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第27話 揺さぶりをかけるか

 翌日。


 館に戻ったのだけど、何かティナ達の様子が変なんだよな。

 ティナは僕に会うたびに、足を思いっきり踏んでいく。

 何でと聞くと『自分の胸に訊いてみたら?』と言って理由を説明してくれない。

 アルネブの方は何か用も無いのに、僕の部屋に来るようになった。

 何故、来るのかなと訊ねると、微笑えむだけで何も言わない。

 一番、問題なのはアマルティアの方だ。

 何か、気が付くと僕の後ろで監視するようになっていた。

 鏡とかで間接的に見ると居るのだが、直接見ようとしたら居ない。だが、何故か気配だけ感じる。

 まるで、生霊に憑かれたような気分だ。

 しまいには風呂に入っている時も「お背中御流しします」と言って入って来るわ。寝ようとしたら、ベッドに潜り込んでいるという事をしてくるのだ。

 お蔭で寝不足になったよ。

 リッシュモンドは僕の顔を見るなり「お疲れですね」と笑いながら言うのだ。

 正直、イラっときた。

 その感情を抑えつつ、僕は昨日の事を話した。

「そうですか。でしたら、これから向かいますか?」

「ああ、それで誰を連れて行くべきだと思う?」

「不機嫌な者達を連れて行けばいいと思いますが」

「あの三人か」

 何か、あの三人を連れて行ったら、喧嘩になって話どころではなくなりそうなんだよな。

 かといって、一人だけ連れて行ったらそれはそれで問題が起こりそうなんだよな。

 という訳で、誰か別の人を連れて行くべきだけど。

「でしたら、丁度良く手が空いている者がいますよ」

「それは誰かな?」

 リッシュモンドは窓の下に行き、指差した。

「あの者です」

 

