第49話 仕事に専念しようとしたら
僕達は魔獣に騎乗して都市に向かう。
ヘル姉さんは、僕と並走している。
「どう、この都市は?」
「……立派だな」
「でしょう。ここまで立派にするのも時間が掛かったけどね」
「そうか、頑張ったな」
ヘル姉さんは笑った。
「「ひっ⁉」」
その悪魔が笑ったような笑顔を見て、僕が連れて来た者達は悲鳴をあげた。
ヘル姉さんの笑顔を見慣れていないと、皆怖がるからな。
「ねぇ、リウ~」
「なに、ミリア姉ちゃん」
「この都市の名物って何?」
名物か。特にないな。
まだ、この領地は発展途上中だからな。精々。
「しいて言えば、青塩かな」
僕がそう言うと、連れて来た人達も頷いた。
「あおしお?」
ミリア姉ちゃんは首を傾げた。
「その、あおしお?というのはなんだ?」
「青塩と言うのは、この都市の北部にある『清海』の水で作った塩だよ」
面白いのが、この『清海』の水を鍋の中で煮込んでいると、白い塩になるのだが、何故か、流下式塩田にすると、何故か白くならず青色になる。
なので、鍋で煮詰めた方法の塩を高級品に、流下式塩田で出来た塩を一般的に使える値段設定にした。
鍋で煮る方が手間と人件費が掛かるので、値段を高額にしている。
僕は白砂糖と三温糖みたいな物と考えて販売している。
「へぇ、その塩って舐めても大丈夫なの?」
「まぁ、軽く煮沸消毒した、じゃあ分からないか、う~んと、ぐらぐらと煮込んだ後に、濾過しているから大丈夫だよ」
「ふ~ん。そうなんだ」
ミリア姉ちゃん。聞いといて、そんな興味を失った顔は止めようよ。
「リウイ」
「なに?」
「その、りゅうかしきえんでん? と言うのは、何だ?」
「……簡単に言えば、塩を作る方法の一つだね」
「成程。そうか」
ヘル姉さんはそう言って、手を伸ばして、僕の頭を掴む。
「リウイは頭が良いな」
口を三日月の様にして、目を細める。
本人は笑顔を浮かべているつもりなのだろうけど。
「「…………」」
僕の連れて来た人達は顔を引きつらせていた。ヘル姉さんの顔を見慣れていないからしたら、まるで、無理矢理笑って、僕がした事を褒めている様に見えるんだろうな。
悪い人じゃあ、ないんだけどな~。
そうして話していると、フェル姉さんが僕達の所まで来た。
「相変わらず、仲が良いわね。貴方達は」
「フェル姉。此処って、強い魔獣とか居るの?」
「都市近郊は居ないけど、少し遠くの山とか行くとそれなりに居るわよ。後は『清海』から北部にある土地と『奥地』って言われている樹海に強い魔獣がゴロゴロしているわ」
「へえ‼ それは楽しみっ」
ミリア姉ちゃんの目が輝きだした。
頼むから、各部族に迷惑を掛けないで欲しいな。
そう思いつつ、僕達は進んでいき、そのまま都市に入っていく。
館に入ると、歓待の宴を開いた。
翌日。
朝目覚めて、私室で朝食を取ろうとしたら。
コンコンっと、ドアがノックされた。
「誰かな?」
『わたしよ。ウ~ちゃん』
この声とその呼び方、フェル姉さんか。
僕はどうぞと入室を許可したら、フェル姉さんはドアを開けて入って来た。
「朝早くから、何か用?」
「ええ、ヘルミーネを連れて、ちょっとこの都市の案内をしてあげようと思うのだけど、良いかしら?」
観光させるのか。まぁ、別に良いか。
「別に良いよ。じゃあ、部下の誰かを案内人に」
「ああ、要らないわ。わたしとヘルミーネだけでいいから」
「あれ? ヘル姉さんだけ。ミリア姉ちゃんは?」
「ミリアなら、麾下の『ベルゼルガ』を連れて、魔獣狩りに行ったわよ」
ああ、ミリア姉ちゃんらしいな。
「そう言うなら、任せるよ」
「ええ、任せなさい」
フェル姉さんはドンと任せろとばかりに、胸を叩いた。
そして、部屋を出て行った。
朝食を食べ終えた僕は、執務室に向かう。
執務室の机には、大量の書類があった。
今日は書類仕事に専念するか。
机の上に乗っている書類を一枚とり、内容を見ていると。
コン、コンコン。
「誰かな?」
『リッシュモンドです』
「どうぞ」
僕がそう言うと、リッシュモンドが部屋に入って来た。
手には書類の山を持って。
「本日はこちらにも目を通してください」
「…分かった」
今日は珍しく仕事が多いなと思いつつ、仕事をする。
そうして、書類を片付けて、そろそろ昼だなと思っていると。
ゴンゴン‼
随分、荒いノックだな。
『リウイ様。大変です! 入っても宜しいですかっ』
「ああ、良いよ」
僕がそう言うと、官僚の一人が部屋に入って来た。
「そんなに荒いノックをして、如何かしたのか?」
「はい。先程、北地区に衛兵から報告が来まして、その、なんと申しますか・・・」
官僚は流れる汗をハンカチで拭いている。
何だ? 魔獣の大群でも、この都市に迫ってきているのか?
「何があったんだ?」
「は、はっ。フェル王女様方が、暴走して重軽傷者を多数だしたと、先程と報告がきました!」
……はい?




