閑話 姉達の散歩
ヘルミーネ視点です
「でねぇ、この前は西地区のマーケットで、色々と面白い物を見つけたのよ~」
姉であるフェルに誘われて、わたしは北地区を歩いている。
本人曰く、観光案内をしているそうだが。
「でねでね。ウ~ちゃんはね。凄かったのよ。ぼくしんぐ? とかいう異世界の競技を元にした試合で、自分よりも大きい相手に勝ったのよっ」
フェルは数日前にあったマーケットで行われた試合の事を話しながら、露店に売られている食べ物を食べている。
案内というよりも、食べ歩きに付き合わされている気がする。
まぁ、何時もの事なので気にしない。
わたしとフェルは形式場は姉妹という扱いになっているが、実際は生まれた日が同じなので、同い年だ。
そうなったのは、父上が色々な所の女性を口説き回ったからだ。
なので、実は他の兄達とも、歳は変わらない。
フェルもそれを知っているのか「姉さんをつけないでいいわよ」と言っている。
なので、つけていない。
「ヘルミーネ。如何? 楽しんでる?」
「勿論」
こうして、誰かと話しを聞きながら、話しを聞くのは楽しい。
わたしは口下手の方なので、話すよりも聞く方が好きだ。
リウイもそれが分かっているのか、わたしには良く話しかけてくる。
「それにしても、ウ~ちゃんの女たらしぶりは、歳を取るごとに上手くなっていくわね~」
「そうなのか?」
「ええ、今でも、ティナちゃん、ソフィー、シャリュ、それにこっちに来てからアマルティアちゃん、カーミラちゃん、アルトリアちゃん、最近だとランシュエちゃんも怪しいのよね~」
随分と女性に好かれるのだな。父上の血だろう。
「後、何かディアーネとかいう人も粉を掛けているようなのよ」
子は、親の背を見ずとも似るものなのだな。
そう思いながら歩いていると。
ガシャーンという物が割れる音が聞こえた。
「何の音かしら?」
「…行ってみよう」
わたし達は、その音が聞こえた所に向かう。
少し歩くと、何が起きたようで人だかりが出来ていた。
わたし達はその人だかりを掻い潜りながら、前に進む。
そして、人だかりを抜けた先には。
中年の男性が、若い男の足元にしがみついていた。
「お願いです。娘達と店の権利書を返してくださいっ」
「駄目だっ。お前は、俺達『ブルーファルコン』だけではなくて『クレイジーベア』にも金を借りたんだぞっ。返済期限は今日までだったろうが、返せないなら、娘達と店の権利書は頂くと言っておいただろうっ」
「で、ですが。あんな、法外な金利じゃあ、利子を返すだけで無理ですよっ」
「じゃあ、店と娘達は諦めな」
「そ、そんな、せめて、後三日待ってくださいっ」
男性が若い懇願した。
「うるせえ!」
男は男性の腹を蹴った。
「おとうさんっ」
「とうさんっ」
男性の娘達なのだろう、目に涙を溜めながら蹴り飛ばされた男性に声を掛ける。
「おっと、お前等はこっちだ」
若い男が女性達の腕を引っ張ると、近くにいる手下に預ける。
「お前等、見せしめだ。この店をぶっ壊しちまえっ」
「「おおおおおおっ」」
若い男がそう言うと、手下たちが槌やら何やら持っている。
流石に、これ以上は問題ありだな。
わたしは前に出る。
「おい」
「あん? 何ぐぶdんhごれいじじょ」
近くに居た手下の一人を殴ると、一発で気を失った。
情けない。鍛え方がなっていないようだ。
「何だ。てめえは‼」
「何処のチームのもんだ?」
「わたしは……」
この場合、何て言えば良いのだろうか?
う~ん。身分を明かすべきか? それとも偽名を使うべきか?
どうしたら良いかな?
頭を悩ませていると。
「あんた達に、名乗る名前なんかないわよっ‼」
そう言うなり、フェルは手下達を次々に昏倒させていく。
「ふざけやがって‼」
「まず、こいつらをやっちまえ‼」
手下達が襲い掛かって来た。
だが、ものの数分で。
「い、いてええ・・・・・」
「ば、ばけものか? ・・・・・・」
若い男の手下たち全員が地面に倒れていた。
少し弱すぎないか?
「ひ、ひいいい、お、おぼえてろよっ」
若い男はそう言って逃げ出そうとしたけど、フェルが。
「ほい」
何処からか鞭を取り出して、若い男の首に巻き付いた。
「ぐえ!」
「逃げちゃあ、駄目よ。ちゃんと、証人になってもらわないと、ね」
フェルは玩具を見つけた子供の様な顔をしていた。
ご、拷問しないように。ちゃんと見てないと駄目だな。
この騒ぎだから、その内、衛兵が来るだろう。
その時に事情を話そう。




