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第22話 で、東地区で調査しよう

 今夜、エントランスホールに集まる事を言って、皆を一度解散した。

 その後は、僕は今夜の調査に備えて眠った。

 そして、数時間後。

 まずは、ティナ達の部屋に行き、そこで今日の仕事は、沢山の人と合同作業だと告げる。

 それを聞いた二人は不満そうな顔をしたが、僕は根気よく説得してくれた事で、渋々だが頷てくれた。

 で、エントランスホールに行くと、今日の仕事に参加してくれる人達は集まっていた。

「待たせたかな?」

「何を言っているのよ。貴方は領主なんだから、皆より遅く来るのが丁度良いのよ」

「そんなものかな?」

「はぁ、自覚がないのも問題ね」

 カーミラさんが溜め息を吐いた。

「でも、これがリウイらしいと思うわ」

 ティナは嬉しそうに顔を緩ませる。

 何か褒められた気がしないけど、良い事にしよう。

「あっ。来た来た」

 ボノビビさんが僕達に手を振る。

 僕はそれを見て苦笑しながら、手を振る。

 すると、ボノビビさんの耳がピコピコと動き、尻尾を元気よく振っている。

 ああ、何か、モフモフしたいなっ。

 そう思っていると。

「「ふんっ」」

 両脇腹に同時に肘打ちされた。

 痛みのあまり、僕は腹を抑える。

「な、なぜ?」

「知らないわっ」

「自分の胸に聞けば?」

 そう言って、二人は皆が居る所に向かう。

 僕は腹を抑えながらも、皆の所に行く。

「ま、またせたね」

「大丈夫ですか?」

 アルトリアが心配そうに近付き聞いてきた。

「だ、だいじょうぶ」

「は、はぁ」

 僕は一度深く息を吸う。

「ふ~、よし」

 まだ、ちょっと痛いけど我慢だ。

「じゃあ、僕達は東地区に向かう。一組になって、調査してくれ」

「どういう風に組み分けるのですか?」

「そうだな。とりあえずは、くじ引きで別けるとしようか」

「で、そのくじは?」

「ああ、今、持ってくるよ」

「持ってくる? 誰が?」

 それに答える前に、リッシュモンドがやってきた。

「主君。ご命令通りに三色に色分けた紐を用意しました」

「ああ、ありがとう」

 僕は皆の方を向く。

「皆には、これから、赤、青、黄色に色分けた紐を引いてもらう」

「わたし、バイア、アルトリア、デネボラ、ランシュエ、ハダ、サンゴ、カーミラ、アルティナ、アルネブ、アマルティア、リウイの計十二人だから、丁度四人一組になるわね」

「という訳で、最初はボノビビさんから、どうぞ」

 僕が勧めると、ボノビビさんはリッシュモンドが握っている紐を一本取る。

「赤ね」

「じゃあ、ボノビビさんは赤っと、次は」

「では、僭越ながらわたしが」

 次はアルトリアが引いた。

「蒼ですね」

「よし。じゃあ、さっさと終らせて、調査に行こうか」

 僕がそう言うと、皆、次々に紐を取っていく。

 そして、こういうチーム分けになった。

 赤組。ボノビビ。バイア。ランシュエ。サンゴ。

 青組。アルトリア。僕。デネボラ。ハダ。

 黄色組。アルティナ。アルネブ。アマルティア。カーミラ。

「……やり直しを求めるわっ‼」

「異議なし」

「同じく」

「これはやり直し案件ね」

「却下します。そんな時間も惜しいので」

 ティナ達は抗議しているが、無視する。

「じゃあ、東地区に向かうよ。今日はあくまでも下見だから不要な喧嘩はしないように」

 僕がそう言うと、皆頷いた。


館を出た僕達は東地区に向かう。

 この前みたいに、厨房の出入り口からコソコソ出る事無く、正面の玄関から堂々と出る事が出来た。

 衛兵が僕達を見ても敬礼して見送ってくれた。

 こう出るのに楽になるのは、悪くないな。

 余計のものが付いてこなかったらね!

