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第26話 これってデート?

 ボノビビさん達が貴重な情報を手に入れたのだから、このまま館に帰ろうとしたら。

「情報は手に入ったから、これで存分に酒盛りが出来るぞっ」

 そう言って、母さんが酒を飲みだした。

 ここで酒盛りしなくても、館に戻れば出来るだろうに。

「館でするのも良いが、此処でするのも風情がある」

 そんなものかな?

「ふん。わたしの息子なのに風情と情緒を感じる感性がないようだ。嘆かわしい」

 母さんは悲しそうに首を横に振る。

 う~ん。というか、母さんの息子だからそういう感性がないのでは?

「まぁ、奥様。リウイ様も公務があります。お酒を飲み過ぎて、公務に差しさわりになっては問題です」

「ふむ。それもそうだな。仕方がない。飲みたい者だけ残って良いぞ」

 ソフィーが宥めてくれたおかげで、僕は逃げる事は出来た。

「じゃあ、あたいは残るぜ」

「わたしも」

 当然、最年長コンビは残る。

「じゃあ、ワタクシも」

 意外にもカーミラさんも残ると言い出した。

 あまりドンチャン騒ぎは好きな人ではなかった筈だけど。

「これで少しでも母君に気に入られれば、いずれは、……ふふふ」

 何か笑っているけど。いいのかな?

 後の事はソフィーに任せて、僕達は帰る事にした。


 館に戻った僕達はその場で解散した。

 僕は私室に戻ると、一休みした。

 目が覚めると、僕は執務室に向かった。

 執務に使う椅子に座り、少し考える。

 ボノビビさん達の見た事が正しければ『ビアンコ・ピピストレロ』を支援しているのは『鳳凰商会』という事になる。

 あの商会はこの国に来て日が浅い。

 それでも東地区では大きな商会になっている。

 商会を大きくする為に、裏の仕事を『ビアンコ・ピピストレロ』にやらせたのなら、不思議では無い。

 問題は『鳳凰商会』の目的だ。

 商会を大きくしたいのか、それとも何か目的があるのか?

 そこの所が分からないと対処が難しいな。

 どうするべきだろう?

 しかし、いくら考えても、良い答えが出ないな。

 仕方がない。ここは我が知恵袋に相談するか。

 僕が誰か呼ぼうとしたら。

 コンコン。

 ドアがノックされた。

 えっ? もしかして、もう来たの?

 とりあえず、誰が来たのか尋ねるか。

「誰だ?」

『カーミラよ』

 おや、意外な人が訪ねてきたな。

「どうぞ」

 入るのを許可すると、カーミラさんが入って来た。

「お帰り。酒盛りは如何だった?」

「ええ、楽しく飲ませて貰ったわ」

 ニコニコしながら言うカーミラさん。

 あのメンバーって、酒豪ばかりだったよな。そんな中で楽しく飲めるとか。

 実は、カーミラさんも酒豪なのか?

「何か考えていたようだけど、昨日の件かしら?」

「ああ、うん。そうなんだ」

 隠す事でもないので、正直に告げる僕。

「何をするか考えているという所かしら?」

「そうなんだよ。で、実際、どうしたらいいのか分からなくて」

「成程ね。ワタクシに良い考えがあるわ」

「えっ⁈」

 良い考え? 

