第19話 重要な役目を与えられた
そして、メンバーの人達に睨まれながら、何とか二人を帰らせるように説得した。
二人は「じゃあ、今度お願い聞いてくれますか?」と言ってきたので、僕は一にも二もなく頷いた。
それで、二人は嬉しそうに店を出て行った。
ふぅ。何とかなった。
「おめえ、ウイルだったよな? 何で、さっきの二人にはリウイって言われていたんだ?」
ドキンッ‼
やば、誰かに言われると思ったけど、まさか今言われるとは。
何とかして誤魔化さないとっ。
「ウィルの本名がウィルフレッドトゥーリマンルーセンススレイハイペリオンベガって名前だけど、人によって略し方が違うのよ。ウィルって言う人もいれば、フレッドという人も居るし、リウイっていう人も居るわ」
おお、ティナがナイスフォローしてくれた。
「……成程な」
マスターが納得してくれたのか、マスターはそれ以上訊いてこなかった。
ふぅ。何とか誤魔化せた。
「名前なんて、どうでもいいがよ。おい、ウィル」
「何ですか?」
「あの獣人とそこに居る美人さんとは何処で知り合ったんだ?」
美人さん? つまり、カーミラさんの事か。
「ちょっと、あたしは美人じゃないの?」
ティナは自分を指差す。
「あ、ああ~、お前は可愛いぞ?」
「うん。可愛いぞ?」
メンバーの人達は皆、語尾にハテナマークをつけている。
まぁ、分かる気がする。
あんなに暴れる姿を見ていたら、誰でも可愛いと言えるかどうか疑問に思うだろうな。
「ぶぅ。ねぇ、ウィルはどう思うの?」
「ティナは可愛いよ」
「むぅ。ウィルまで」
「だって、ティナには綺麗よりも可愛いの方がピッタリだよ」
「えっ、ピッタリ」
「うん。ピッタリだよ」
「ふぅん。あたし、可愛いんだ。えへへ」
嬉しそうに顔を緩ませるティナ。
「けっ。人前でイチャイチャするとはよっ」
「こうして女を誑かしているんじゃあねえのか?」
「だろうな」
何か、スケコマシみたいな事を言われている気がする。
そう思っていると、ドアに付いている鈴がまた鳴った。
僕達は顔を向けると、そこに居たのはガイウスとモルぺの二人が入って来た。
それに続いてまだ来てなかったメンバー達もやってきた。
「おう、お前等早いな」
「店の改築が終ったという話を聞いたんで早めに来ました」
「そうか」
そう言って、ガイウスとモルぺ達は好き勝手に座り、何かしら注文した。
そのまま時間だけが過ぎて行った。
やがて、店は閉店時間となった。
チームと関係がない人達は、店から出て行った。
店内には、僕達と店のマスターしか居ない。
マスターは一度、ドアの所に向かい『Close』の札を掛けて、自分の定位置の戻る。
ガイウスが定位置に戻るのを確認してから、注文した飲み物をテーブルに置く。
「よし。では、これから話し合いを行う」
ガイウスがそう言うと、皆、背筋を伸ばした。
「で、話と言っても、現状を鑑みて、俺とリーダーとで話した事なんだが」
ガイウスはそこまで言って言葉を区切り、僕達を見る。
いや、僕達と言うよりも、仮メンバーの人達を見ているようだ。
「俺達のチームは中央区にあるという事で、他のチームの襲撃を受ける。それはお前等も承知しているな?」
ガイウスの言葉に皆頷いた。
「そこで、俺達は他のチームと同盟を結ぶべきだと結論に至った」
同盟か。
悪い手ではないな。
ガイウスも言っていたが、このチームは中央区にあるから他のチームの襲撃を受けやすい。
だったら、他のチームと同盟を結んで、襲撃を抑える事が出来る。
「そこで、その任務を仮メンバーの奴らに任せる」
「「「えっ⁈」」」
僕達仮メンバーは驚いた。
「そ、そんな重大な任務を俺達に任せてくれるんですか?」
仮メンバーの一人がガイウスに訊ねる。
「これもお前等を正式に俺達のチームメンバーにする為だ」
「ま、マジかよ」
皆、言葉を失っていた。
正直、僕はその言葉を聞いて、違和感を感じた。
普通、そんな重要な任務を僕達仮メンバーに任せるなど有り得ない。何か裏があるとしか思えない。
