第25話 北区寄りの所に来たけど。
険悪な空気を出す二人を伴ないながら、僕達はエントランスホールに着いた。
既に、エントランスホールには昨日のメンバーが殆どいた。
「あれ? ボノビビさんとバイアさんとサンゴちゃんは?」
僕は近くにいるデネボラに訊ねた。
「この館の中を探したけど居なかったわ」
「という事は、何処かに出た?」
おかしいな。シャリュに言付けを頼んだから情報は伝わっているだろうし、それにサンゴちゃんは話し合いの場に居たから、ここに集合という事は知っている筈なのだけど。
「リウイ様」
「ああ、シャリュ」
「ビビ、ではなく、ボノビビ様から言付けを預かりました」
「言付け?」
「はい。『サンゴを連れて先に現場に行っているわ』との事です」
成程。シャリュから言付けを聞いて、そして、サンゴちゃんから話を聞いたな。
とりあえず、現地で合流で良いんだな。
「そうか。分かった」
「はっ。では、失礼いたします」
シャリュは一礼して、その場を去った。
その背が見えなくなるまで見送った僕は、皆が居る方に顔を向ける。
「よし。これより、僕達は東地区の北区寄りの所に向かう。途中何かあるか分からないので、決して一人で行動しない様に、それでもはぐれたら、この館に戻ってくるよう事」
僕がそう告げると、皆頷いた。、僕もそれを見て、玄関の扉を開ける。
館を出て、東地区に入り、北地区寄りの地域に向かう。
目的地は決めずに歩いていた。
「ふぅ。思ったより広いですね」
ハダがそう呟くと、皆同意するかのように頷いた。
北地区寄りと一言で言っても広いんだ。これが。
何かの建物があるから、道は真っ直ぐに進めないし袋小路が沢山あった。
誰だよ。こんな道の設計をしたのは。
そうして歩いていると。
「あっ、見つけた」
そんな声が聞こえたので、周りを見たが、僕達以外誰も居なかった。
「こっちこっち」
そんな声が聞こえたので、顔を上げると、其処にはボノビビさんが居た。
塀を歩くとか、何処かの漫画かと思ったよ。
「ああ、ボノビビさん。そんな所で何を」
「貴方達を探しに来たのよ。付いてきなさい。今、北区のチームと『ビアンコ・ピピストレロ』がバト゚っているわ」
「バトってるって、今?」
北区のチームの人達は喧嘩早いのか。それとも、偶然か?
僕達が調べようとした日に、抗争が起きるとは。
「じゃあ、わたしに付いて来て」
ボノビビさんが塀の上を走りだしたので、僕達もその後を追いかける。
よく落ちないなと思いながら。
ボノビビさんの後に付いて行くと、二階建て建物が見えて来た。
でも、外装が汚れている所を見ると、誰も暮らしていないようだ。
ボノビビさんはその建物にドアに開ける。
「えっ? どうして開いているの?」
普通は鍵が掛かっているんじゃあ。
「貴方達が来る前に、鍵は壊したわ」
ちょとちょっと、それは駄目でしょう。
一応、この建物は誰かの物なのだから、勝手に入れば不法侵入になるじゃないか。
「大丈夫よ。バレなければ。それにバレても、リウイがどうにかしてくれるわよね♪」
ウインクしながらそんなこと言わないでくれるかな。
まぁ、仕方がないので、もし持ち主にバレたら、僕がフォローするしかないな。
僕達は建物に中に入ると、そのまま階段を上がって行く。
この建物は二階は屋上になっている様だ。
「おお、ようやく来たかっ」
そこでは酒盛りが行われていた。
バイアさんの周りには、酒が入っていた瓶や樽が幾つもあった。
恐ろしい事に、それらは全て空であった。
「さ、流石は姐さんだ。パネえ」
サンゴちゃんが凄く驚いている。
「見ろよ。あっちで派手な喧嘩をおっぱじめてるぜ」
バイアさんが指差したので、その先を見ると、何か魔法の撃ち合いみたいな事をしている。
「派手にやってるな」
「此処だと良く見えるだろう。シャリュの話を聞いて直ぐに探したんだ」
「はぁ、仕事が速いですね」
「当然だろう。喧嘩見物には、酒盛りが大事だからな」
「酒盛りって」
喧嘩を肴にするか。
「貴方達、チームの抗争を見て楽しむなんて、不謹慎よっ」
