第42話 細工は流流、仕上げを御覧じろってか
館を出た僕は、東地区のユエの店の所に向かう。
護衛はアルトリアだけにした。
「リウイ様を乗せるのも久しぶりな気がします」
「だね」
こうして、アルトリアの背に揺られるのも久しぶりだな。
アルトリアの背に揺られながら、東地区に入り、そのまま何処にも寄らずユエの店に向かう。
土産は用意しないのは、それに代わる話があるからだ。
ユエの店の前に来ると、僕はアルトリアの背から降りた。
「じゃあ、ちょっと待っていてくれ」
「はっ」
アルトリアにそう言って、僕は店の中に入った。
店内に入り中を見回したが、襲撃する前と変わらないくらいに修復されていた。
どんな方法を使ったのかは知らないが凄いな。
そう驚いていると、店員が駆け寄って来た。
「これはこれは、領主様。御機嫌麗しゅう」
そう言ってきた店員は前に、僕を案内した者だった。
「会長はまだこの店に居るのかな?」
「はい。お取次ぎいたしますね」
ふむ。僕が店に来た理由を察しているようだ。なかなか優秀だな。
「ああ、御願いする」
「はい。ただいま」
店員は一礼して、上の階へと上がっていった。
少しして、店員が戻って来た。
「会長がお会いになるそうです。ご案内しますね」
店員がそう言って、付いて来るように手で合図をしたので、僕はその後に付いて行った。
階段を上がり、そのまま店員の後に付いて行くと、ある部屋の前で止まり、その部屋のドアをノックした。
「会長。お連れしました」
『通せ』
ユエの声が聞こえたので、店員がドアを開けて、中に入った。
部屋の中に入ると、ユエは椅子に座りながら、茶を飲んでいた。
「これはこれは、領主様。御用がお有りでしたら、お呼びいただければ、こちらから参りましたもの」
「ちょっと秘密な話があってね」
「そうですか」
ユエは、椅子に座る様に促したので、僕はユエの対面の椅子に座る。
「茶は要らない。呼ぶまで業務をしていなさい」
「畏まりました」
店員が頭を下げ、部屋を出て行った。
足音がかなり離れるのを確認してから、ユエは僕を見る。
「それで、何の用だ? ノブ。わたしの業務している所でも見に来たのか?」
「はは、それを見るのも悪くないけど、今日は仕事の話があるんだ」
「仕事か。ふむ、市の話か?」
「そう、それにちょっと手を貸してほしい事があってね」
「手を貸して欲しいか。どんな話なのやら」
「実はね」
「待て。話の前に茶を淹れてやろう」
ユエは立ち上がり、茶器のセット持ってきた。
「久しぶりにユエの茶を飲むな」
家の花嫁修業とかで、ユエは茶を淹れる作法と料理を一通りできる様に教えられたそうだ。
「そうだな。わたしも久しぶりに人に茶を淹れるな」
ユエは嬉しそうに微笑みながら、茶の準備をした。
「それで、わたしにどんな話を持ってきたんだ?」
「その話をする前に、僕の話を聞いてくれるかな」
「良いぞ」
ユエは茶の準備をしながら、僕の話しを聞いた。
「くっくく、転生しても女難の相は変わらずか」
ユエは面白そうに笑い、茶碗に茶を淹れる。
「そんなに笑う事ないだろう」
「済まない。だが、転生してもノブはノブなのだなとつくづく思ってな」
ユエは茶碗を僕の前に置く。
「良い形をした茶碗だね。手にすっぽりと収まるし、それでいて何処か温かみがある」
「ふふふ、魔王の息子に生まれ変わった所為か、そんな事を言うようになったようだな」
「そうかもね」
僕は茶を喉に流し込む。
熱くなく、それでいて喉の渇きを潤せるぐらいの温さがあった。
「それでその話をしに来た訳ではなかろう」
「ああ、実はね。その決闘を市の見世物にしようと思うんだ」
「…詳しく話を聞こう」
ユエの目が商売人の目になった。
これで、リッシュモンドが言っていた件も片付く。
正に、一石二鳥だな。
僕は自分の考えをユエに話した。




