第29話 そろそろこの都市から離れる準備をするか
トーマスさんと『翡翠糸』に関する話しを終えると、ホクホクした顔で店へと戻るトーマスさんを見送った僕は店に戻る。
そして、シャリュに声を掛ける。
「シャリュ。休憩時間にでも他の人に伝えてくれる。今夜、皆に話しがあるから、時間を作ってくれって」
「分かりました」
「じゃあ、店の開店準備をしよう」
「はい」
僕達は開店準備を始めた。
その夜。
僕は宿屋にある談話室を借りて、皆を集めた。
「皆居る?」
「はい。人数が多い部族の者は代表者を出しました」
で、代表者がハダとバシドとランシュエとバイアとアルトリアとアルネブとアーヌルとダイゴクか。
「さて、皆に集まってもらったのは他でもない。今朝早くこの都市にある『鳳凰商会』の支店長が来たんだ」
そこで話した事を皆に話した。
「で、『鳳凰商会』の会長には、この大陸に来る前から、良い場所を紹介してくれと頼んでいたから、会長から連絡がいつ来ても行動できる様に、皆には準備してくれるかな」
「『鳳凰商会』ですか。我らも何時までもこの都市にいる必要はないですからな。此処よりも良い所があるのであれば、移るのも良いかと思います」
リッシュモンドがこの都市から出る事は賛成か。
「ねぇ、リウイ。聞いても良い?」
「なに、ティナ?」
「あの女の言葉を信じて良いの?」
ティナの言葉に賛同するかのように、カーミラ、シャリュ、ランシュエが頷いた。
「いやぁ、大丈夫でしょう。向こうの大陸で良い商売をしたのだから、その恩を返してくれると思うよ」
「商人なんだから、最初は良い顔をしておいて、こっちが一文無しになったら手の平返す様な事をしても可笑しくないわよ」
カーミラが思っている事を言う。
ユエの事だから、そんな事はしないと思うな。
それにそんな事をしたら、信用に係わるから、あまりにリスキーだ。
と、僕は思っても皆はそうは思わないか。
「まぁ、向こうがこちらとの約束を反故にするつもりなら、それはそれで良いと思う。そうなったら、僕の人の見る目が無かったと笑うだけだから」
「流石はリウイ様ですね」
「海の様な度量をお持ちです」
シャリュとランシュエが僕を褒めだした。
「ありがとう。それにこの都市を出ても暫くは移動しても問題ない資産はあるから」
最初は路銀を稼ぐだけの商売が、何時の間にか支店を作っても良いなと思える位に儲かっていた。
「むっ、確かに」
「もし、会長が約束を反故にしたら、その時はこの大陸を回って、路銀が足りなくなったら商売をして皆が気に入った所があったら、其処を定住すればいいだけだし」
まぁ、そんな事はないだろうな。
中国人は面子を重んじるというからな。ユエも何だかんだ言ってそういうのを重んじている所がある。
「まぁ、其処まで考えているのなら良いけど」
ティナが了承したのを見て、他の人達を見る。
皆、何も言わない所を見ると特に問題はないという事か。
「話はこれで終わり。もう、自由にして良いよ」
僕が解散を告げると、皆談話室から出て行った。




