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第41話 これは予想外な展開

 翌日。


 僕は私室を出て、執務室に着くと既にリッシュモンドが待っていた。

「おはようございます」

 僕を見るなり、優雅に挨拶するが、その背には何か黒いオーラが見える。

 その内、死の瘴気とか出さないよなと思いつつ、僕は席に座る。

「おはよう。今日は何かあったのかな?」

 何があったのか分かっているけど、一応聞く僕。

「リウイ様の姉君が暴れた所為で『プゼルセイレーン』の者達が溜り場にしている店一帯が、災害でもあったのかと思われる被害が出ました」

 はい。分かっていたけど、やっぱりそうか。

「これが被害総額の概算です。大まかですので、まだ増える事を確認しておいてください」

 そう言われて、書類を渡された。

 僕はチラッと見るだけで、数字は見なかった。

 見れば、気絶する気がしたからだ。

 僕は書類を出来るだけ見ない様にしつつ、判子を押した。

 それが分かっているのか、リッシュモンドは話しかける。

「幸いと言えるのが、人的被害は酷くないですね」

「そちらの被害は?」

「重傷者が数十名。軽傷が数名と言った所です」

「そうか」

「怪我人は全て『プゼルセイレーン』のメンバー又は関係者、もしくは『デッドリースネイク』のメンバーでした」

「他には居ないのか?」

「おりません」

 そこだけが救いだな。

 僕が溜め息をついていると、ドアがノックされた。

「どうぞ」

『失礼します』

 部屋に入って来たのはソフィーだった。

「リウイ様。リウイ様に会いたいと言う者がおります」

「僕に会いたい人?」

 リッシュモンドを見るけど、首を横に振る。

 今日は面会予定の人など居ない筈だ。

「名前は?」

「それが自分は『デッドリースネイク』のメンバーとしか言わないのです。名前などは、リウイ様が来てから名乗ると言っています」

「何だ。それは?」

 リッシュモンドは鼻で笑う。

「兎も角、僕に会いに来たのか」

 会うかどうか少し考える。

「どうなさいますか?」

「……よし、会おう。ここまで連れて来てくれ」

「畏まりました」 

 ソフィーが一礼して部屋を出て行った。

「万が一に備えて、隣室に腕が立つ者を用意してくれ」

「承知しました」

 リッシュモンドも部屋を出て行った。

 さて、どんな人が来たのやら。


朝早くから、館に来た人をソフィーが連れてきてくれたのだけど。

 ソフィーが連れて来た人は顔を、何か覆面で隠しているのだけど、顔の形から蜥蜴っぽい形をしているので、恐らく、ランシュエの部族の人だと思う。

 仮にお兄さんがこの都市に来たのだとしても、お供は居る筈だ。その供かも知れない。

 そんな事よりも、問題は。

「…………」

 入って来て、一言も話さないだよな、この人。

 どうしたら良いだろう。

 僕よりも隣にいるリッシュモンドが焦れて来たんだよな。

 隣に居るせいか、何か黒い瘴気みたいなものが漏れ出ているし。 

 このままだと話をするだけで日が暮れそうだ。

「おほん。貴方が『デッドリースネイク』のメンバーで間違いないな」

「・・・・・・そうだ」

 何か裏声で話しているな。声を聞かれても、バレない様にする為か?

「それで、この館に来た理由を教えてもらいたい。これでも忙しい身分なので」

 今日は特に忙しい。

 姉さんが出した被害の後始末しないといけない。

 被害があった所を直すための資材の買い付け。資材の搬入。その資材を加工する人員の選び出し。壊れた物を直す人の賃金の捻出等々、色々とある。

 もっとも、僕がするのは、それらの書類に判子を押すだけだけどね。

 こう考えると、僕ってそんなに仕事をしないな。

 でも、リッシュモンドが『身分が上の者ほど、仕事はしないものです』と何か格言みたいな事を言っていたな。

 そう言えば、前世で読んだ本で、ワンマン社長の会社は潰れる時はあっさりと潰れて、社員が忙しく働いて社長があまり仕事をしない会社は生き残る確率が高いとか、何かの本で読んだけど、それと似たような事かな。

