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第29話 これにて一件落着と思いきや

 僕が指を鳴らし叫ぶと、何という事でしょう。『鳳凰商会』の建物の屋根をぶち抜いてやって来たのは、アイゼンブルート族のフリューゲルゼーリエのトゥープヨットエルフ率いる(ヴァイス)空中機動(ルフトヴァヘ)機甲(ゾル)兵団()だ。

 アイゼンブルート族が僕に従属するという事で、この都市に駐留部隊を置いてくれた。

 その一つがこの白の空中機動機甲兵団だ。

 僕の声紋が事前に登録されているので、僕がこうして呼び出せば半径百キロぐらいなら来るそうだ。

 ちなみに、大きな声をあげれば良いだけなので、指を鳴らす必要はないが格好いいのでしている。

 昔のアニメで、主人公が叫んで指を鳴らすの見ていた所為かな。

 面白かったな。あのぶっ飛んだ設定といい、主人公の師匠とか、波動拳みたいな技とか。

 そう思っている間に、ヴァンガド達が大勢を整えようとしていた。

「な、なんだ。こいつらは?」

「鉄の塊? いや、鎧なのか?」

「それにしては、随分と機敏に動くぞ」

 もしかして、ヨットエルフ達を始めて見るのかな? 偶に都市の外で公開演習したりしているのだけど。

 まぁ、良いや。とりあえず、今は。

「抵抗せずに捕まるというのであれば、寛大な処置を下される。大人しく縛につけっ」

 ふむ。こうして言うと、何か警察官になった気分だな。

 いや、時代劇の火付盗賊改の方か。どちらかと言えば。

「ええい、狼狽えるな。屋根から落ちて来たといっても、相手は生物な事に変わりない、全員叩き殺せっ」

 金属生命体って、生物の分類に入るのかなと思いつつ、僕はヨットエルフを見る。

「ドウナサイマスカ? マインヘル」

「仕方がない。全員、捕縛しろっ」

「ヤヴォール。マインヘル」

 あっ、懲らしめてあげなさいでも良かったかな。

 と思っている間にも、ヨットエルフ達はヴァンガド達に攻撃を仕掛けいく。

「はああああっ、せい、あたたっ」

 カンフー映画みたいな奇声をあげる『ビアンコ・ピピストレロ』の構成員。

 しかし、その攻撃はフリューゲルゼーリエ達の身体には全く聞いていない。

 多分だけど、凹んでもいないだろうな。

「何だ、こいつらの鎧の硬さは⁈」

「まったく傷が付かないぞっ」

「関節部分にも攻撃しているのに、まったく効いている様子もないぞっ」

 流石に自分達の攻撃が通じていない事に気付きだしたか。

 そうこうしている間にも。

 屋根からまた新しいアイゼンブルート族が、って、あれ?

「マインヘルノ命令ニヨリ、白の空中機動機甲兵団。参上」

 あっ、そうだ。

 僕は『白の空中機動機甲兵団』って呼んだから、この都市に駐留している全ての白の空中機動機甲兵団が此処に来るんだった。

 忘れてた。一部隊だけ呼びたい場合は部隊名を呼ぶんだっけ。

 まぁ、過剰戦力かもしれないけど、いっか。

 ドゴンッ‼

 おっ? 今度は扉が豪快に吹っ飛んだぞ。

「合図って言っていたから、何か閃光でもあるのかと思ったけど、こういう意味だったのね」

 ボノビビさんが扉を蹴破って建物の中に入る。

「リウイ。大丈夫?」

「怪我はありませんか? リウイ様」

 ティナとアルネブが風の様に僕の傍に来て、ペタペタと触りだす。

「大丈夫、大丈夫だから」

「そう良かった」

 ティナが安堵の息を吐いた。

「それにしても、アイゼンブルート族どうして此処に沢山来ているの?」

「僕が呼んだからかな?」

「はぁ?」

 意味が分からないという顔をするティナ。

 正確に言えば、僕の声紋を登録しているから、その声によりこうして呼び出す事が出来たなのだが。

 う~ん。ティナに分かる様に言うのは難しいな。

 すぐ近くでは、大捕り物をしている中で、僕は幼馴染にどう説明したら良いのか頭を悩ませた。


 数十分後。

 

