第7話 チームに入る為の試験をします
「すいません。僕の連れがご迷惑を掛けて」
僕は店にいる人たちに深々と頭を下げた。
あの後、暴走したティナをどうにか止める事に成功した僕は、まずは店のマスターに謝り、ティナが暴れた事で散乱した物の片づけを手伝った。
ちなみに止めた方法は縄で縛りあげた。
その後片付けが終ると、僕は『プゼルセイレーン』の人達に謝る。
ティナの暴走で、何人か軽くだが怪我をした。
本来はティナが謝るべきなのだろうが。当の本人は。
「む~~! む~~‼ む~~‼」
縄でがんじがらめに縛られているの上に、布で口を塞いでいる。
何か、飛び跳ねながら噛み付きそうだったので。止む負えず。
僕が謝る姿を見て『プゼルセイレーン』の人達は何も言わず、ただリーダーさんを見た。
皆に見られているリーダーさんはと言うと。
「…………」
手の爪にを塗装していた。
この世界にもマニキュアという方法が確立されていたのか。
でも、塗料についてはどんなのがあるのかな。今度、マニキュアしている人に聞いてみよう。
リーダーさんは爪に塗料を塗り終わると、息を吹きかける。
そして、僕を見る。
「そっちの子の名前は?」
リーダーさんはティナの名前の事を訊ねてきた。
「アルテナと言います。僕はウィルです」
「ウィルにアルテナね」
「それで、わたし達のチームに入りたい理由はある?」
「理由ですか?」
チームに入るのって、別に理由がなくても入れるのかと思ったけど違うのか?
そう思っているのが顔に出たのか、リーダーさんが目を細める。
「他のチームが送り込んだスパイかもしれないから、こうして聞いているのよ。で、どうなの? あるの? それともないの?」
特にないんだけどな。
他のチームに比べて、この店に入り浸っているという情報が入ったから此処に来ただけだしな。
でもここで「特にありません」とか言ったら、確実に入れてくれないだろうな。
「じ、実は、僕達、皆さんの様なチームに憧れていまして」
ちょっと苦しいかも知れないけど、こう言うしか思いつかなかった。
駄目と言われたら、仕方がない。別のチームに入る事にしよう。
「そう。じゃあ、良いわよ」
えっ⁉ 良いの?
ちょっと簡単すぎない?
「正し、暫くは仮メンバー扱いだからね」
「成程」
それなら納得だ。
「じゃあ、仮メンバーになる為の試験を受けてもらうわ」
「試験ですか?」
「そうよ。これでも、わたし達のチームに入りたいという人達は多いからね。使えるかどうか試験を受けてもらうわ」
「分かりました」
その時間の時に適当な理由つけて、仕事をサボるか。
「む~、む~」
ティナが何か言っているようだが、まぁ、後で聞く事としよう。
「その試験は何時頃するのですか?」
「明日のこの時間に此処に来なさい。そこでどんな試験をするか言うから」
「分かりました」
僕は頭を下げた。
「おい。そろそろ時間だ」
マスターがリーダーに声を掛ける。
「分かったわ」
リーダーさんが立ち上がり、店の奥へと向かう。
「すいません」
「何だ?」
「今、リーダーさんが店の奥に入りましたけど、何かするのですか?」
「ああ、リーダーはな。ここで偶に歌を歌っているんだよ」
「歌を。という事は、歌手ですか?」
「ああ、最も本業は別にあるそうだ。上手いから鞍替えすればいいのにな」
「そうなんですか」
来た記念に、聞いて帰るか。
「む~~~~~」
おっと、そろろティナを縛っている縄を外すか。
まずは口を覆っている布を取るか。
「ぷはっ、ちょっといいの。試験なんか受けて?」
ティナは小声で話しかけてきた。
「仕方がないだろう。これもチームに入る為なんだから」
「でも、明日よ。あんた、そんな暇あるの?」
「何とか時間を作るよ。ティナはどうする?」
「……あんたは入るのでしょう?」
「うん」
「じゃあ、あたしも入るわ」
「別に無理しなくても」
「無理なんかしてないから、大丈夫よ」
まぁ、ティナがそう言うなら良いか。
僕がティナを縛っている縄を解いていると、拍手が聞こえた。
顔を上げると、そこには短いスカートとビスチェが一一体化したような衣装に身を包んだリーダーさんが現れてステージに立っていた。
リーダーさんはマイクも無いのに歌いだした。
「~~~~♪♪」
綺麗な歌声だ。
聞きほれそうだ。
僕達はリーダーさんの歌が全曲歌い終わると、店を後にした。
翌日の夜。
昨日と同じ方法で館を抜け出した僕達は『カフェ&バー テンダー』に向かった。