デネボラさんが叫んだ。
この人。真面目だからな。
「固いな。獅子人の姫さんよ」
「喧嘩を楽しまないいと損よ」
そんなの損とは思わないと思うのだけど。
「今、始まったばかりだ。これからは見ものだぞ」
「ふむ。じゃあ、ここから観戦させてもらうか」
よくよく考えたら、他のチームの抗争はあまり見た事がないからな。
どのチームがどんな特徴があるか知るのも悪くないな。
「あら、リウイは話が分かるわね」
「流石はこの領主様だ。ほれ、駆け付け一杯っ」
バイアさんがそう言って、持っている盃に酒を注ぐ。
ふむ。これは濁り酒のようだな。
米だよな。多分。
まぁ、飲んだら分かるか。
「……んく、……これは、砂糖酒か」
舐める様に飲んでみたら 甘くて結構酒精が強い事から、砂糖酒だと直ぐに分かった。
「正解だ。お前さんが作った塩を売って砂糖を手に入れて、これを作ったんだ」
「へえ、そうなんだ」
これは濾した方が良いな。
まぁ、もう飲む事はないから、言わないけど。
「さて、何処のチームと喧嘩しているのやら」
この距離だと何とか見えるな。
片方は蝙蝠なのはわかりきっている。
もう片方は、……ああ、熊と鳥を模した旗が二つあるな。
北地区にあるチームは『クレイジーベアー』『ブルーファルコン』の二つが来たようだな。
それを『ビアンコ・ピピストレロ』一つのチームで相手に出来るのか?
「行け、行け行けっ。この地区を俺らの物にするんだっ」
「「「おおおっ」」」
北地区の『クレイジーベアー』『ブルーファルコン』の二つのチームが人数の多さを活かして攻め込んでいるようだけど。
「……ふっ」
対する『ビアンコ・ピピストレロ』のメンバーは何か構えだす。
あの構えは、もしかして、かめ〇め波⁉
「戦技 波動拳!」
そっちかい⁈
というか、それ波動拳じゃないし、思いっきり〇めはめ波じゃん。
「「「ぐあああああっ⁉」」」
放たれた波動拳? で吹っ飛ばされる二チーム連合のメンバー。
先程の攻撃で大勢が崩れたのか、追撃をかける『ビアンコ・ピピストレロ』のメンバー。
「追撃しろっ」
「おおっ」
既に戦闘意欲の無い者達に襲い掛かる『ビアンコ・ピピストレロ』のメンバー。
「戦技 覇王会心撃」
「戦技 百連脚」
何か戦技が何処かで見覚えや聞き覚えがあるのは気のせいだろうか?
そう思っている間にも『ビアンコ・ピピストレロ』の追撃は続き、二チーム連合メンバーはその攻勢に耐えきる事が出来ず、自分達の根城に撤退しだした。
数の多さで攻め込んで負けるとは。指揮官が駄目だったのかな。それとも『ビアンコ・ピピストレロ』のメンバーの実力が高かったのか。
どちらかは分からないけど、このまま『ビアンコ・ピピストレロ』はどうするのか見る。
メンバーたちは何か話し合っているけど、流石にこの距離だと聞こえないな。
「アルネブ」
「はい。何ですか?」
「『ビアンコ・ピピストレロ』のメンバーの会話は聞こえる?」
「ええ、バッチリと」
「じゃあ、何て言っているか教えて」
「分かりました。ええっと『敵の撃退は完了したので追撃はせず、このまま根城に戻る』ことを話し合っているようね」
「へぇ、意外に冷静だな」
あのまま追撃して、北地区に侵入するかと思っていた。
「ああ、根城に帰る事にしたようよ」
「よし。じゃあ、このままあの人達を追いかけよう」
僕は皆に行こうと言おうとしたら。
「少し待ちなさい。リウイ」
「うん? 何かなボノビビさん」
「こんな大人数で動いたら、向こうさんが気付かれるわよ」
「むっ。確かに」
「ここは、身軽の者達に後をつけさせるべきよ」
「身軽な者か」
周りを見ると、身軽な者と言えるのは、アルネブ、サンゴちゃん、ボノビビさんって所かな。
「じゃあ、ボノビビさん。アルネブとサンゴちゃんを連れて『ビアンコ・ピピストレロ』のメンバーの後をつけて貰えますか」
「任せなさいっ。行くわよ。アルネブ。サンちゃん」
「言われなくても」
「了解だ。ビビ姐さん」
ボノビビさん達が飛び降りて行く、って、ここは二階!