後で聞いておこう。
「で、まずは、ウスル、ローパン」
そう呼ばれた二人は頷いた。
「お前等は『ランページクラブ』に今の話しを持って行け」
「「了解です」」
「次に、カインとアルスの二人は『デッドリースネイク』に行け」
名前を呼ばれた二人は頷いた。
「次は、アベルとバルス。お前等は『クリムゾン・ティガー』だ」
そして、次々と名前が挙げられていく。
「最後。ウィルとティナの二人は『ビアンコ・ピピストレロ』だ」
僕達は『ビアンコ・ピピストレロ』か。
確か、そのチームってどんなチームなのか分からないって話だったよな。
「以上だ。今日は、これで解散とする。細かい話は明日する」
ガイウスがそう言って、自分が座っていた席に座る。
皆は店を出たり、酒を飲んで騒いだりと好き勝手にしていた。
店が騒がしくなったので、僕はガイウスの所に行く。
「副リーダー。ちょっとお話が」
「ああ、ウィルか。丁度いい。お前に話しがある」
「話ですか?」
「ちょっと店の外に出るから、付いて来い。連れも一緒にな」
何の話しをするのだろうか?
そう思いながら、僕はティナ達に声を掛けて、ガイウスと一緒に店を出た。
僕達はガイウスと一緒に店を出た。
店から少し離れ、そして路地裏に入った。
「此処なら話を聞かれる事はないだろう」
多分。そうですね。
何となくだけど、ルーティさん達が周囲に居る気がするけど。
「まずはお前の話から聞こうか」
「あの、どうして僕達仮メンバーの人達を同盟を結ぶ使者にしたのですか?」
「さっきも言っただろう。正メンバーに入れる為だ」
「でも、仮メンバーの中に何処かのチームのスパイが居ると思われるのに、どうしてそんな事をするのですか?」
「ふむ。お前はどう思う?」
「……絞り込みだと思います」
「正解だ」
ガイウスは僕の答えを聞いて、満足そうに頷いた。
「ねぇ、ウィル」
「なに? ティナ」
「スパイってどういう事?」
「ああ、そうか。襲撃を受けた時にティナは居なかったね。実は」
僕は襲撃を受けた件と、何故、受けたのかという事をティナに話した。
「つまり、あたし達の中に敵のチームのスパイがいるの?」
「その通りだ」
ティナの疑問をガイウスが答えた。
「俺は仮メンバーの中に、同盟の使者に立てたのは、仮メンバーの中にいるスパイが所属しているチームに知られるだろう」
「そうなるよね」
「もし、そんな情報が入ったら、お前はどうする?」
「妨害する。って、ああ、そういう事なんだ」
「成程。これを機に、誰がスパイなのか調べるつもりなのね」
「その通りだ。それとウィル。ティナ。と、カーミラで良いのか?」
「ええ、構わないわ」
「お前等には、そのスパイの断定をしてもらいたい」
「僕達がですか?」
「ああ、そうだ。仮メンバーに接する機会が、俺よりも多いはずだ。その機会を使って、誰がどこのチームのスパイなのか調べてくれ」
「良いんですか?」
「何がだ?」
「僕達がその敵のチームのスパイかもしれないのに、そんな話をして」
正直、僕を信用しすぎでは?
まだチームに入って、そんなに時は経っていないのに、チームメンバーの内情調査させるとは。
ガイウスは僕の目をジッと見る。
そして、ふっと鼻で笑う。
「本当にスパイだったら、そんな事は言わねえよ。それに」
「それに?」
「お前にこの話しをする前にな、リーダーと誰に内情調査させるか話し合ったんだが、リーダーがお前を指名した」
「リーダーが?」
顔は良く合わせるけど、話した事無いぞ。
「リーダーは最初にお前を一目見て『面白い目をしているわ。気に入ったわ』と言っていたぞ」
へぇ、そうなんだ。
ギュウウウウウウウウウッ‼
痛たたったたっ、何か、突然、ティナとカーミラさんが僕の尻を抓りだした。
何でだろう。
「ふむ、リウイは女を見ただけで、女を誑かせる術でも会得したのか?」
「流石にはそれは、でも年上受けする顔立ちと思います」
何か、母さんとソフィーの話し声が聞こえるのは気のせいだろうか?
