第11話 店名はどうしようか。
クリストフと言う技術者と知り合う事が出来た僥倖を喜びつつ、店の開店準備を進める。
この建物は商売をするのは十分な広さだが、僕達が住み込みで働くには手狭だ。
なので、三階は休憩室にして二階も売り場にしようかという話になった。誰も異議はなく可決したが、問題はその階は何を売り出すか考えた。
一階はクリストフが作った物と前の店で売っていた物を売り出すので、それ以外の物にした方が良い。
しかし、皆、具体的に何を売るかと言う話になると誰も何も言わないので、時間だけが過ぎて行った。
僕も何を売りにしたら良いのか正直に言って何も思い浮かばばい。
う~ん。どうしたものかな。
その日も会議が終り、僕は1人で宿に戻る道を歩きながら何かないかと考える。
困ったな。もう改装は済んでいる。内装に手を掛ければ後は何時でも開店できるのだが。
「はぁ、困ったな……」
そんな事を考えていたからか、横から来た人への反応に遅れた。
「きゃあっ」
僕からぶつかった事で、ぶつかった人は可愛い声を上げて尻餅をついてしまった。
「すみません。僕の不注意で」
そう言いながら僕はぶつかった人を見る。
ぶつかったのは女性で平均的な身長。ウエーブがかった藍色の長髪。整った顔立ち。ぱっちりとした目に漆黒の瞳。グラマラスなな体型だからか曲線美は美しいのだが、女性の象徴と言える物が豊満であった。
「いえ、大丈夫です」
女性は尻に着いた埃やらを手で叩きながら立ちあがる。
「何処か怪我はないですか?」
この世界だと怪我一つで因縁つけたりするからな。怪我があったら僕の懐から治療費を出してでも治さないと。
「いえ、大丈夫です」
「そうですか。すいません。考え事をしていて不注意でした」
「気にしないでください。わたしも不注意でしたから」
ニッコリと笑う女性。
一瞬その笑顔に見惚れていたが、直ぐにその女性の周りに色々な食材が飛び散っている事に気付いた。
「すいません。拾うのを手伝いますね」
「見も知らない人なのにすみません」
女性は恐縮しながら食材を拾っていった。
紙袋の中に入れる際、触ってみたがどれも潰れたりしてなくてよかった。
全部、紙袋に入れると女性は安堵の息をもらした。
「ありがとうございます。では、これで」
女性が一礼して離れて行った。
僕はその背を見送りながら、周囲に漂う残り香が鼻腔をくすぐった。
「はぁ、綺麗な人だったな」
僕よりも年上だろうな。
「名前を聞きそびれたけど、縁があったら会えるか」
そう思い、僕はまた二階で何を売りにするか考えながら歩き出した。