「それは、いったい?」

「簡単よ。その『鳳凰商会』に行って、支店長にその店と『ビアンコ・ピピストレロ』が裏で繋がっている事を教えるのよ」

「教える意味がないと思うのだけど?」

「あるわよ。そうして刺激する事で、向こうが動いたら、その襲撃者を捕まえてリウイが入っている『プゼルセイレーン』のメンバーという事を教えるのよ」

「何故、教えるの?」

「同盟の交渉をする為よ」

「そう上手くいくかな?」

「でも、行動しないよりもした方が良いと思わない?」

「むっ。確かに」

「という訳で、昼に中央区にある噴水で待ち合わせね。遅れたら駄目よ」

「えっ。一緒に行くの?」

「当然でしょう。ワタクシが発案したのだから」

「そうだね」

「じゃあ、後でね。リウイ♥」

 そう言って、カーミラさんは部屋を出て行った。

「…………あれ? これってもしかしてデートなのかな?」

 今さらながら思った僕であった。


僕はリッシュモンドから渡される決済を求める書類に名前や印を押していく。

 その仕事は昼になる前に終わったので、後は好きにして良いと言われ、出掛ける準備をした。

 シャリュを呼んで、服を見立ててもらう。

「リウイ様。この服などは如何でしょうか?」

「う~ん。ちょっと派手かな。もう少し地味な色のをお願い」

「畏まりました。では、こちらで」

 僕の身体に服を当てて、どの服が良いか見立てる。

 しかし、デートか。前世ではした記憶がないからな。

 初めてのデートと思うと、ウキウキするな。

「リウイ様。何か良い事でもあったのですか? 随分と嬉しそうな顔をしているようですが」

「そ、そうかな」

 どうも、生まれて初めてのデートの所為か、ついつい嬉しさが顔に出てしまうようだ。

「この服でどうでしょうか?」

 そう言って、シャリュが僕の当てた服は装飾もそれほど施されていないが、良い生地を使った青い色の服だった。

「うん。これでいいかな」

「畏まりました。この服に着替えるという事は、何処かにお出かけですか?」

「そうなんだ」

「御一人でですか?」

「いや、外で待ち合わせしているんだ」

「成程。そうですか」

 シャリュはそれ以上、何も訊かなかった。

「では、わたしはこれで」

 シャリュは一礼して、部屋から出て行った。

 よし、僕も準備を整えて出るか。


 昼なので、堂々と玄関から出る。

 途中、何人かの人に会ったが「仕事で少しでる」とだけ言っておいた。

 逸る気持ちを抑えながら、僕は中央区の噴水に向かう。

 元々は広場だったのを少し改造して、噴水も作ったのだ。

 お蔭で、結構有名なデートスポットになったと聞いている。

 その場所に向かう。

 噴水がある所に着いたので、僕はカーミラさんが居ないか探した。

 人だかりでも出来ていたら直ぐに分かるのだが、生憎そのようなものはなかった。

 仕方がないので、噴水の傍で待つ事にした。


 三十分後。


 それなりに待っているが、来る気配がないな。

 ふむ。女の支度は時間が掛かると、聞いた事があるからな。もう少し気長に待つか。

 そう思っていると、向こうの通りからカーミラさんが見えた。

 向こうも僕に気付いたのか、軽く手を振っている。

 そして、歩き出そうとしたら、何処からか男性が現れて、カーミラさんをナンパしだした。

 カーミラさんは相手にしていないようだが、それでも声を掛ける。勇者だな。

 それに苛立ったのか、カーミラさんが笑顔を浮かべる。

 男性がその笑顔に見惚れていると、カーミラさんは腹にパンチを叩き込んだ。

 それなりに離れているのに、ドスンっという音が聞こえそうな位の威力だ。

 男性が腹を抑えて倒れるのも見ないで、カーミラさんはここまで歩く。

「ごめんなさい。待たせたわね」

「あ、ああ、うん。べつにだいじょうぶだよ」

 腹を抑えて悶絶している男性を可哀そうだなと思うが、自業自得なので何も言わない。

「じゃあ、行きましょう」

 カーミラさんが自分の腕を絡める。

 腕に柔らかい物が当たるので、僕は頬を赤くする。

 それを見て、カーミラさんは微笑んだ。

 僕達は東地区にある『鳳凰商会』へと足を向けた。

 

カーミラさんと手を組みながら、僕達は東地区に向かう。

 夜にしか来てない所為か、夜とはうって変わって賑やかさがあった。

 東地区はどちらかと言うと、職人街みたいな感じで設計しているからな。

 だからか、職人が作った物で賑わっている感じだ。

 その所為か、僕達みたいにデートで来る所ではない。

 なので、物品を売っている人達も、通りを歩いている人達も物珍し気に僕達を見る。

 無論、カーミラさんが綺麗なのもあるだろうが、正直に言って僕達以外に恋人同士で歩いている人達が居ないから余計に目立っている気がする。

「ふふふ、何かこんなに見られていると、照れるわね」

「そうだね」

 デートでこの地区に来る人がいない所為かな。

 今度、東地区にもデートスポットになるような所を作るか。

「あそこよね。『鳳凰商会』って」

 っと、そう考えながら歩いていた所為か、目的の場所に着いた。

 うん。確かに、赤羽毛の鳥が二羽対になっているシンボルマークだ。

 しかし、このマークは誰が教えたんだろうか?

