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第33話 おっと、忘れていた

「オホン。リウイ様、そろそろバシドの報告を聞きませんか?」

 リッシュモンドがそう言ったので、僕は仕事をする事にした。

「ああ、そうだね。という訳で、ロゼ姉さんは別室に」

「そうじゃな。では、リィン。後でな」

 ロゼ姉さんは部屋を出て行った。

 ふぅ、これで仕事ができるな。

 僕は自分の椅子に座り、報告を聞く体勢を取る。

「バシド。待たせたね。報告を」

「はっ。報告させていただきます」

 バシドはチラリとユエを見たけど、僕は構わないと意味で手を横に振る。

 それを見て、バシドはユエがここに居ても問題ないと判断して話し出した。

「調査の結果、西地区にいる『デッドリースネイク』のリーダーは十二氏族の一つ『タゼブル』族の者で名をロンチェンという者です」

「ふぅん。やっぱり、十二氏族の内の一つが関わっていたか」

 これは情報通りだな。

「それで、そのロンチェンってどんな奴なんだ?」

「調べた限りだと、どうやらランシュエのご家族の様です」

「なに?」

 ランシュエの家族?

 どういう事だ? ランシュエの家は『タゼブル』族の中でも名家だそうだ。

 その家の者がどうして、この都市に来てチームを率いているんだ?

「う~ん。どうして、そういう事をしているか分かる?」

「そこまでは」

 バシドは首を横に振る。

 まぁ、何かしらの情報を手に入れてくれるだけで十分だったので、特に問題はない。

「ご苦労様。ちょっと頼みたい事があるから、残ってくれ」

「はっ」

「リッシュモンド」

「はい」

「今の話を聞いて、何か言う事は?」

「特にありませんな」

「そうか。じゃあ、ユじゃなかったディアーネ」

「はい。リウイ様」

 うおっ。何か、凄い嬉しそうな顔をしながら返事して来た。

 よっぽど、ロゼ姉さんに許嫁候補に認められたのが嬉しいようだ。

「コホン。実は西地区に市を作りたいのだが、そこで、貴方の力をお借りしたい」

「なんなりと」

「では、その市の取り仕切ってもらえるだろうか」

「ほう。…いきなりの大抜擢ですな」

「まぁ、貴方ならそれぐらいはできると思いますので」

「お褒めに与り恐縮です」

 ユエは頭を下げる。

「貴方の商会は東地区にあるので、少し面倒かも知れませんが、頑張ってください」

「承知」

 ユエがそう言ったので、僕は傍にいるバシドを見る。

「バシド」

「はっ」

「ディアーネのサポートを頼む」

「わたしがですか?」

「ああ、お願いできるかな」

「リウイ様のご命令とあれば」

 バシドは受けてくれた。

「後の細かい調整はリッシュモンドに任せる。良いな?」

「はっ。お任せを」

 

「それと、ディアーネの下にいる『ビアンコ・ピピストレロ』の事だが」

 僕は直ぐに告げず、区切る。

「構成員の方は直ぐに釈放するが、支店長の方は」

「そちらはお好きに処分を」

 感情を込めず言うユエ。

 本当に良いのかな?