 館を出て、少し歩いたら何か視線を感じたので、振り返ると母さんとソフィーが居た。

 何で居るの? と思っていると、母さんが口が動いた。

 言葉は出してないが、口だけ動かしている感じだな。読唇術をしろってか。

 まぁ、既にシュナイダー先生に教わっているので出来るけどね。

 何々、き、よ、う、も、か、ん、し、さ、せ、て、も、ら、う、ぞ、そ、ふ、い、と、い、つ、し、よに。今日も監視させてもらうぞ。ソフィーと一緒にだって⁉

 もう、勘弁してよ。

「? どうかしましましたか?」

「何でもない」

 僕はげんなりしながらも首を横に振る。

「そうですか。では、我が君。どうぞ。我が背に」

「あ、ああ、そうだ・・・・・・っ⁉」

 何か、悪寒を感じた。

 何処からだと思い、周囲を見回ると、母さん達から少し離れた所にアリアンが居た。

 何してるの。そんな所で?

 アリアンは読唇術などせず、黙って僕を見ている。

 頼むから、何か不満があるなら言ってくれないかな。

「どうかしましたか?」

「・・・・・・何でもない」

 何で、仕事をする前から、こんなに気疲れしないといけないんだろう?

 内心、溜め息を吐く僕であった。



 館を出て歩く事、数十分。

 僕達は中央区と東地区の間にいる。

 目の前にある標示板には『ここから東地区』と文字で書かれていた。

「じゃあ、リウイ。ここからは」

「ああ、赤組は北地区寄りの所を、黄色組は南地区寄りの所、僕達、青組は東地区の中央を下見する。変な所、怪しいと思える所には地図に記しておいて、とりあえず、今日は下見だから、三時間後に此処に集合で良いかな」

「了解~」

「……分かったわ」

 そう返事するなり、各組は分かれて行った。

 何か、黄色組の方は険悪な空気が漂っていたような気がするけど、良い事にしよう。うん。

 触らぬ神に祟りなしだ。

 僕もアルトリアの背から降りる。

 流石に、人馬族のアルトリアの背に乗ったままだと目立つからな。

「じゃあ、僕達も行こうか」

「そうね」

「参りましょうか」

「……承知」

 あの、アルトリアさん? 何でそこは残念そうな声で返事するのかな?

 突っ込んだら、何か負けな気がするから突っ込まないけど。

「やれやれ。我が息子は、女性に対して、こう獣の様に襲い掛かる気概がないな」

「すみません。女性に優しい性格に育てたので」

 何か、母さん達に何か言われている気がするけど、気にしない気にしない。

 