「まぁ、確かにこの人(・・・)だったら、特に問題ないな」

 僕は独り言をこぼした。

「何かおっしゃいましたか? 主君」

 僕を自分の背に乗せ、僕の呟きを聞いて振り返るアルトリア。

 護衛としてはピッタリだし、他の人達と違って一緒に行動する事が多いので、特に文句は出ないだろう。多分。

 アルトリアの背に乗って、僕達は東地区にある『鳳凰商会』へと向かう。

 で、その建物の前に着くと、アルトリアが膝を曲げて、僕を降りやすいようにしてくれる。

 僕が降りると、アルトリアは立ち上がる。

「では、わたしはここで待たせて頂きます」

「いや、付いて来てくれるかな」

「良いのですか?」

「ああ、この前来た時、アルトリアが入るのに問題ないくらいに広いってわかったから」

「承知しました」

 僕が先に入り、アルトリアはその後に続いた。

 建物の中に入ると、直ぐに店員が僕の所まで来た。

「リウイ様。お越しくださいリありがとうございます」

「うん。で、支店長は?」

「はい。二階の応接間でお待ちしております。ご案内致します」

 店員がそう言うので、僕達は店員の後に続いた。

 アルトリアが上がっても、何の音も立てない階段とは結構、頑丈のようだな。

 そう思いながら、僕は店員の後を付いて行く。

 そして、ある部屋の前で止まる。

「支店長。お客様をお連れしました」

『通しなさい』

 店員がドアを開けて、中に通してくれた。

 部屋の中には、美男子が居た。

 僕達を見ると、その美男子は椅子から立ち上がる。

「ようこそ。おいで下さいました。私は『鳳凰商会』魔国第一支店の支店長をしております。ヴァンガドと申します」

「初めまして、僕はリウイと申します」

 向こうも一礼してきたので、僕も返礼する。

「ささ、立ち話も何ですのでお座りください」

 ヴァンガドが座る様に促したので、僕は座る。

 アルトリアは僕の後ろに着いた。

 ヴァンガドは僕の対面の所に座る。

 僕達が座ると、ドアがノックされた。

 ヴァンガドは誰か聞かずに「入れ」と言う。

 部屋に入って来たのは、メイド服を来た女性だった。

 頭に虎耳があるので獣人族のようだ。

 その女性がカートを押して部屋に入る。

「どうぞ」

 女性が僕の前にティーカップを置く。

 僕は頭を下げながら、女性を見る。

 何か、目に光が無いなと思いつつ見ていると、女性は一礼して部屋から出て行った。

「昨日は申し訳ありませんでした。所用で出ておりまして」

「いえいえ、こちらも前もって連絡も入れないで来たのですから、失礼したと思っていました」

 まずは、世間話というジャブを撃ち合う。

 ここから如何、踏む込んでいくかは向こうの言葉一つで来まる。

「私どももそれなりに手広く商売をしておりますので、人に会わないといけませんので」

「そうですか。手広くですか。それはまた色々と大変ですね」

「ええ、まぁ。それなりに」

「はは、謙遜ですか?」

 こういう腹の探り合いは久しぶりだな。

「それで、今日はどのような件で来たのですかな?」

 おや、この人。こういう腹の探り合いが苦手のようだ。

 こういうのは先に要件を言った方が負けなのに。

「実はですね。僕は貴族に食料品などを下ろしている商家の者なのですが。こうして来たのは、そちらの商会が向こうの大陸から来たと聞きましたので、向こうの大陸の商品をどれくらい扱えるのですか?」

「そうですな。まぁ、物によりますね」

「成程。では、もう一つ聞いても良いですか?」

「なんなりと」

「この商会は来て、日が浅いと聞いていますけど、どうしてこの地区で一番大きな商会になったのですか?」

「ははは、それは。我が商会が持つ資本力ですよ」

「そうなのですか。でも、この国だと、貴方達はアウェーなのにここまで大きな商会に出来るのは流石に資本力だけでは無理があるような」

 僕がそう言うと、今まで笑顔を浮かべていたヴァンガドが眉を動かす。

「何を、おっしゃりたいのですか?」

「いえ、てっきり、資本力だけでは出来ない事でもしているのではと思いまして」

「……」

 ヴァンガドは何も言わなくなった。

 ここで無言だと肯定しているのと同じだよ。

「失礼。ここは聞くべき事ではないですね」

「はっはは、いえいえ」

「では、今度、正式に取引をしたい物のリストを持ってきますね。それを見ながら話し合いをしましょうか」

「はい。そうしましょう」

「では、僕達はこれで」

 僕は椅子から立ち上がり、一礼して部屋を出て行った。


 そして、建物を出てアルトリアに乗り少し歩くと。

「尾行は?」

「特にないようです」

「そうか」

「主君。お聞きしてもよろしいですか?」

「何だい?」

「あれでよかったのですか? もっと直接的に言った方が良いと思いましたが」

「あれでいいんだよ。何かあると匂わせておけば、向こうも何かしら動くかもしれないし」

「成程」

「今夜、また東地区を歩くけど、何人かに声を掛けておいてくれる」

「承知しました」

 僕達は館に戻った。


その夜。


 前と同じくエントランスホールで集まる僕達。

 メンバーも昨日と同じの筈、……おや?