「……話を続けても良いか?」
「は、はい。どうぞ」
痛みに耐えながら、僕はガイウスの話しを促した。
「で、リーダーがお前を推薦したんで、お前になったという訳だ」
「でも、正メンバーでも良かったのでは?」
「ああ、あいつらはな暴れるのは得意だが、こういった調査とか情報収集とかは苦手なんだよ」
言われてみれば、男女ともにどちらかと言うと身体を動かすのが得意そうな、考えるよりも行動あるのみという人達だったな。
「その点、お前は身軽だし冷静な判断力、人脈があるようだ。だから、それを活かして、情報を収集してくれ」
「はぁ、分かりました」
「それと、頼んだ仕事の件も頼むぞ」
「あの『ビアンコ・ピピストレロ』との同盟の件ですか?」
「そうだ。正直、俺の情報網でも、全く引っ掛からなくてな、不気味でな」
そんな不気味なチームと同盟を結ぶのかい。
何か問題がありそうだな。
「まぁ、お前は顔が広そうだから東地区を気長に探していれば、チームの根城が見つかるかもしれん。根城を見つけただけでも十分だ。そこからは、俺に任せても良い」
「良いのですか?」
「ああ、お前の仕事はスパイの断定だからな。別に、無理して同盟を結ぶ必要はないからな」
「分かりました」
つまり、表向きは同盟の使者だけど、本当はスパイの割り出しをすれば良いのか。
「さて、話は終わりだ。俺は店で飲み直すが、お前等はどうする?」
「僕達は帰ります」
「そうか。じゃあな。夜道には気を付けろよ。色々な意味でな」
それって、どう意味なんだろう?
聞きたいけど、何か怖くて聞けないな。
そして、ガイウスが路地裏から出て行ったが、僕達は路地裏から出なかった。
「……誰も居ないよね?」
「大丈夫よ」
カーミラさんがそう言った後に、僕の前にルーティさんが現れた。
そして、僕の方を見ながら跪く。
「カーミラ殿が仰る通りです。付近に怪しい人物及び魔法をなどは使われた形跡はありません」
「そうか」
さて、此処から本当の話しをしよう。
「ガイウスが言っていた事だけど、リウイ、あんたはするの?」
「そうだね。とりあえず、どちらかと言えば『ビアンコ・ピピストレロ』の根城の割り出しの方が楽だと思うよ」
「でしょう。じゃあ、そっちに集中しないと。正直、あたし達はここのチームには何の興味も未練になるようなものはないわ。だったら、真面目に仕事をしないで、このチームが他のチームに潰されるのを黙って見ているのも一つの手よ」
驚いた。ティナがそんな冷静な事を言えるなんて。
「あら、これは驚いたわ。アルティナがそんな事を言うなんて、明日は雨でも降るのかしら?」
「どういう意味よっ⁉」
二人が睨み合いしているんを横目でみながら、僕は考えた。
ティナの考えも悪くはないな。
しかし、ここのチームが潰されて、他のチームとの抗争が激しくなる可能性もあるからな。
さて、どうしたものかな。
「とりあえず、頼まれた仕事はどうするかは明日決めようか。今日はもう帰ろうか」
「そうですね、もういい加減、お休みになりませんと、明日の公務に差し障ります」
「まぁ、もう少し夜遊びしても良いと思うが、育ての母にこう言われては、帰るしかなかろう。なぁ、リウイ」
何時の間にか現れたソフィーと母さんが現れた。
「あ、ああ、うん」
「では、帰るか」
母さんにそう言って、僕の頭をポンポンと叩く。
「任された事には手を抜かずに頑張れよ」
それって、頼まれた事に手を抜くなよと暗に言っているのだろうか?
多分、そうだよな。
ああ~、とりあえず、館に帰って少し休んだら、頼れる我が忠臣とどうするか話すか。