 ヴァンガド達が全員、捕縛された。

 縄を解いて抜け出さない様に、白の空中機動機甲兵団が周りを囲む。

 捕縛された人たちの中には『ブラック・タイガー』の元リーダーさんも居た。

「な、なぁ、リウイさんよ」

「何ですか。えっと」

 リーダーさんとか言っていたけど、この人の名前も知らないんだよな。

「俺はベンガだ」

「ベンガさん。何か?」

「あそこには俺達のリーダーも居るんだ。悪いが助けてくれないか。リーダーは娘さん達を人質に取られて仕方がなく、あいつらに手を貸しているだけなんだからよ」

 ふむ。そういう事なら。

「じゃあ、その人だけ縄を解いて」

「ハッ」

 僕の命令に答え、フリューゲルゼーリエの一機がそのリーダーさんの縄を解く。

「おやおや、我々に手を貸した者まで助けるとは、随分と酔狂な事で」

 ヴァンガドが何か僕に話しかけて来たぞ。

 何か目的があるのか?

「無理矢理手伝わされた者ぐらいは助けないと、後味が悪いからね」

「であれば、こちらの縄も解いて欲しい」

「何故?」

「こちらも商売の邪魔をされると思って、貴方を調べようとしただけだ。それなのに、どうして捕まるのか不思議で仕方がない」

 この反応を見るに、まだ、僕が領主だと気づいていないようだな。

「でも、僕の口を割ろうと暴力を働こうとしなかった?」

「あれは脅しただけだ。そちらはただ、交渉したいだけで、我々に接触したのだろう。であれば、お仲間に頼んで、我々を解放した方が今後の為に良いと思うが?」

「今後の為?」

「そうだ。君もこの都市に居る何処かのチームに所属している者だろう? だったら、我々と手を組んだ方が良い。君たちの武力と我々の資金力でこの都市を裏で支配しようじゃないか」

 要するに、同盟を組むから助けてくれか。

 さて、どうしたら良いかな。

「その方が、お互い(・・・)の為だ」

 あっ、またヴァンガドの目が光った。

 魔眼を発動しているようだけど、何故か全然効果がないんだよな。

 何でだろう?

 どうして効かないのか、分らず頬を掻いていると。

「リウイ。どうかしたの?」

「いや、何かあのヴァンガドっていう人が、僕に魔眼?みたいなものを使っているようなんだけど、全然効いてないから、どうしてかなぁと思って」

「何だ。そんな事」

 ティナは肩を竦める。

「な、何故だ。先程から、お前達にもわたしの『魅了の魔眼』を使っているというのに、何故皆効かないのだ?」

 ヴァンガドは驚愕している。

「それはね。これよ」

 ティナは懐から何かを出した。

 それは何かの鉱物をつけたペンダントのようだ。

「なに、それ?」

「これはね。母さんがあたしに持たせた『魔封石のペンダント』よ。これを持っていたら、相手のどんな魔法をも無効にできるのよ。勿論、これを持っている人の周囲の人達も同じよ」