「ねぇ、何でティナとアルネブとアマルティアが居ないの?」

「は、はぁ、三人共、今日は行く気がしないとかで」

 なんじゃそりゃ。

 まぁ、今日は人数はそれほど多くなくてもいいから、別に良いけど。

「三人減ったから、今日は二組で調査しよう」

「賛成~」

 ボノビビさんが元気よく手を振る。

 じゃあ、くじを引いてもらうか。

 今回は赤組と青組に分ける。

 で、結果。


 赤組。僕、ボノビビ、デネボラ、ハタ、ランシュエ。

 青組 カーミラ、アルトリア、バイア、サンゴ。


 まぁ、九人だからこんな感じか。

「また、貴方とですか」

 デネボラはあまり嬉しくない顔をする。

「細かい事は気にしないの。別に問題はないでしょう」

「それはそうですけど」

「じゃあ、しゅっぱつぅ」

「ちょ、手を離してくださいっ」

 ボノビビさんの勢いに押されて、デネボラは館を出て行ってしまった。

「……僕達も行こうか」

「そうね」

 僕達も館を出た。


 館を出て少し歩き、東地区と中央区の境目に来た。

「じゃあ、此処から別行動で」

「分かったわ」

「今日は、東地区の中心を調べよう」

「東地区の中心って広いの?」

「結構広いようだよ」

「分かったわ」

 そう決めると、僕達は東地区に入る。

 中心とは言っても広いので二つに分けて調査する事にした。

 僕達は中央の下の地域を、カーミラさん達は中央から上の地域を。

 カーミラさん達と別れた僕達は、直ぐに近くにある店に入り、情報収集する。

 特に『鳳凰商会』について聞いたのだが、芳しくない。

 まぁ、情報自体欲しい訳じゃあないんだよな。

 僕達は幾つかの店を回って、聞きまわっていると。

「ふん、ふんふん~」

 ボノビビさんが機嫌よさそうに鼻歌を歌いだす。

「機嫌が良いですね」

「まぁね。美味しいお酒もたらふく飲んで、気分悪くなる人なんか見た事ないわ~」

「はっはは、それは良かった」

 僕達は苦笑した。

「それに酔いを覚める運動も出来そうだしね~」

「? どういう意味なの?」

「直ぐに分かるわよ」

 笑顔を浮かべるボノビビさんを見て、首を傾げるデネボラ。

 流石はボノビビさん。勘が良いようで。

 三軒目からかな。

 物陰に隠れながら、僕達の後を追いかける人達が居るんだよな。

 恐らく、『鳳凰商会』の手の者だろう。

 意外に動きが速いな。

 あの手のタイプは上に報告してから動くタイプだと思っていたけど。

「そろそろ、何処かで仕掛けない?」

「そうだね。この先が袋小路だから、そこで追い詰めよう」

「了解~。ふっふふ、今宵も爪が血に飢えているわ」

 ボノビビさんが言うと、その通りだなと思う。


僕達は歩きながら後ろに居る人達を袋小路に誘導する。

「ねぇ、リウイ。その袋小路は何処にあるの?」

「このまま真っ直ぐ進めばあるけど、でも、その前にある小道に隠れよう」

「了解~」

 僕達は後ろを警戒しながら歩き、袋小路の前にある小道に入り込み身を隠した。

 僕達が身を隠した後に、直ぐに僕達の後を追いかけて来た人達が、僕達に気付かず進んでい行った。

「通り過ぎたわね」

「よし、そろそろ行こうか」

 僕がそう言うと、皆、頷き行動した。

 僕達が袋小路に差し掛かろうとしたら。そこから声が聞こえた。

「くそっ。何処で見失ったんだ?」

「あいつら、この地区の住人じゃあねえ筈だ。それなのに、どうやって、俺達を撒いたんだ?」

「俺が知るかっ。兎も角、早く見つけないと不味い事にっ」

「お探しは僕達ですか?」

 話しをしている人達に、僕が声を掛ける。

 後ろから声を掛けられ、そこに居る人達は驚きながら振り返る。

「て、てめえ、何時の間にっ」

「何処から現れやがった⁉」

「何か、つけられている感じがしたので、途中で身を隠しました」

「身を隠した? 魔法か?」

「そんな事はどうでもいい。おい、手前らはどうして『鳳凰商会』の事を探っていやがるんだ?」

 暗がりだけど、声からして全員男性のようだな。

 何の種族かは分からないが、とりあえずはこう答えよう。

「いえいえ、ただ『鳳凰商会』と取引をしたいと思いまして」

「ウソをつけっ。だったら、俺達が動くわけねえだろうがっ」

「そちらはどうか知らないけど、僕としては本当に取引をしたいだけなんだけど」

「もういい。そっちは本当の事を言わないなら、とっ捕まえるだけだ」

「連れは女だけだからな。簡単に捕まえれるだろう」

 男達は腰に差している得物を抜いた。

「ふぅ。話し合いで分かりあえないとは、悲しいね。仕方がない。ボノさん、デネさん。懲らしめてあげなさい」

「お~、って、ボノさんって、わたし?」

「誰が、デネさんよっ⁉」

 ちぇ、前世で見た時代劇風に言っても、ノリは伝わらないか。

 印籠も無いから、当然と言えば当然か。

「リウイ様。わたし達もいるのですが?」

 あっ。そうだった。

 こういう場合は、ハタさん。ランさんと言っても良かったか。

「何をごちゃごちゃ言っていやがるっ」

「おら、捕まえるぞっ」

 男達は奇声を上げて向かって来る。

 皆、戦闘態勢に移行としたら。

「させないわよ!」

 その声と共に、雷の弾が飛んできて、男の人達に当たる。

「「「びばやややあややあびびゃうあばゆあやっ⁉⁈」」」

 皆さん、感電して黒焦げになって倒れた。

 誰か、助けてくれたようだけど、誰だ?

 周囲を見ていると。

「ふっ。危ない所だったわね」

 上から声がしたので、顔を上げると、塀の上にティナが魔弾銃を構えていた。

 それにアルネブも居た。

「ティナ、それにアルネブまで、何でここに?」

 今日は気分じゃないとか言ってなかった?

「ふっふん。幼馴染の危機を敏感に感じ取って、こうして助けに来たのよ」

 ティナが鼻息を荒くして胸を張る。

 それって、要するにやっぱり付いて来たという事では?