あっ。二階だったら大丈夫か。
僕達は三人がそのまま難なく地面に着地して、そのまま『ビアンコ・ピピストレロ』の後を付いて行く。
流石は獣人か。この高さから降りても問題なく走れるとは。
僕達はここで少し待つか。
「よぉし、あたいらは酒盛りの続きだっ」
しません。全く、ここを何処だと。
「頂こうか」
「うおおおおおっ。母さんっ⁉」
居たの⁉ という事はっ。
「奥様。肴を買ってきました」
「うむ。ご苦労」
ソフィィィィィィィィ、何してんのさっ‼
「おお、領主殿の御母堂様か。ささ、一献」
「頂こう」
「飲むなっ‼」
どんな状況でも酒を飲める母が凄いと思う。普通に。
仕方がなく、酒盛りが行われる。
僕もチビチビと酒を飲みながら、ボノビビさん達を待った。
酒を飲みながら待っていると。
「ただいま~。お酒と肴を追加で買ってきたわよ。って、何か人が増えていない?」
そう言う通りに、三人の手には酒瓶と紙袋を持っている。
「ああ、領主様の御母堂とメイドが加わったんだ」
「そうなの」
ボノビビさんは紙袋をソフィーに渡して、持っている酒瓶の中身を盃に注ぎ、喉に流し込む。
「ぷは~~、一仕事の後は気持ち良いわ~」
「それで、何か分かった?」
「ええ、わかったわよ~。おねえさんをほめなさい。ほれほれ」
ボノビビさんはそう言って、僕に頬ずりしてくる。
ちょっと酒臭いな。
「「「むうううう………………」」」
何か、背中に強い視線を感じるので、ここはさっさと要件を聞こう。
「ボノビビさん。『ビアンコ・ピピストレロ』のメンバーの後について行ったら、何か分かったの」
「そうね。まず、分かったのはその『ビアンコ・ピピストレロ』の根城ね」
「根城? 何処にあるのかな?」
「う~ん。ここから少し歩いた所ね。後で地図を見て詳しい場所を教えるわ。で、そこは何かの建物のようなんだけど、もう店自体が閉まっているから何をしている店なのかは分からなかったわ」
「まぁ、その根城だけ分かれば、こちらとしても問題ないよ」
「ところが、この話しには続きがあるのよ」
「続き?」
「そうよ。わたし達が、根城が分かったから、リウイ達の所に戻ろうとしたらね。其処に人が入ったのよ」
「人が?」
「ええ、そうよ。その店の人かと思ったけど、少ししたら出たから違うと分かったから、わたし達はその人の後を追いかけたのよ」
「それで?」
「その人の後を追いかけたらね。その人がある建物に入ったのよ」
「ある建物?」
「ええ、何処だと思う?」
「…………」
どこだと言われても、分らないので答える事が出来ない僕。
「そうしたらね。何処かの商会の店だったのよ」
「商会?」
「ええ、何かシンボルなのか、赤い羽毛の鳥が二羽が対になるように描かれているの」
赤い羽毛の鳥が二羽対になるように描かれたシンボルマークの商会?
それって確か『鳳凰商会』だったよな。
そうか『ビアンコ・ピピストレロ』を支援しているのは『鳳凰商会』なのか。