「へぇ、そうなんだ」

 僕が感心していると、ティナは呆れた顔をする。

「何を言っているのよ。あんたの服にも『魔封石』が付いているでしょう」

「えっ? 何処に?」

「胸の装飾でついている宝石っ。それ全部『魔封石』よっ」

「マジで?」

 僕がそう言うと、ティナが頷いた。

 ……知らなかった。自分の服にそんな効果がある物が付いているとは。

「母さんが言っていなかったの?」

 僕は肯定を示すために頷く。

 それを見て、ティナは何処か遠くを見る。

「……母さん。ときどき、抜けた所があるからな~」

 ああ、あるな。

 変な所でドジなんだよな。ソフィーって。

「って、今はそんな事よりも、こいつの方が大事じゃない」

「おっと、そうだった」

 僕はヴァンガドを見る。

「という訳で、貴方の魔眼は僕達には効きませんよ」

「くっ。お前達、何処のチームの者だ?」

 何処のチームか。別に隠す事ではないから、正体を明かすか。

「ふっ。何処の者だど問われたら、答えてやるのが、世の情け」

 僕はポーズを取りながら言う。

 流石に薔薇は無いが、まぁ無くてもいけるだろう。

「はぁ。まぁた、いつもの病気」

「? どういう事?」

「リウイはね。時々、あんな風に変に格好つけて、話し出す癖というか、あれはもう病気みたいなものね。それをしだすのよ」

「はぁ」

「もう、いい加減、変だって気付いても良いと思うのだけどね」

 何か、ティナとデネボラが僕に対して、何か話しているが無視だ無視。

「世界の」

「何の騒ぎだ。これは?」

 っち、僕の台詞に被せる様に、女性の声が聞こえてきた。

 そして、思った。

 この声、何処かで聞き覚えがあると。

 誰だと思い、振り返る。

 そして、僕は目を見開き驚き、何度も目をこすった。

 幻でも見間違いでもなんでもない。あれ(・・)は。

 そんな、有り得ない。どうして、此処に。


「・・・・・・ユエ・・・・・・」


 其処には千年前に死に別れた幼馴染が居た。


其処に居たのは、前世の幼馴染のユエそっくりの女性だった。

 しかも、大人になって。

 胸は相変わらずボンっとスイカの様に突き出て、くびれた腰。そして、胸と同じ位ボンっと突き出た尻という身体に腰骨が見えそうな所までスリットが入っている上に胸元を大きく開いた赤いチャイナドレスを着て、上着に白いコートを羽織っている。

「か、かいちょう、どうしてここに?」

 会長? という事は、この人が『鳳凰商会』の会長という事か。

 何か、見た感じ何処かのアニメに出て来そうな悪の女幹部の方がしっくりくるのだけど。

「抜き打ちで視察に来たのだ。それで、ヴァンガド。これはどういう事だ?」

「こ、これは、その。他の地区にいるチームとの抗争で」

「それで襲撃を受けたと?」

「え、ええ、……そうとも言えますし、そうとも言えないと申しますか」

 ヴァンガドは滝の様に汗を流しながら、要領の得ない説明をする。

 その説明を聞いても分からないと思ったようで、その女性は傍にいる『ビアンコ・ピピストレロ』の構成員に目を向ける。

「どういう事か説明しろ」

「はっ。その、このリウイという少年の背後関係を洗おうとしましたら、この我らを取り囲んでいる者達により拘束された次第です」

「成程」

 会長と呼ばれた女性はヨットエルフ達を見る。

「ロボット? いや、全身駆動の鎧か? 大陸でも見た事が無いな」

 今、ロボットって言ったよな。

 この世界で、その言葉を知っている人はまずいない。

 まさか、労働者とか言うのはないだろうし。

「まぁ良い」

 ヨットエルフ達を一頻り見た会長は、次に僕を見る。

「リウイと言ったか。……まだ、幼いようだが?」

「は、はい。そうです」

 今世では十五になったばかりだからな。精神年齢なら、三十半ばだけどね。

「では、改めて自己紹介しよう。わたしは『鳳凰商会』会長ディアーネ・T・ザクセンと言う者だ。よろしくお願いね。リウイ君」

 あれ? 何か言い方が子供に言い聞かせているみたいな気がする。

 今も僕と目線を合わせながら言っているし。

「無礼者。コノ方ヲドナタト心得ルッ」

「恐レ多クモ、コノ『オウエ』ヲ治メル領主ニシテ魔王ノ御子息デアラレルリウイ様デアラレルゾッ」

 ヨットエルフ達が僕の身分を言い出す。

 何か、印籠が欲しいな。

「一同。御領主様ノ御前デアル。ヒカエ、ヒカエッ」

 ヨットエルフがそう言うと、僕達以外、ディアーネを含めた皆は跪いた。

 ここは流れに乗るか。

「『鳳凰商会』魔国支店支店長ヴァンガド」

「は、ははっ」

「その方、正体が分からないという理由で、わたしを捕まえ、あろう事か暴力を振るうとは言語道断とは、まさにこの事。領主の権限により、財産を没収の上に『鳳凰商会』はこの土地から追放を命じるっ」

