第38話 西地区に着いた
館を出た僕達は、一路西地区に向かう。
昼と同じく、中央区と西地区の境目に来た。
僕はロゼ姉さんを見ると、ちゃんと隣に居た。
「何じゃ?」
「いや、別に」
昼行けなかった理由は姉さんなので見たとは言えないな。
「じゃあ、行こうか。姉さん」
「うむ」
僕達は境目を越えて、西地区に入った。
西地区の中心部に向かう僕達。
商業地区にしたお蔭か、東地区と違って至る所に灯りが点いている。
もう、夜になろうという時間でも、まだ営業している店はあるようだ。
露店も店じまいしないで商売をしている。
「さあさあ、お客さん。これなんかどうだい?」
「うちの店の商品に偽物無しっ。どうぞ、見てってください」
熱心に呼び込んでいる。
「もう、夜になるというのに、活気があるのう」
「だね」
品ぞろえも悪くない。偽物か本物か、どうかは別として。
「で、リィン。この地区の中心部に来たが、これからどうするのじゃ?」
「そうだな。情報を手に入れたいな」
「情報?」
「この地区にある『デッドリースネイク』がこの地区ではどう思われているのか、どうかをね」
「では、何処で情報を手に入れる?」
「此処は定番の酒場に行くというのが定石だね」
「成程のう」
ロゼ姉さんは感心して頷く。
とりあえず、目の前にある酒場に入る事にしよう。
僕達はその酒場に入ろうとしたら。
ドンッ!
そんな音と共に酒場から何かが出て来た。
「何だ?」
僕はその出て来た物を見る。
それは人だった。
「このアマ。やりやがったなっ」
男は立ち上がり、殴られたと思われる所を触る。
そして、酒場を睨みつける。
正確に言えば、酒場に居る者を睨んでいるようだ。
「何を言っているんだか、あんたがあたしの尻を撫でようとしたからふっ飛ばしただけじゃない」
酒場から女性の声が聞こえて来た。その声、何処かで聞き覚えがあるな。
そう思いながら、酒場を見ていると、酒場の扉を開けて出て来た。
「って、ボノビビさん⁉」
「うん? あら、リウイじゃない。どうして、此処に?」
僕はボノビビさんの傍に行く。
「今日は一番上の姉さんを連れて西地区を視察に来たんだ」
「へぇ、お姉さんね」
ボノビビさんは顔をキョロキョロさせる。
「? 妹の間違いじゃなくて?」
ぶっ⁉ き、聞こえてないよな?
振り返って見ると。
「どうかしたのか。リィン?」
ほっ。聞こえていなかったようだ。
「何でもないよ。姉さん」
僕は笑顔でそう言って、ボノビビさんの方を顔を向ける。
「それで、どうしてボノビビさんが居るんですか?」
「あたし? バイアとシャリュと一緒に呑みに来たのよ。この酒場が西地区で有名な酒場って聞くから」
成程。って、シャリュも居るのか。
仲良いな。
「おい、お前。そのアマと知り合いか?」
「ええ、まぁ」
「そうかい。だったら、手前もギタギタにしてやるっ」
男が指を鳴らしてこっちに来る。
あれ? 何か巻き込まれた?
「はいはい。言ってなさい、よ」
ボノビビさんはその男性の腕を掴み地面に倒した。
そして、腕を捻る。
「いててててて⁉」
男はあっさりとやられた。
よわっと思うけど、ボノビビさんが強すぎるだけか。
可哀そうだから、そろそろ手を離してあげようと、口を開こうとしたら。
「いてて、は、放しやがれ。俺は『デッドリースネイク』のメンバーだぞ。早く手を離さないと、メンバーが黙ってねぇぞっ」
男性が痛みのあまりそう言いだした。
「へぇ、そうなんだ」
僕は笑いそうになった。
こうも簡単に情報が手に入るとは。
「ボノビビさん」
「なぁに? リウイ」
「その人を渡してくれませんか?」
「え~、でも」
ボノビビさんはまだ締めたりないのか、僕に渡すのを躊躇している。
僕は懐に手を入れて、財布を出した。
其処から金貨を十枚ほど出す。
「これで飲み直しが出来ますよ」
僕はボノビビさんの手を取り、金貨を握らせる。
「んっ。・・・・・じゃあ、これぐらいで良いわ」
ボノビビさんは男性から手を離した。
「じゃあ、後は任せるわ」
そう言って、ボノビビさんは酒場に戻って行った。
ボノビビさんを見送ると、僕はルーティを見る。
ルーティはそれで分かったのか、部下に指示を出して、その男性を捕まえる。
「とりあえず、近場の衛兵の詰め所に行って、其処を借りようか」
「はっ。承知しました」
僕達は男性を連れて、衛兵の詰め所に向かう。
ルーティ達に縛られて連れられて行く自称『デッドリースネイク』のメンバーと言っている人を近くの衛兵の詰め所に向かう僕達。
詰め所に来ると、詰め所に詰めている兵士達は、最初は不審そうに見ていた。
だが、僕を見るなり、兵士達は背筋を伸ばして敬礼した。
「牢屋みたいな所があるかな?」
「はっ。今でしたら、一時的に留置する牢が空いていますっ」
「じゃあ、そこに運んでくれ」
「畏まりました」
ルーティ達は牢に向かう。
衛兵達が言った場所に、その男性を入れる。
鉄格子を挟んで僕達はその男性を見る。
「さて、名前を聞かせてもらおうか?」
僕がそう問いかけると、男性は青い顔をして怯えている。
むっ。もしかして、怖がっているのか?