 そう思い、僕はユエの目を見る。

 ユエは僕の目を見て頷いた。

「では、現在開発中の鉱山で鉱夫として送る。無論、魔眼の能力を使えない様に魔法道具も着けて」

「はっ。寛大な処分に、あの者も喜ぶでしょう」

 工夫って結構きついと思うけどな。

「それと『プゼルセイレーン』との同盟の件だが、もう少し待って欲しい」

「と言うと?」

「まだ、チームの幹部達にこの件を話していない。だから、同盟を結ぶ時期については、こちらから指示する。それまでは、軽挙妄動は慎むように」

「分かりました」

「では、下がってくれ」

「はい」

 ユエは一礼して、部屋を出て行った。

「ふぅ。ようやく一息つける」

「ですな」

 僕は安堵の息を吐く。

「リウイ様」

「何だい。バシド」

「ご命令に逆らうつもりはありませんが、どうして、わたしがディアーネ会長の手伝いをするのでしょうか?」

「至極簡単な事だよ。西地区がどんな所か調べたバシドなら、ディアーネの役に立つだろう」

「確かにそうですが」

「それに、ディアーネの行動を監視する役にうってつけだからね」

 糸を使った諜報。見た目に反した俊敏性。

 それでいて、そこいらに居る者なら負けぬ戦闘力。

 監視役にはピッタリだ。

「ディアーネが何をするか監視して、逐次、僕かリッシュモンドに報告してくれ」

「畏まりました」

 バシドはそう言って、部屋から出て行った。

「…本当は監視役など要らないと思っているのでは?」

「分かる?」

「ええ、それぐらい信頼しているのは、話していれば分かります」

「はっはは。流石は前世の僕の腹心だ」

「お褒めに与り光栄です」

 リッシュモンドは頭を下げる。

「とは言え、貴方の股肱には成れない。半端者です」

「そうかな?」

「ええ、『踊る牙』に比べたら半端ですよ」

「・・・・・・あれは、あれで問題があったと思うな」

 前世の僕の配下十傑衆の『踊る牙』こと名をリリムという女性だった。

 十傑衆の中で唯一の女性で実力から言えば上位に入る。

 長身で、漆黒の長髪で前髪で左目を隠す髪型をしている女性だった。

 右翼を堕天使の様に黒い翼。左翼を蝙蝠の様な形をした翼。

 天人族と翼がある魔人族との間に出来た混血児で、それが理由で何処に行っても迫害されたそうだ。

 僕はそんな事を気にしないで雇用した所為か、僕に忠誠を誓ってくれた。

 各地を流浪していたからか豊富な知識と知恵を持っていたようで、内政、外交、軍事等々に全てに通じていた。

 ひとたび、戦闘になれば二本の刀と魔法を操りながら戦う。

 その二刀流で戦う姿を見ていると踊っているかの様に見える事と前世で読んだ漫画で、その顔立ちが殺人許可証を持った総理大臣の忍者の息子似ている事から『踊る牙』と名付けたんだよな。

 良く考えれば、十傑衆の二つ名って、皆、安直だったな。『剛剣』は身の丈以上の大剣を持っている事から、『双斧』は斧を二つ持っているからだし。『雷電』は雷を操る竜人族だったからな。

 そのリリムだけど、正直に言って困った部下だ。

 僕が領地を離れる事がある時に留守を任せる事ができる人材でもあり、秘書兼護衛として連れて行く事も出来る部下でもあり、意見を求めたら的確な意見をくれる優秀なブレーンでもある。

 正直に言って得難き部下だ。股肱と言っても良い。

 でも、同時にとんでもない問題を持った部下である。

 

 何せ、とんでもない位にヤバイ性格をしているのだ。


 呼ぼうとしたら何処からともなく現れて、僕が気晴らしに出掛けようとしたら、何時の間にか僕の後ろで控えている。

 僕の事で陰口を叩く者が居れば、その日の内に言っていた者は居なくなり、僕に言い寄る女がいれば、その女を親の仇を見るような目で睨みつける。

 僕が風呂に入れば、半裸になって「お背中御流しします」と言って入って来る。

 風呂から上がり、寝室に行くとベッドの中に潜り込んで「お布団を温めておきました」と言って、僕が寝付くまでその場に留まる。

 後、噂で、僕が使って捨てた物を集めているという噂もあったな。

 クールな見た目だったから、領地の私軍の兵士達にも人気がある人だったんだけどな。

 でも、よく考えれば、十傑衆の皆、一癖も二癖もある人ばっかりだったな。

 人間の十傑衆で『剛剣』と『双斧』と『烈戟』と『魔氷』と『破拳』はと言えば。

 『剛剣』と『破拳』と『双斧』と『烈戟』 の四人は好戦的な性格だったし。

 残りの『魔氷』はオネエだった。

 僕に一番忠実だったのが『踊る牙』と『死影』

 それ以外の『雷電』と『槍聖』と『爆炎』と『神弓』はというと。

 無口で滅多に言葉を発しない『雷電』。

 過激派である『槍聖』と『爆炎』。

 こうして考えると『神弓』だけが穏健派だったな。

 って、あれ?

 こうして、数えると十傑衆なのに一人多いぞ。

 『剛剣』『双斧』『烈戟』『魔氷』『破拳』『踊る牙』『死影』『雷電』『槍聖』『爆炎』『神弓』と指折りで数えると、やっぱり一人多い。

「……そう言えば、どうして十傑衆って、一人多いんだっけ?」

「確か、初めて我らを集めた時に十一人居たのですが、十一傑衆だと語呂が悪いとか言って、十傑衆にしたと思いましたが」

 あ、ああ、そうだ。そんな事を言った覚えがある。

 それにリッシュモンドに内政の仕事させていたから、十傑衆に入ってない気分だったんだよな。

 あの時は。なんだかんだ楽しかったな。

 面倒ごとも多かったけど。







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