「ひぃ。り、領主様。どうか、それだけは、それだけはご容赦を!」

「ならん。皆の者、その者達を牢に移送せよっ」

「ハハッ」

 ヨットエルフ達がヴァンガド達を無理矢理立たせて連れて行こうとしたら。

「お待ちください。領主様」

 ディアーネが口を挟んだ。

 口を出すという事は、何か考えがあるようだな。

「何か、ディアーネ会長」

「此度の事は我々『鳳凰商会』は全く関与していません。ですので、お裁きを受けるは、其処にいるヴァンガドだけにして頂きたい」

 成程。一を殺して十を救うか。

 経営者としては正しいな。この人と取引した方が良いかも。

「いや、駄目だ。その者は支店長という立場だったのだから、そちらの監督不行き届きである。そのような商会にこの都市に居るのは、今後の都市発展に問題が生じるかもしれない」

「そこまでは流石に言い過ぎかと、確かにこちらの監督不行き届きなのは認めますが。しかし、一人の支店長の愚考で、我が商会全てがそうだと判断するのは些か早急過ぎると思われますが?」

「ふむ。成程。そう言われたらそうか」

 僕がそう言うと、ディアーネは何処からか羽根扇子を出して煽ぎだす。

 ……似ているな。

 ユエもこうして扇子で煽ぎながら、余裕そうに見せるのが好きだったな。

 顔立ちも似ている所為か、僕はジッと見てしまう。

「「ふん‼」」

「あいてっ」

 ディアーネを見ていると、何故か両足を踏まれた。

「……な、なぜ?」

 痛みで声を裏返らせながら、僕は足を踏んだティナとアルネブに訊ねる。

「知らないっ」

「もう、気が多すぎますっ」

 二人は何故か怒っている。ただ、見ていただけなのに。

「クスクス。失礼。此処で話すのは何なので、上で少し話しをしませんか? 領主様」

「……そうだな。よし、ヨットエルフ」

「ハッ」

「僕はディアーネ会長と会談をする。話しが終わるまでにこの者達を牢に移送、それが終り次第、この場所を警備せよ」

「ヤヴォール。マインヘル」

 敬礼するヨットエルフ。

 次は皆だな。

「皆は、とりあえず、館に戻って、この事をリッシュモンドに報告して欲しい」

「あの死人に?」

「お願いできるかな」

「良いけど、リウイは一人で大丈夫?」

「そうだな。アルネブとティナを護衛として残ってくれ」

 僕がそう言うと、二人は目を輝かせる。

「ふっふ~ん。まっかせて」

「お任せください」

 二人が居れば、緊急時でも対処できるだろう。

「では、上に参りましょうか」

「ええ」

 僕達は上の階に上がって行く。






















 





リウイ達がディアーネと出会った頃。

 その時の青組はというと。

 リウイに言われた所で、情報集していた。

 リウイが居ないという事で、普通に情報収集に加わるアマルティア。

 そんな時。

「「……はっ! ……」」

 カーミラとアマルティアは何か感じ取った。

「御二人共、どうかしたのか?」

 アルトリアは二人の様子が変に思い訊ねた。

「今、何かライバルが増えたきがしたの」

「ワタクシもそう感じたわ。しかも、不倶戴天の敵といえる存在ね」

「は、はぁ?」

 二人の言っている意味が分からず、生返事するアルトリアであった。

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