』の総長になってからも数多の戦場を駆け巡った。
強い奴は数えきれない程会った。強いとは思っても勝てないと思わなかった。
あっしが今迄怖いと思ったのは、ハバキの姐さんだけだった。
そのあっしが思う。この五人中で誰か一人でも戦えと言われたら迷わず降参すると。
それぐらい怖いし敵う気がしねえ。
中でも先程から黙っている女性が一番怖い。
無言なんだけど、全身から膨大な魔力を放出している。思わず跪きそうなくらいだ。
いったい何者なんだ。この女達は?
そう思っていると、ソフィーディアが女達の前に出て一礼した。
「お久しぶりです。皆様方」
「挨拶は良い。ソフィーディア。これはいったいどういう事じゃ?」
「情報が錯綜しているので確実な事は一つしか言えません。リウイ様が何者かに攫われました」
ソフィーディアがそう言った途端。先程から無言でいる女性の魔力の圧が更に増した。
なんて圧だ。今にも押し潰されそうだ。
「・・・・・・ソフィーディア」
「はい。イザドラ様」
「貴女。今、何と言いました?」
「リウイ様が、攫われたと申しました」
「・・・・・・貴様は、その時に何をしていたっっっ‼」
その女は目を見開かせて縦長の瞳孔でソフィーディアを睨んでいた。
やべええ。にげてええ。此処に居たら殺される。
そう思える位に怖い女が目の前に居た。
「・・・御怒りはごもっともです。ですが、今は御怒りをお鎮め下さい」
「何貴様如きがそのような事を言えると思えるのか? そうか、リウイを攫われた責任で死にたいのか?」
ソフィーディアはそう思えるぐらいに毅然としていた。
それは待ったと言いたいが、こ、声が出ない。
「御怒りは分かります。ですが、そのように魔力を放出されては折角リウイ様が手に入れたこの建物が壊れます。そうしたら、リウイ様が悲しまれます」
いや、今はそういう事を言う場合では無いと思うぜっ。
「むぅ、それもそうですね」
何故か突然、女は魔力を放出するのを止めた。
誰かが安堵の息を漏らした。
あっしも頬を流れる汗を手で拭った。
「リウイ様は現在何処に居るのか探索中ですので、今しばらくお時間をください。御怒りをぶつけるのは、すべてが終わった後で」
「・・・・・・ふぅ、仕方がないですね。此処はリウイの顔を立ててそうしましょう。でも、探索に手を抜いたと分かったら、その首と胴体が物別れになると思いなさい」
「はっ、承知しております」
ソフィーディアはそう言って皆に指示を出した。
俺はそれを横目で見ながら、ティナ嬢の傍に行く。
「ティナ嬢。ティナ嬢」
「なに? ダイゴク」
「あの女性の方々はどちら様で?」
「リウイの腹違いのお姉ちゃん達よ。右からロゼティータ、イザドラ、フェル、ヘルミーネ、ミリアリアと言うのよ」
「若の姉君と言うと魔王の娘か?」
「そっ。特に一番ヤバいのが次女のイザドラ様。どれくらいヤバイかは分かるでしょう」
勿論とばかりに頷いた。
「イザドラ様は先代の魔王陛下の子供の中で次期魔王筆頭と言われる位に強くて政にも長ける御方なのよ。それでいて冷静沈着、剛毅果断、公明正大という上に立つ者として必要な者を持っているのよ」
「はぁ、それは凄いな」
「そのイザドラ様の唯一の欠点がリウイの事が好きすぎる事なのよね」
「はぁ?」
若の事が好き過ぎる事が欠点?聞いた事無いな。
「もう目に入れても猫可愛がるどころじゃなくて、病気と言っても良いと思えるくらいね。もう、口から砂糖が出そうな位に甘いのよ」
「はぁ、さようで」
そんな弟に甘々姉ちゃんには見えないんだがな。
そう思っていると、視界の端で椎名嬢ちゃんとリリムが服を皺や身なりを正しだした。
「リウイ君のお姉さん。ちゃんと綺麗な格好で挨拶しないと」
「ああ、お姉様方が来ると知っていたらもっと良い服を着たのに」
今更自分達が着ている服を気にしだした。
しかし、若の身内は姐さんも含めてヤバイ人しかいないのかねえ。