 僕達は東地区の中央を歩いていた。

 確か、東地区は主に工房などを多くある様に設計していたはずだ。

 その所為かこの時間になると、魔石灯以外の灯りがあまりない。

 恐らく、店じまいしているだろう。

 これは夜に来るよりも、昼ぐらいから来た方が良いな。

 明日から、そうするか。

 でも、店が閉まっている所為か、酒場から賑やかな声が聞こえてくる。

 ふむ。ここは適当な酒場に入って情報収集した方が良いな。

 僕が目に入った酒場に足を向けようとしたら。

「ちょっと待ちなさい」

「うん? 何かな、デネボラさん」

 何故か、デネボラさんが僕を止める。

「貴方。仕事を放って、酒場に行くつもりからしら」

「いやいや、適当な酒場に入って情報を手に入れようと思っただけだよ」

「本当かしら?」

「いや、本当だから」

「だったら、誰か一緒に入っても文句はないわね」

「文句はないけど、誰が入るの?」

「誰がって、それは」

「アルトリアとハタは無理だよ。身体のサイズ的に」

 僕が入ろうとした店の入り口の幅が既に、アルトリアが入りきれないほどに狭い。

 ハタも同じだ。

「申し訳ありません」

「ここは流石に無理です」

 二人は申し訳なさそうに謝る。

「む、むう……」

「という訳で、僕が一人で」

「……仕方がないわ。わたしも一緒に入りますっ」

「えっ⁉ 良いの?」

 デネボラさんはどちらかと言うと、真面目なタイプそうだから、こういった店には入らなそうだと思うのだけど。

「貴方が仕事をサボらないかどうか見る為に入るのよ。別に、貴方と一緒に入りたい訳じゃあないんだからっ」

 う~ん。この反応。前世の幼馴染を思い出すな。

「分かったよ。じゃあ、一緒に入ろう」

 ここは揶揄わないで、下手にでる。じゃないと、機嫌を損ねるかもしれないからな。

 僕は笑顔を浮かべて、デネボラさんと一緒に入る。


僕達は酒場の扉を開け中を見ると、既に酔っ払い客達が酔いに任せて騒いでいた。

「何処に座ろうか?」

「丁度、カウンター席が二つ空いているから、其処に座りましょう」

 デネボラさんが目ざとく見つけたので、僕も頷いて座る。

 カウンターの向かいの席に居るマスターを見る。

 見た感じ、四十代ぐらいの獣人族の男性がマスターをしていた。

 耳の形から、虎のようだ。

 十二氏族と関係あるのかどうかわからないが、とりあえず、注文だな。

「エールを」

「わたしは果実酒を」

 僕達が注文すると、マスターは僕達を見て頷いた。

 そして、直ぐに注文の品が来た。

「お待ち」

 低音でボソリと言いながら、注文した物を持って来てくれた。

 素焼きで持ち手が付いたコップには泡が零れないギリギリの所まであった。

 果実酒も同じ素焼きのコップに入っていた。

「エールって、こんなに泡立っていたかな?」

「それを言ったら、この果実酒の色は見た事がない色よ」

 そう言われて、僕はデネボラさんが持っている器を見る。

 確かに、薄くオレンジ色の液体だった。

 普通こういう酒場に出てくるのはワインなんだけど、これは本当に果実酒みたいだ。

「すいません。この酒の原料は何ですか?」

 マスターに訊ねると、マスターは僕達を見ないで答えた。

「ミカンとかいう種の果実の汁で作った果実酒だ」

「みかん?」

 この世界では、オレンジの事をみかんとは言わない筈だけど。

『美味しいだろう。このみかんはな。父様(とうさま)がわたしの為に、品種改良して作ってくれた品種なんだぞ』

 ふと、前世の記憶が蘇った。

 まさか、有り得ないな。

 向こうの世界に帰って、親父さんの後を継いでいると思われる幼馴染がこっちの世界に居るとは思えない。仮にいたとしても、もうかなりの年月が過ぎているのだから、子孫が居れば良い位だ。

「リウイ、どうかしたの?」

「いや、何でもない」

 僕が黙っている事に不審に思ったのかデネボラさんが声を掛ける。

 いかんいかん。何か、感傷的になっているな。気持ちを切り替えてと。

「すいません。聞いても良いですか?」 

「……何だ?」

 マスターが僕達を見る。

「この酒は何処で仕入れたんですか?」

 まずは、当たり障りない事を聞こう。

「この地区にある『鳳凰商会』という所だ」

 ふむ。酒も造っているのか。だとしたら、飲食業を生業にしているのかな。

 しかし、商会と言うのだから、他にも商売の手を伸ばしているかもしれない。

 そう思うと、安易に判断するのは早いか。

 まぁ、ここは当たり障りない会話で、この地区の情報を手に入れるか。

「その『鳳凰商会』って、大きいんですか?」

「さぁな」

「商会長の名前は知っていますか?」

「……そんな事を聞いてどうするんだ?」

 マスターが僕を疑惑の目で見る。

「実は、僕とある貴族に食料品などを下ろす商家の者なんです。この地区には、それは美味しい食べ物を扱う商会があると聞いたので、もしかして、そこなのかと思いまして」

 すらすらと嘘を述べる僕を見て、デネボラさんはギョッとしていた。

「ちょ、リウイ」

「しっ」

 ここが一番大事な所だから、静かにという意味で人差し指を口に当てる。

 それを見てデネボラさんは黙ったので、僕はマスターを見る。

「ふぅん。そうかい。ああ、其処は支店だから居るのは支店長だぞ」

「支店ですか。それで、名前は?」

「確か、ヴァンガドとかいう名前だったぞ」

 それが支店長の名前か。

 今度、その商会に行く時は、その名前の人を呼べば良いんだな。

 僕はマスターに「ありがとう」と言って、注文した物を飲む。

 飲んで思ったのは、これはエールじゃなくてラガーだと思った。

 でも苦みはるけど、何というかキレがない分、懐が深いというのが飲んで思った感想だな。

 前世で、ドワーフに頼んで作ってもらった方は、もっとキレがあったのだけど。

 水が違うからかな?

 そう思いながら、僕は注文した物を飲んで出ようとしたが。

「……美味しい」

 何か、デネボラさんが果実酒を飲んで呆然としていた。

 猫って、柑橘系は苦手じゃなかったけ?

 仕方がないので、デネボラさんが飲み終わるのを待つ事にした。


 








 

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