「・・・・・・こちらに来た要件は、わたし達のチームメンバーが不当に捕まったので、即時解放していただきたい」

「解放ね」

 正直、本気で言っているのかと思っている。

 器物破損した上に、王族に不敬を働いたんだぞ。

 どう減刑しても強制労働百年になったらいい方だぞ。

 器物破損だったら、当人同士の交渉で済ませるけど、王族に不敬を働いた時点で、もう無理だ。

 まぁ、ロゼ姉さんなら『こんな些末な事などで、いちいち処罰するのも面倒じゃろう』とか言い出しそうだけど。

 しかし、ケジメはつけてもらわないと、こちらにしても割り合わない。

「不当に捕まったというけど、王族に不敬を働いた時点で、不当に捕まった事にならないと思うが?」

「そこの所、何とかしてもらいたい。もし、解放してくれるなら、こちらもそれ相応のお詫びの品を献上する」

「献上ね。それはそちらのチームの総意と取って良いのかな?」

「そうだ。おれじゃなかった。リーダーもそう言っていた」

 ふむ。だとしたら、こちらも譲歩するのも手か。

 ロゼ姉さんなら、僕が頭を下げて頼んだら不問にしてくれるだろう。

 そのお詫びの品というもので、壊れた一帯の修理費用に充てるのも良いだろう。

 足りなかったら『デッドリースネイク』のメンバー達に肉体労働で返してくれればいいだろう。

 この話しを受けようと思い、口を開こうとしたら。


 コン、コンコン。


 ドアがノックされた。

「誰だ?」

『リウイ様。ランシュエです。お話ししたい事がありますので、中に入っても宜しいですか?』

「今かい? 今は話し合いの最中なんだが」

『そこに『デッドリースネイク』の者が居るのですよね。でしたら、丁度いいです』

「丁度いい? まぁいいや。どうぞ」

 僕が入るのを許可すると、ランシュエが入って来た。

 一瞬だけ『デッドリースネイク』の者を見た後、僕に顔を向ける。

「リウイ様」

「何だい?」

「……愚兄が迷惑を掛けて申し訳ありませんっ」

 大きな声をあげて、頭を下げるランシュエ。

「っ⁉」

「いきなり、どうしたんだい?」

「愚兄がこの都市に入って、ゴロツキ達と一緒になって、都市で迷惑を掛けていると聞きました」

 はて? その話はランシュエにはしていないのだけど。

「・・・その話は誰から聞いたんだい?」

「ボノビビさんから聞きました」

 あ~、そう言えば、西地区に酒場に行っているとか言っていたな。

 その時に、ロンチェン? だったかな。その人を見かけたんだろう。

 で、ランシュエに話したと。

「別に気にする事ではないよ。何のために、この都市に来たのか知りたいだけだから」

「ですが。リウイ様のご迷惑になっている事には変わりありません」

 まぁ、少しかな。

「かくなる上は、愚兄に一言言わねばならないと思います」

「何を、言うのかな?」

「それは、ですね」

 何か、ランシュエが顔を赤らめだしたぞ。

「『鱗奉(りんぼう)の儀』をリウイ様としたと言います」

 うん? なに、それ? 初めて聞いたぞ。

 前世でもそんな儀式は聞いた事がないな。

「っっっっ⁉‼」

 あっ、何か『デッドリースネイク』の人が凄く驚いている。

「リッシュモンド。そのりんぼう? のぎってなに?」

 隣にいるリッシュモンドに訊ねる僕。

 リッシュモンドは僕の耳元に顔を近づける。

「簡単に言えば、竜人族の婚約の儀式とおもってください」

「こんやくね。・・・・・・婚約⁉」

 どういう事?

