第46話 試合が終り 話し合いをします。
熱気と歓声に包まれた試合が終り、市が終った後で、僕達は試合会場に集まった。
あれだけ騒がしかった会場も、今は閑散としていた。
そんな試合会場に僕、ランシュエ、ロンチュン、リュウキ、後護衛として付いてきたルーティとアルトリアが居る。
「ぐ、ぐぐぐぐ……」
ぐうの音が出ない程に負けたので、ロンチュンは歯ぎしりしだす。
「大将。負けたんですから、認めてやったらどうですか?」
リュウキがそう言っても、ロンチュンは何も言わない。
「ロン兄さん。決闘に勝ったら、認めると言ったんですから認めて下さい。じゃないと」
「じゃないと?」
「もう、ロン兄さんとは口を利きませんよ」
ランシュエがそう言うと、ロンチュンはこの世の終わりが来たみたいな顔をした。
「……分かった。リウイがお前の『逆鱗』を捧げる事は認めてやる」
「『やる』ですか。そんなに嫌なら別にいいですよ。もう、兄さんとは話しませんから」
「すいません。もう、認めますから、それだけはご勘弁をっ‼」
ロンチュンは土下座しだした。
何か、あれは方便だったと言いずらいな。
「それと、兄さん」
「何だ?」
「どうして、兄さんが此処に居るのですか?」
「そ、それは……」
正座したまま、口籠るロンチュン。
その様子から僕は何となく理由が分かった。
言い淀んでいるロンチュンを見て、溜め息を吐いて、リュウキが前に出た。
「実は、大将が居ない時に、ランがリウイ様の所に行きましてね」
「リュウキっ、てめぇ!」
ロンチュンは立ち上がり、獣の様にリュウキに飛び掛かる。
襲い掛かるロンチュンを躱しながら、リュウキは話し続ける。
「それで、村に帰ったら、ランが居ないもんだから、族長を交えて一悶着を起こしましてね。それで、お袋さんがロンチュンをボコりまして『だったら、お前の目でランの様子を見て来い』って言って、叩きだしましてね」
自分の息子を叩きだすとは、凄いお母さんだ。
「で、この都市に来たのは良いのですけど、来るなり酒場で飲んでいたら『デッドリースネイク』のメンバーに絡まれましてね。で、そいつらをぶっ飛ばしたら、そのリーダーも絡んできましてね。そいつもついでとばかりにボコったら、何でか、大将が『デッドリースネイク』のリーダーになっちまったんですよ」
う~ん。まさか、チームを乗っ取るとは、意外にカリスマがあるのかな? 脳筋っぽいけど。
まぁ、それは置いといて。
「ところで『プゼルセイレーン』にスパイとか送り込んでいる?」
「いや、うちの奴らにそんな事をやらせていないぞ。リュウキは知っているか?」
「うちの奴らは、脳筋だから間者みたいな事は出来ませんぜ」
「じゃあ、どうして、この前『プゼルセイレーン』のたまり場に襲撃してきたんだ?」
「ああ、それはな。最近、同盟を結んだチームから『此処にプゼルセイレーンのメンバーとリーダーが居るぞ。襲撃するなら今だ』って言われてな。それでうちの奴らが先走りやがってな」
「同盟を結んだチーム?」
もしかして、そのチームがスパイを送り込んだのか?
「ところで、そのチームは何処かな?」
「ああ、『ブルーファルコン』だ」
「そこって、確か北区にあるチームだな」
「そうだ。中央区を取るまで間の限定の同盟だったがな。ところでよ」
「何か?」
「俺は、お前に負けたんだ。チームはどうすればいい?」
「どうって言われても。お好きに」
「じゃあ、仕方がねえ」
ロンチュンは頭を掻いた後、姿勢を正した。
「俺達『デッドリースネイク』は、あんたの指揮下に入ろう。今後はあんたの命令に従うぜ」
ロンチュンは片膝をついて、右手を包むようにした包拳礼をしだした。
それを見て、リュウキとランシュエは驚いた顔をした。
「に、兄さん。ほ、ほんきですか?」
「大将。負けた事で自棄になっていませんか?」
二人は失礼な事を言っているけど、ロンチュンは鼻で笑う。
「何だ。俺がこの礼をしたら、可笑しいか?」
「「い、いや、でも……」」
二人共、何とも言えない顔をしだした。
何だ? この礼は何かあるのか?
こういう時は、助けて~、リッシュえもん~~~‼
と、言っても何の反応は無い。
なので、僕はランシュエを見る。
「この礼は、我が一族では忠誠を捧げる時にする礼です。これに『逆鱗』を捧げたら、絶対忠誠を誓う儀式礼なのです」
へぇ、そうなんだ。
「ロンチュンさんの話しだと、チームごと僕の配下になると考えた方が良いのかな?」
「そう考えて良いと思います」
成程。それじゃあ、自棄になったて言われても可笑しくないな。
「良いのですか?」
最終確認のために訊ねる。
「ああ、負けた以上、従うのが道理だ」
真面目な顔で言うロンチュン。
僕はその目を見て、本気だと分かり、これ以上言うのは止めた。
「じゃあ、明日にでも、館に来てくれるかな。後の事は僕の部下と相談して決めるから」
「応ともよ」
ロンチュンは立ち上がった。
「じゃあ、明日な」
そう言って、ロンチュンはその場を後にした。リュウキも僕達に頭を下げ、その後に付いて行った。
ふぅ、これで西地区も安全になったな。
「帰りましょうか。リウイ様」
「そうだね」
僕達は、館に戻る事にした。