もしくは、実はデマカセを言っただけなのかな?
「あ、あああ、……」
「アアアア? それがお前の名前?」
「ち、ちち、違う。お、おおれは、こ、ここ、コウ・シュウンだ」
「コウ・シュウンね。で、本当に『デッドリースネイク』のメンバーなのか?」
僕がそう尋ねると、コウ・シュウンは頷いた。
「じゃあ、メンバーは何人いるかだけ教えてくれるかな?」
「な、何でそんな事を言わないといけないんだ?」
「言わないとどうなるかな~」
僕がそう言いながら、ルーティ達を見る。
ルーティ達はいつでも得物を抜けるように身構える。
「ひいいいいっ‼ わ、わかった。言う。メンバーは全員で四十人だよ」
「それは仮メンバーも含めて?」
「かり? 何だ。それは? そんな奴らはうちには居ないぜ」
ふむ。だとしたら、正メンバーだけでしかいないという事か。
それだけ分かったら、もう良いな。
「な、なぁ、もういいだろう。帰してくれよ。今日、あんた達に会った事は誰にも言わないから」
僕の経験上、そう言う奴は絶対に誰かに話すんだよな。
「どうしますか?」
「悪いけど、暫く此処じゃない牢で暫く居てもらうね。ああ、生活に関しては問題ないようにするから」
「な、なんだとっ⁉」
シュウンは鉄格子を掴みながら、僕達を見る。
「じゃあ、その内、出してあげるから」
僕達はその場を後にした。
「おい。待てっ。その内って、いったい何時だ‼」
僕達はその問いに答えず、部屋を出て行った。
部屋を出た僕は、直ぐに牢にいるシュウンを中央区の牢屋に移送する手配をした。
そして、僕達は西地区を後にした。
「のう、リィン」
「なに? ロゼ姉さん」
「あやつを牢に移送するのは何故じゃ?」
「今に分かるよ」
僕はそういうだけで、何も教えない。
さて、後は上手く行く事を祈るだけか。
上手くいく自信はある。だから、大丈夫だ。
西地区を後にした僕達は、そのまま館に戻ろうかと思ったけど。
姉さんが暴れた所が目に入った。
「そうだ。『プゼルセイレーン』の所に行ってどうなっているか確認しないと」
「ぷ、ぷぜ?」
「え、えっと、知り合いがやっている店です。これから、ちょっと顔を出しに行こうかと」
「ふむ。って、これからか?」
「はい。そうです」
「お主。まだ成人ではない事を分かっているのだろうな?」
ジト目で僕を見るロゼ姉さん。
この国では、男女ともに成人が十八なので、まだ成人していない。
僕はまだ夜遊びできる歳ではない。
「そ、そこはり、りょうしゅとして、このとしのうらのじじょうをしるために、じょうほうをてにいれるために、し、しかたがなくいっているだけだから」
少し慌てふためきながら答える。
「ふむ。そうか」
ロゼ姉さんが何か頷いている。
「姉さん?」
「妾も付いて行こう」
「ぶっ⁉」
それは、ちょっと。まずい。
「姉さん。それは、ちょっと」
「何じゃ? 何か問題でもあるのか?」
「それは」
だって、昼頃に『プゼルセイレーン』のメンバーと一悶着おこしたばかりでしょう。
流石にそんな中に行かせるのはな。
「何か問題あるのか。リィン?」
「あ、ああ、うん」
アルネブも流石に僕が『プゼルセイレーン』に仮メンバーになっている事を話してはいないようだ。
さて、どうしたものかな。
「ええい、何か問題でもあるのか?」
ありますと言えないんだよな。
どう言ったら、納得できるかな。
頭を悩ませていると。
「リウイ様~」
何処からか僕を呼んでいる声が聞こえて来た。
誰だと思い、周囲を見ると。
「リウイ様っ」
「シャリュ?」
何で、此処に?
そう言えば、ボノビビさんが。
『あたし? バイアとシャリュと一緒に呑みに来たのよ』
とか言っていたな。
「はぁ、はぁ、りういさま。どうして、こちらに?」
いつものメイド服ではなく、私服のシャリュは初めて見る。
ショートパンツに、黒のチューブトップという動きやすい恰好をしていた。
「やぁ、シャリュ」
「お疲れ様です。リウイ様」
「どうしたんだい? ボノビビさん達と飲んでいたんじゃないの?」
「ビビから、リウイ様が視察に来たようだと聞きましたので」
「別にこなくても」
と、そこまで言っておいて、思った。
そうだ。このまま姉さんには帰って貰おうと。
「シャリュ。悪いのだけど、姉さんと一緒に館に戻ってくれるかな」
「はっ。分かりました」
「こ、これ、妾をおいて話を進める出ないっ」
「はい。姉さん。シャリュと一緒に帰って下さいね~」
「お主、それが姉に対する態度かっ」
「まぁまぁ」
僕は後の事は、シャリュに任せて、その場を後にした。




