第8話 母さん。何をしたの?
僕達は案内してくれる人と一緒に、ギルドマスターが居る部屋の前に着いた。
「ギルドマスター。例の件の者達のリーダーをお連れしました」
『通せ』
入って良いと言う許可を貰ったので、案内してくれた人はドアを開けた。
ドアを開けると、仕事中だったのか、書類を見ている老人が居た。
歳の割に精悍そうな顔立ちで、袖なしの服を着ているが、それからでも分かる筋骨隆々の身体。
茶色の髪の毛が揉みあげと口髭と顎髭が合体しているので、辛うじて口が見える。
ドワーフ?と思った。
前世ではよく見たけど、魔国ではあまり見なかったな。
と思って見ていると、そのギルドマスターが椅子から降りた。
椅子から降りると、結構身長が高い事が分かった。
百八十、いや百九十はあるな。
記憶の中のドワーフは、もっと低身長だったので、この人は人間かな? もしくは、ドワーフと他種族との合いの子か?
「儂はこの湾岸都市『ヨドン』のギルドマスターのギムレット・マーフィアンじゃ」
自分の名前を名乗ったギルドマスター。
確か、亜人族のファミリーネームは自分の部族の名前だと教わったので、恐らくマーフィアンという部族の出なのだろう。
「で、お主達を案内したこ奴はフィリクスだ」
「よろしく」
フィリクスは手を差し出したので、僕も手を差し出して握手した。
「リウイと申します。この度は色々と面倒を掛けてすみません」
「なに、さほど迷惑は掛かっておらんよ」
ギムレットが先に座ったので、僕の後ろにいるアルネブが小さく舌打ちした。
僕は聞いてないフリをして、ギムレットさんと対面に座る。
フィリクスはギムレットの隣に座り、アルネブは僕の後ろに立った。
「? 座ったらどうだ?」
「立場は弁えておりますので」
そう言って、僕の後ろにピッタリと張り付くように立つ。
「ふん。分かった。では、リンドヴルムが襲って来た経緯についてを聞かせてほしい」
「はい」
僕はあの現場で何が起こったか、出来るだけ事細やかに話した。
「……という訳です」
僕が話を終えると、ギムレット達は納得した顔をしてくれた。
「成程な。事情は分かった。この時期のリンドヴルムは繁殖期だかな。だから、食えそうな物は手当たり次第に襲い掛かるからのう」
「まさか、都市の入る人達の列に襲い掛かるとは、今後は外にも警備を配備した方が良いでしょうか?」
「じゃが、今、都市の軍は遠征に行っておるから、衛兵隊だけでは足りぬぞ。この都市に居る傭兵だけでは手が足りぬわ」
「そうですね。軍が帰って来る一ヶ月後。その間、どうしたものか」
二人して頭を悩ませている。
遠征ね。それで、フィリクス達が来るまで、衛兵が来なかったのか。
さて、何時までも此処に居ても仕方が無いから、お暇するとしますか。
茶も出されてないので、一言言って出て行けばいいか。
僕が口を開こうとしたら、ギムレットが話すのを止めて、僕を見た。
「おお、そうじゃった。お主、見た所、鬼人族のようじゃが? 合っているか?」
正確に言えば、魔人族と鬼人族のハーフだけど。
此処で魔人族のハーフと言っても大丈夫かな?
この時代で魔人族がどんな扱いか知らないんだよな。
「……はい。正確に言えば、ハーフですけど」
「ハーフか。今の時代は多いのう。鬼人族と何のハーフじゃ」
「人間です」
魔人族とは言えないので、此処は無難な人間にした。
「ほぅ、珍しいの。鬼人族はあまり人間を好いてはおらぬ筈じゃが」
そうなんだ。母さんはそんな事は言っていなかったけど。
「母のハバキはそういう考えは持たない主義のようで」
僕が母さんの名前をあげると、ギムレットは目を見開いて、背もたれまで背中をつけた。
「は、はばき⁈ お主、ハバキの息子か?」
「? はい。そうですけど?」
何をそんなに驚いているんだ?
僕がそう言うと、ギムレットはまるで化け物を見るかのような目で僕を見る。
「お、おおおおおぉぉぉぉぉぉ・・・・・・・」
そして、絶望したような悲鳴をあげながら両手で顔を覆い、天上を見た。
「「???」」
いきなりの事で、話がついていけないのだけど。その反応を見るに。
「あの、母の知り合いですか?」
僕がそう尋ねると。
「聞くな‼ 思い出すだけで古傷が開く‼」
片手で顔を隠しながら、もう片方の手を広げて止めというポーズを取る。
「思いだすだけでも、恐ろしい。あの虐殺者め‼」
今度は床を見ながら恐ろしいと言わんばかりに震えだした。
「虐殺者⁉ あの伝説の⁉」
伝説って。母さん、貴女は何をしたんですか?
その後、僕達はギルドマスターのご厚意で、ギルド直営の宿屋に泊まる事が出来た。
宿泊料は幾らかと訊くと。
『あの虐殺者の子から金を取ったら、後がこわ、ゴホン。いや、お前さんの母親には色々と世話になったからな。これぐらい安い物じゃ。好きなだけ、この都市に居てくれ』
と言ってくれたので、その好意に甘える事にした。
一人一部屋取って、その日は特に話す事なく、就寝した。
翌日。
朝日が部屋に差し込み、小鳥が囀りを聞きながら、僕は微睡んいると。
『頼もううううっ‼』
建物が震えそうなくらいな大声が聞こえて来た。
その声で、完全に目が覚めた。
『この宿にハバキ殿の御子息リウイ殿が居られると耳にした。どうか、お目通りを願いたい‼』




