第16話 一難去って、また一難
僕達は建物の中から『クリムゾン・ティガー』が逃げ出していくのを確認して、防壁を退けて外へと出て行く。
「助かった~」
「ふぅ。ようやく一息つけるぜ」
僕達は建物を出ると、皆安堵の息を吐いた。
そんな僕達にガイウス達正メンバーが近付く。
「おう、おめえら、無事か?」
「まぁ、何とか」
襲撃を受けたものの重傷者はいなかった。
皆、軽傷ばかりだ。
その軽傷者も、今は治療を受けている。
「副リーダー」
「どうした。ウィル」
「話しがあるのですが。ここだと、ちょっと」
「分かった」
僕はカーミラさんの目を見る。
目で、此処で待っていてと言う。
伝わった様で、カーミラさんは頷いた。
僕はガイウスと共に、皆から少し離れた所に行く。
「で、話って、何だ?」
「今日、襲撃を受ける事を分かっていたのですか?」
こういうのは回りくどい事は言わず、直球で言うのが一番だ。
「……何故、そう思う?」
「あまりに、タイミングが良すぎましたから」
そう、両方の意味でタイミングがバッチリだった。
僕達がこの『天馬亭』に着いて、『クリムゾン・ティガー』に襲撃を受けた事と。
その僕達を助ける為に来た『プゼルセイレーン』の正メンバーが来た事の二つの意味でだ。
「それと先程、僕達を襲った『クリムゾン・ティガー』のメンバーがこう言ってました『此処に居るのは全員仮メンバーのようだな』っと」
「……」
ガイウスは何も言わない。これは、もしかして。
「もしかして、メンバーの中に『クリムゾン・ティガー』に通じている者が?」
「俺とリーダーはそう睨んでいる」
「成程。で、そのあぶり出しは出来ましたか?」
「正メンバーの中には居なかった。という事は」
「僕達、仮メンバーの中に居るというなるのか」
ふむ。ここに居ないティナを含めた仮メンバーは全員で十二人。それで、僕とティナは外れるから、残り十人。
その中に、一人又は二人敵のチームのスパイが居るのか。
いったい。誰だ?
そう思うと、皆怪しく思えるな。
「ともかく、これで内通者がいる事が分かった」
「そうですね」
「店が再開するまで、集会は無しにする」
「分かりました」
あの店をたまり場にするのは変わりないようだ。あの店と『プゼルセイレーン』との関係を調べた方が良いかな。
「後は俺達が片付けるから、お前等、今日はもう帰っても良いぞ」
「はい。分かりました」
お言葉に甘えて帰るか。
カーミラさんを見ると、何かメンバーの人達に話しかけられているようだ。
皆、胸を見ながら話している。
それ、女性に嫌われる行為なのに。
だが、僕が見ている事に気付くと、話を打ち切るかのように微笑んだ。
そして、僕の所まで来た。
「お待たせ」
「ええ、少しだけ待ったわ」
「今日はもう帰っても良いそうだから、帰ろう」
「分かったわ♥」
カーミラさんは自分の腕を僕の腕に絡めて、胸を押し付けた。
この体勢だと帰りずらいだけどな。
「じゃあ。帰りましょう♥」
「う、うん」
歩き出そうとしたのだけど、南か背中に視線を感じる。
「憎いぃぃ、憎いぃぃぃ、……」
「顔か? やっぱり、男は顔なのか?」
「敵のチームよりも、味方の方が憎いとはっ」
何か、嫉妬と恨みがこもった声が聞こえてくる。
正直、僕もどうしてこうなっているか分からないんだけどな。
そう思いながら、僕達は館に帰る。
そして、来た時同様に館の裏口に着いた僕達。
「では、我々はこれで休ませて頂きます」
「ご苦労様」
労いの言葉を掛けると、ルーティさんが一礼して、その場を離れた。
「僕達も休もうか」
「そうね」
厨房の出入り口を開けて、僕達は厨房に入る。
「いやぁ、今日は疲れたな」
「そうね。まさか、襲撃を受けるとは思わなかったわ」
「うんうん。部屋に戻る前に水でも飲むか」
「どうぞ。お水です」
「ああ、どうも。…………んぐっ⁉」
水が入ったコップを差し出されたので、僕は受け取り飲んでいると、差し出された人の声を聞いて驚いた。僕は首を動かして、その声がした方を見る。
そこに居たのは。
「そ、そそそ、そふぃー?」
「はい。そうです。リウイ様」
何と、ソフィーが笑顔でそこに居た。
「このような時間に、いったい何処に行っていたのですか? リウイ様」
「そ、それは、……」
どう言い訳しようかなと思い、何か言い訳のネタになりそうな物を目で探していると。
厨房の入り口に、ティナが居るのが見えた。
そして、ティナが目を瞑り手を合わせて、謝っている様に見えた。
ま、まさか。バレタ?
そうじゃないと、ここにソフィーが居る訳がない。
「久しぶりにお話をしましょうね。リウイ様」
「あ、あした、しごとがあるから」
僕は背を向けて逃げようとしたが。
肩を掴まれた。
「直ぐに済みますから、大丈夫です」
「いや、ちょっ」
「直ぐに済みますから」
そう言って、僕を引っ張る。
た、助けて。カーミラさん‼
そう叫ぼうとしたが、既にカーミラさんの姿はなかった。
逃げたな⁉
そ、そんなっ⁈
「さぁ、行きましょうか」
……今日はなんて日だ‼




