第12話 とりあえず合流するか
襲撃してきた『クリムゾン・ティガー』のメンバーが撤退した。
「僕達も店に行こうか」
「えっ? でも別に行かなくても」
「今行かないと、面倒な事になりそうだからね」
「面倒? どういう事?」
「……行けば分かるよ」
僕達は店に向かう。
「う、うう……」
「い、いてえ、いてえ、……」
襲撃を受けた店は至る所が損傷しており、更に怪我を負った者達が多かった。
勿論『プゼルセイレーン』のメンバーだ。
僕達が近づくと、メンバーを治療している人達が僕達に気が付いた。
「おお、ウィルとアルテナじゃねえか」
「お前等も無事だったか」
「よかったぜ。……んあ?」
「なぁ、お前等、そちらのマブい姉ちゃんは誰だ?」
チームメンバーの人達はカーミラさんを見て、その美貌に目を奪われながら訊ねる。
そう言えば、カーミラさんを連れてきてたな。
さて、どう言ったものかな。
そう思っていると、カーミラさんが前に出た。
「カーミラさん?」
「ここはわたくしに任せて」
そう言って、笑顔を浮かべながらカーミラさんはメンバーの人達を見る。
「初めまして。わたくしはり、じゃなかったウィルの婚約者のカーミラと言います、何時もウィルがお世話になっています」
「「「は、はあああああああああっっっ⁉」」」
メンバーと僕達に驚きの声をあげる。
何で、そんな事を言うの?
「ちょっと、あんた、何、嘘言っているのよっ」
ティナが怒鳴る。
「あらあら、本当の事なのに、何を怒っているのかしら?」
カーミラさんは微笑みながら言う。
流石にそれは無理があると思うのだけど。
「すいません。カーミラさん。嘘はちょっと」
「もう。別にわたくしの両親はもう許可しているのに」
頬を膨らませながらカーミラさんは残念そうな顔をする。
「あんたね。嘘をつくんじゃあないわよっ」
「いやね。幼馴染だけど、そういう対象に見られていないからって、怒る事でもないでしょう」
カーミラさんは笑みを浮かべながら言う。
その言葉を聞いて『プゼルセイレーン』のメンバーの人達は、カーミラさんとティナ交互に見る。
そして、カーミラさんのボン、キュ、ボンのグラマラスな体型を見た後に、ティナのストーンな体型を見て、皆、納得した様に頷いたり、あ~と声をあげる。
「………………」
あっ。ティナの全身が震えだした。
これは雷が落ちるな。
僕は近くの建物に身を隠した。
「こりゃあ、流石にな」
「ああ、こちらのねえちゃんが選ばれるのも無理はないな」
「それにしてもウィルは何処で、このねえちゃんと知り合ったんだ?」
「まぁ、アルテナにも全く勝ち目がないという訳でも……んあ?」
メンバーの人達が話していると、ティナの周囲に電気が走った。
「『我、招来させるは、神より奪いし雷霆なり』」
うわぁ。ティナがマジ切れしてる。
ティナがこの魔法を使う時は、マジで切れている時に使うんだよな。
「『天を翔。轟け雷鳴。万物を打ち砕け』」
この時代の魔法も詠唱を必要としないのだが、特定の魔法には詠唱が必要とする。
「『神雷よ。我が身に宿り、我が怨敵を打ち滅ぼせ』」
詠唱を必要とする魔法を『大魔法』と呼ぶ。
「『勝利の凱歌を謳え。さすれば、我が武勇伝の一端とせん。―――雷帝の帯鎧』」
ティナが唱え終えた途端、空から雷がティナに落ちた。
一瞬、激しい稲光が視界を奪う。
その光が止むと、全身に雷光を宿らせたティナが目についた。
「アンタラ、全員コロス」
ティナが握り拳を作ると、光の速さで駆けだした。
「な、なんだ。ぐぎゃああ」
「があああああっ」
あっちこっちから悲鳴が聞こえて来た。