 そう思いながらも、僕は口に出さない。言ったら拗ねそうだし。

 ティナ達は塀から降りると、僕の所まで来た。

「ねぇ、リウイ」

「なに?」

「あたし達、頑張ったわよね?」

「そうだね」

「じゃあ、御褒美欲しいな~」

「御褒美?」

 何かたかるつもりかな。

 そう思っていると、ティナは僕の頭を向ける。頭を向けて、何をしろと?

「御褒美で頭を撫でて欲しいな~」

 頭を撫でる?

「やっすい、御褒美だね~」

 とか言いながら、僕はティナの頭を撫でる。

 僕がそう言うと何か言いたそうな顔をしていたティナだったが、僕が頭を撫でると嬉しそうに顔を緩ませた。

「むっふふ~」

 頭を撫でられて、そんなに嬉しいかな?

 少し乱暴に撫でていると、アルネブが視線がティナの頭を撫でている僕の手に注がれる。

 僕は苦笑して、ティナの頭から手を離す。

 そして、アルネブを手招きする。

 アルネブが僕の所まで来ると屈んでもらい、耳を撫でる。

「アルネブもティナと一緒に来てくれてありがとうね」

「い、いえ、わたしは、当然の事をしただけで……」

 うん。相変わらずのモフモフだ。

 素晴らしい。素晴らしすぎる。

 アルネブも気持ち良いのか、目を瞑り身体を震わせている。

「……コホン。じゃれ合いも良いけど、そろそろこの人達を何とかしない?」

 おっと、アルネブのモフモフを堪能しすぎて忘れていた。

「とりあえず、逃げ出さないように何か縄で縛って、それから話を聞こうか」

「了解~」

 そう言って、ボノビビさんが何処からか縄を出して、気を失っている人達を縄で縛っていく。

「その縄は何処で手に入れたの?」

「え~、こんな事もあろうかと思って、買っておいたの」

 用意良いな。

「よ~し。全員縄で縛ったわよ」

「じゃあ、起きるまで少し待とうか」

「そんな時間も惜しいわ~」

 ボノビビさんがそう言って、男性の一人をビンタした。

「ぴげっ、な、なんだ⁈」

「起きた?」

「な、なにしやがっ、あ、あれ?」

 身体を動かそうとしたが、男性は縄で縛られ動けない。

「こっちの問いに素直に答えたら、解放するけど、嘘をついたら」

「ついたら?」

「今宵のわたしの爪は血に飢えているね~、まだ血を吸ってないから吸いたいと言っているわ~」

 笑顔だけど、目が笑っていないボノビビさん。

 爪を伸ばして、男性に見せつける。

 男性も心得ているのか、生唾を飲み込んで何度も頷く。

「じゃあ、質問、その一。どうして、リウイを捕まえようとしたの?

「……上からの指示だよ。そいつ捕まえろって」

「上って誰?」

「俺達の元リーダーからだよ」

「リーダー? どういう事なの?」

「この地区には元々『ブラック・タイガー』っていうチームがあったんだけどよ。『ビアンコ・ピピストレロ』に負けて吸収されちまったんだよ」

 ブラック・タイガー? 聞いた事がないな。まぁ、僕もこの都市にごろつきのチームが九つあるってしったばかりだからな。

 僕が知る前に、チームが幾つかあってもおかしくないな。

 でも、ブラック・タイガーか。旗はエビだったんだろうか?

 そう思うのは、僕だけだろうな。

「でも、可笑しいわね。その『ブラック・タイガー』っていうチームだった人達が、どうして『鳳凰商会』の為に働くのですか?」

 デネボラは疑問に思ったようだけど、僕は直ぐに分かった。

「恐らくだけど『ビアンコ・ピピストレロ』は『鳳凰商会』の表に出せない仕事をしていたんだよ。その仕事をさせる代わりに、資金援助するとか約束を立てて」

 僕の見解に、皆、成程と頷いたけど、男性は首を横に振る。

「少し違うぜ。坊主。その『ビアンコ・ピピストレロ』自体が『鳳凰商会』に所属している部隊なんだよ」

「部隊? つまり『ビアンコ・ピピストレロ』は『鳳凰商会』の部門という事か」

 成程ね。

「? どういう事?」

 ティナが分かっていないのか首を傾げる。

「つまり~『鳳凰商会』=『ビアンコ・ピピストレロ』って考えれば良いのよ」

 ボノビビさん少し違います。

「違いますよ。ボノビビさん。『ビアンコ・ピピストレロ』=『鳳凰商会』の下部組織って考えですよ」

 そっちの方が合っているな。流石はデネボラだ。

 という事は、『ビアンコ・ピピストレロ』と同盟を結ぶ為には『鳳凰商会』をどうにかしないといけないな。これは手間が掛かるな。










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