 西園寺君? いや、ユエかもしれないな。

 まぁ、それを知る事は、もう出来ないから分からないか。

「とりあえず、中に入ろうか」

「そうね」

 僕達は『鳳凰商会』の建物の中に入った。

 建物の中に入ると、涼しいと感じた。今日は気温が少し高めだったからか、少し歩いただけで汗ばんでいた。

 その所為か、余計に涼しいと感じた。

「いらっしゃいませ」

 店員が僕達を見るなり、挨拶して来た。

 ふむ。店員が着ている服は特に変わった感じは無いな。

 てっきり、メイド服を着た人が応対していると勝手に思った。

「支店長を呼ぶ前に少し、店の中を回らない?」

「そうだね」

 どんな商品を扱っているか気になるし。

 僕達は店の中で展示されている商品を見る。

 こうして見ると、色々と扱っているようだな。

 食料品だけではなく、向こうの大陸の装飾品、衣類などを扱っているようだ。

 品揃いもピンからキリだな。

 向こうの大陸からの輸送コストを考えても、この値段は少し割安じゃないかな。

 これで儲けが出るのか?

「色々な商品があるようだけど、これって儲けになるのかしら?」

「ああ、カーミラさんもそう思った」

 当然とばかりに頷くカーミラさん。

 やっぱり、貴族として育てられたからかな、目が肥えているようだ。

「そろそろ。支店長に話をしない?」

「ああ、そうだね。でも、その前に」

 僕は近くにいる店員に目を向ける。

 店員も心得ているのか、直ぐに僕の視線に気づき、僕達の所に駆け寄って来る。

「何か御用でしょうか?」

「すいません。支店長に会いたいのですが、今、大丈夫でしょうか?」

「申し訳ありません。ただいま、支店長は出掛けておりまして」

 店員は頭を下げる。

「では、何時頃、お会いできるでしょうか?」

「ただいま、確認してまいりますので、少々お待ちを」

 店員は一礼して、僕達から離れる。

「良いの? その支店長が帰って来るのを待たせてもらえばいいんじゃあ」

「こういうのはいきなり尋ねるよりも、アポイントメントを取るのが大事だからね」

「あぽいとめんと?」

 何、それ? という顔をするカーミラさん。

 流石は貴族だ。人に会いたい場合、約束も無しにやってきて、居たら待たせてもらうのに慣れているんだろうな。

「会う約束の事だよ」

「ああ、成程。それにしても、リウイ。貴方、王族なのによくそんな事を知っているわね?」

 そう言われてみれば、一応魔王の息子だからな、アポイトメントを知っているは変だよな。

「……こ、これも、ほんをよんでしったんだ」

 無理があるけど、これで誤魔化す。

「成程。本から得られる知識は凄いわね」

 感心しているカーミラさん。

 よし。何とか誤魔化せた。

「お待たせしました」

 思ったよりも早く、店員が戻って来たな。

「支店長は明日のこの時間でしたら会えるそうです」

「じゃあ、明日来ますね」

「御名前を伺ってもよろしいですか」

「リウイです」

「リウイ様ですね。支店長が戻ったらお伝えします」

「じゃあ、これで」

 僕達は店を出た。

 そのまま館に戻らないで、僕達は東地区を少し回って、館に戻った。








 リウイ達から少し離れた物陰から。

「むぅ、何か良い雰囲気だ」

 物陰からアルティナはリウイとカーミラが並んでい歩いている姿を見てむくれる。

「由々しき事態ね」

 アルティナの隣にいるアルネブも顔を顰める。

「…………」

 アルティナ達に着いてきたアマルティアは何も言わない。

 その代わりに、持っている剣の刀身を見ている。

 光を宿さない瞳で。

「ふ、ふふふ。今日は愛刀が血に飢えているようです」

「今日『は』じゃなくて今日『も』でしょう。あんたの場合」

「兎も角、このまま二人を尾行して、何か起こる前に妨害するで良いわね」

「ええ、今日ばかりは不本意だけど、不本意だけど手を組んであげる」

「それはこちらの台詞ですよ」

「はいはい。二人共、行くわよ」

「了解」「承知」

 三人は密かにリウイ達の後を追いかけた。

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