そして、何時の間にかカーミラさんが僕が隠れている所に来ていた。
「あの子。胸の事で揶揄うとこうなるのね」
「マジで切れないと、こうならないんだけどね」
「ふふふ、恋敵は強いわね」
何を言っているんだが。
僕達は、ティナが落ち着くのを待った。
ティナが暴走して数十分間。僕達は物陰に隠れていた。
ようやく静かになったのを見計らい、僕達は物陰から出た。
もはや、そこは戦場後の様な荒れ方をしていた。
地面には幾つも小さいながらクレーターが出来ており、焦げた匂いが辺りに満ちていた。
更にクレーターがある所には『プゼルセイレーン』のメンバーの人達が倒れていた。
「う、うううう……」
「ば、ばけもの」
「あり、えない、だろう……」
皆さん。うめき声をあげているので、死んではいないようだ。良かった。
それで肝心のティナは何処にいるのかと思っていると。
「ウィル。こっちこっち」
ティナの声だ。
そう思いながら、僕は声が聞こえた方に顔を向ける。
其処には、ティナが横になって倒れていた。
側にはガイウスが剣を杖にしながら立っていた。
「お、おまえの、幼なじみは、凶暴だな……ウィル」
「すいません」
僕は頭を下げる。
そして、ティナの傍に行く。
ふむ。見た感じ、何処も怪我らしい怪我は負っていないな。
怪我がないのは一番良い。
ティナが大丈夫だと分かると、僕はガイウスの下に行く。
「副リーダー。何かすいません。さっきの襲撃よりもティナの暴走の方が怪我人だしたようで」
「……気にするな。お前等がこうしてこの店に来たという事はシロだからな。それが分かっただけでも十分だ」
「は、はい」
ガイウスがシロというのは、他のチームのスパイではないという意味だ。
スパイなら襲撃の情報を事前に知っている筈だから、この店にはこない。
そう思う人がいるだろうなと思い、僕は店に来たのだ。
「ところで、リーダーは?」
僕は周囲を見る。
怪我人の中にも、辛うじて立っている者の中にはリーダーであるモルぺさんが居ない事に気付いた。
「ああ、今日。リーダーは用事があってな。遅れると事前に言われていた」
「成程。じゃあ、まだ来てないんだ」
「そうだ。さてと」
ガイウスは息を整え終えたのか、剣を腰に差している鞘に納める。
「もう、この店は集会に使えないな」
「ですね」
ティナの暴走もあるけど、先程の『クリムゾン・ティガー』の襲撃によりこちらのメンバーのたまり場になっていた『カフェ&バー テンダー』は全焼とは言えないけどかなり焼かれていた。
消火活動は今も続行して行われている。
「更に。あれだな」
遠くから灯りを持った人達がこっちに向かっている。
無論、警備兵だ。
「ここに居たら、いらん面倒が掛かるな」
「どうします?」
「……よし、お前等、怪我人を連れて、第二拠点に向かうぞっ」
「「おうっ」」
ガイウスがそう言うと、皆怪我人の治療をそこそこにして、持ち上げたり肩を貸したりして動く準備をしだした。
「全員、準備できたか?」
「準備完了です。副リーダー」
「じゃあ、行くぞ。店のマスターには後で店の修復費用は払うと言ったのか?」
「へい。その代わり、警備兵が来ても適当の嘘をつくと言っていました」
「よし、じゃあ、お前等、行くぞ」
僕達は歩き出した。
「すいません」
「何だ? ウィル」
「僕達は何処に向かっているのですか?」
「俺達が根城にしている場所だよ」
「そこは?」
「行けば分かる」
そう言ってガイウスは何も言わず歩き出す。
ふむ。今の言い分だと重要拠点という事になりそうだな。
これは情報収集が出来るかもしれないな。
そう思いつつ、僕達は怪我人を連れてその場所に向かう。