「鱗奉つまりは、竜に属する者達には『逆鱗』がある事は知っておりますか?」

「ああ、それは知っている」

 確か、身体の何処かの鱗が一つだけ逆さになっているとかだったよな。

「逆鱗というのは、言うなれば竜人族の弱点です。それを奉げるという事は、男性ならば忠誠を、女性ならば婚約の儀式になるのです」

 弱点を奉げる事で、貴方の言う事を聞きますみたいなものか。

「流石にそれは」

 やりすぎではと言うおうとしたら、ランシュエが顔を近づけて、小声で話し出す。

「勿論、嘘です。ですが、兄は本当に奉げた事は知りません」

「ああ、成程ね。デマカセを言って、お兄さんを大人しくさせるつもりか」

「そうです。……リウイ様が、お望みなら奉げますが?」

「いや、結構です」

 そんなの奉げられたら、後々面倒な事しか起こらないぞ。

「……そうですか」

 そんな残念そうな顔しないでくれよ。何か罪悪感を感じるのだけど。

 ランシュエが顔を離した。

「じゃあ、ランシュエ、後は任せるよ」

「お任せを」

 これで少しは大人しくなるからな。

「……さんぞ」

「はい?」

 この人、今なんて言ったんだ?

「ぜっっったいに、ゆるさんんんんぞっ‼」

 何か『デッドリースネイク』の人がそう叫ぶと同時に、覆面を無理矢理に剥いだ。

 そうしたら、顔を露出させた。

「って、ロン兄さん!」

「にいさん? って、ことは」

 この人が『デッドリースネイク』のリーダーか。

「ぜっったいに、許さんぞっ⁉ 俺の目が黒い内は、そんな事はさせんぞ。するにしても、俺よりも強い奴だけだ!」

 これは、もしかしてまずいのでは。

「決闘だっ。お前が妹にふさわしいか、俺が確かめてやる!」

 う~ん。このシスコンっぷり、聞きしに勝る気がする。


「まぁまぁ、ランシュエのお兄さん。落ち着いて」

「誰が義兄さんだ! 俺は認めてないぞっ」

 駄目だ。こりゃ。何を言っても、聞いてもらえる気がしない。

「ロン兄さん。落ち着いて」

「これが、落ち着いていられるか、ラン。お前の、お前の大事な『逆鱗』を捧げるんだぞ。これが落ち着いていられるわけないじゃろうがっ」

 興奮しているのか、顔を真っ赤にして叫んでいる。

 困ったな。これじゃあ話も聞いてもらえないな。

「おい、そこのお前っ」

「は、はい」

 何か、指差されたぞ。

「お前が、ランの『逆鱗』を捧げるのに相応しい男か、俺が見定めてやる」

「ちょっと、落ち着いて。別にその話しは例えで話したのであって、別に捧げるという話にはなってない」

「問答無用っ。おって決闘の場所を通達する。首を洗って待っていろ‼」

 そう言って、ドアを壊れそうな位に力強く閉めて出て行った。

「……はぁ、これは、また面倒そうだ」

「兄がたびたび面倒を掛けて申し訳ありません」

 ランシュエは頭を下げた。

「まぁ、身内に面倒な人が居るのは仕方がないよ」

 僕の身内にも居るからね。

 主にイザドラ姉さんとかイザドラ姉さんとかイザドラ姉さんとか。

「しかし、決闘ですか。困りましたな」

「ああ、そうだね」

 正直に言って、そんなに個人的武勇はそんなに強い方ではないと思うんだよね。僕。

「ちなみ、ランシュエ。兄さんの実力は?」

「部族でも上位に位置する実力者です。特に肉弾戦では、ロン兄さんより強い人は知りません」

 肉弾戦。ようは拳法か。

 う~ん。あれかな、世紀末に出てきて、胸に七つの傷を持つ男みたいにツボを突いて『お前はもう死んでいる』みたいな事をするのかな。

 それとも『てめえらの血は何色だ!』と言って手刀による斬撃ができる人みたいな事をするのかな。

「ちなみに、拳打を主体にした拳法です」

「成程。拳打か」

 それを聞いて、僕は笑みを浮かべた。

「何か勝算がおありで?」

「多分、行けると思うよ」

「おおおっ、流石です」

「でも、問題が一つあるんだ」

「問題ですか? それは?」

「それはね」

 僕は二人に自分の考えを話した。

「成程、それはまた」

「リウイ様って、凄い事を考えますね」

 それって褒めてるのかな?

「ですが。それは良い手ですな」

「はい……」

 う~ん。流石にランシュエには無理かな。

「ランシュエ、頼めるかな?」

「……身内が起こした事ですので、わたしもお手伝いします」

「そうか。ありがとう」

 これで、策は整った。後は、ユエにこの話をして色々(・・)と用意してもらおう。



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