閑話 バシドの暗躍
今回はバシド視点です
リウイ様の命令を受けたわたしは直ぐに『ランページクラブ』が拠点にしている所に潜入した。
このチームは拠点で生活している者が少ないので、誰にも見つかる事なく潜り込めた。
拠点の天井を立てずに駆ける。
わたしの種族であるアラクネ族の中では、わたしは魔法の扱いは下手だ。
そんなわたしでも使えるのと言えば、身体を変化させる事と糸を使って操る魔法しか使えない。
成人した我が部族では誰でも使える魔法だ。
なので、身体能力の向上に計った。お蔭で、わたしは戦士としての腕は里の中では、三本の指に入る実力者になった。
その驕りに負けず、日夜わたしは研鑽に励んでいた、そんなある日。族長に呼び出された。
族長曰く、新しい領主から部族の中から人を派遣する様にと話しがでたそうだ。
そこで、族長はわたしを送る事に決めた。わたしの実力を鑑みてだろう。
わたしは文句一つ言う事なく、族長の命令に従い、新しい領主の下に行った。
そして、新しい領主であるリウイ様に出会った。
『初めまして。この領地の領主をしているリウイだ。これからよろしく』
そう言って、手を伸ばして握手を求めた。
わたしは悪い御方ではないのだなと思いつつ、リウイ様の手を握った。
『アラクネ族だからかな、身体が大きいな。用意した部屋が入るかな?』
『お構いなく』
『いやいや、暫くは此処で暮らしてもらうのだから、其処は妥協しないで良いから』
『お心遣いありがとうございます』
何となくだが、気を使われているのが分かった。わたしの事など気にせずとも良いのに。
それからは、わたしはリウイ様の命令に従って、色々な事をした。
糸を使っての盗聴。変化の魔法での情報収集。魔獣退治等々。
その度に、あの方は。わたしに微笑みかけてくれる。
『ありがとう。バシド』
微笑みながらそう言われて、不覚にも胸がときめいた。
その所為なのか、あの方の声を聞く度に心が躍る。
これが、何という感情なのか分かっている。
しかし、この気持ちは誰にも告げる事も、まして、リウイ様にも言う事はない。
あの方はわたしよりも魅力的な女性が沢山近くに居る。
そんな中に入る程、わたしは美しくない。
だから。この気持ちを押し殺して、あの方に仕える。
そして、わたしはある部屋の天井まで来た。
その部屋には、ある人物が居る。
「zzzzzz」
その人物はベッドで横になっていた。
その人物の名はアクベンス。
南地区に二つあるチームの一つ『ランページクラブ』のリーダーだ。
顔立ちは人に見えるが、右手がハサミになっていた。
事前に調べた通り、アクベンスはこの時間は酒を飲んで眠っていると掴んでいた。
わたしは天井から、音も無く部屋に降り立つ。
そのまま、アクベンスに近付く。
『バシド。『ランページクラブ』のリーダーを捕まえてきてくれ。そして、捕まえたら都市から出して、何処でも良いから置いてきて』
そんな命令を受けたわたしは、内心で首を傾げていた。
別に、此処で暗殺すれば、このチームは瓦解するのでは? と思いつつも、わたしは命令に従い、アクベンスを糸で雁字搦めに縛って抱えた。天井にあがり、そのまま来た道を引き返した。
何処でも良いと言ってたので、わたしは近くにある森に捨てて来る事にした。
しかし、これで何が起こるのか気になった。
リウイ様に訊ねても『その時になったら教えるから』と言って教えてくれる気配がない。
仕方が無いので、その時まで待つ事にした。