店の前に着くと、ガラが悪い人達が沢山いた。
どうやらこの人達が僕達と同じ仮メンバーの試験を受ける人達なんだろうな。
僕達もその人達の中に入り込む。
「ん? 何だ。このガキどもは?」
「俺達と同じ試験を受けに来たんじゃあねえのか?」
「ははは、マジかよ」
「さっさと、家に帰って、ママの胸の中で眠ったらどうだ?」
その人がそう言うと、周りの人達と一緒に笑い出した。
「な、なんですって⁉」
ティナが拳を鳴らしだした
「はい。どうどう、落ち着いて。ティナ」
僕は羽交い絞めにして、ティナを宥める。
「あたしは馬かっ」
「ともかく、こんな挑発をいちいち間に受けないの」
「むぅぅぅ」
ティナはしぶしぶだが納得してくれた。
その後も、店の前に集まる人たちが増えた。
指差して数えれば正確だろうけど、因縁着けられそうなのでそうしないで、目だけで数える。それで全員で百人ぐらいはいる事が分かった。
結構な人数だな。
まさか、試験を受けた人全員仮メンバーにするわけないだろう。
どんな方法で振るい落とすのやら。
その方法を考えていると、店の名から誰か出て来た。
よく見ると、あの人達は『プゼルセイレーン』のメンバーの人達だ。
昨日、ティナが怪我をさせた人が居るから間違いない。
「これで全員か?」
「多分。それにもうそろそろ出ないと、まずいわ」
「そうか。じゃあ、こいつらを連れて行けばいいんだな」
「ええ」
メンバーの人達が何かしら話している。
聞こえた限りだと、何処かに行くようだけど。何処に行くんだ?
「ほじゃあ、注目っ」
メンバーの人が手を叩き、自分に注意を向けさせた。
「これから、仮メンバー採用試験の場所に向かう。皆、はぐれずに俺達に付いて来い。その場所に着いた時に居なかったら、その時点で不合格だからな」
そう言われて、皆気を引き締めた。
「じゃあ、俺達の後に付いて来い」
そう言って、メンバーの人達は歩き出した。
僕達もその後に続いた。
メンバーの後に続いて歩く事、数十分。
ようやく目的地に着いたのか、メンバーの人達は足を止める。
「此処だ」
男性メンバーがある所を指差した。
そこは広場のような所だった。
ここって、開発予定地だから、空き地の筈だけど。ここで何をするのだろう。
「この場所は他のチームの集会場だ」
「で、あんた達にしてもらいたいのは、この場所にいるチームの奴らを全員倒す事よ」
女性メンバーがそう告げると、皆顔を歪ませる。
いきなり、そう言われたら、こうなるだろうな。
「ふざけんなっ」
「何で、いきなり他のチームの奴らと喧嘩するんだよっ」
「文句があるなら、降りてもいいわよ。その代わり、不合格になるけど」
女性メンバーの人がそう言うと、皆静かになった。
気になった事があるので、僕は手を挙げる。
「聞いても良いですか?」
「いいわよ」
「武器とかはあるのですか?」
集まった人達は、皆、武器といえる物を持っていない。
僕もティナも持っていない。
流石に他のチームと喧嘩させるのだから、何かしら武器を持たせるだろう。
ナイフとか、ヌンチャクとか、鉄パイプとか。
そう思い訊いてみると、女性メンバーの人は笑みを浮かべる。
「そうそう。男の子だったら、そういう事を言わないと駄目よね。勿論、有るわよ」
笑みを浮かべる女性メンバーが手を翳すと、黒い穴がを出来た。
その穴から、大きな木箱が幾つも出て来た。
男性メンバーがその木箱を開けると、中から手斧やら短い剣とか木の棒とか出て来た。
流石に鉄パイプは無いか。
「これだけあれば、全員分あるだろう。さぁ、好きな得物を取れ」
男性メンバーにそう言われて、皆思い思いの得物を手に取った。
僕達もその中に混じり、箱の中に入っている物を見る。
う~ん。何か、ピンとくる物が無いな。
そう思い見回していると、面白い物を見つけた。
それは釵だ。珍しい物があるな。
棍棒の一種だけど、先端が尖っているから突き刺す事も出来るからな。
これにするか。
僕は逆手に構えてみる。うん。何か、しっくりくる。
「り、じゃなかった。ウィルはそれにするの? じゃあ、あたしは、これにするわ」
ティナがそう言って、手に持ったのはパチンコだった。
いや、この場合はスリングショットと言った方が良いのか。
それにしても、チョイスがちょっと実用的だな。
「はっ、そんな玩具を選ぶとは」
「こりゃあ、最初の脱落者はこいつらかもな」
他の人達にそう言われて、ティナは睨む。
「はいはい、おしゃべりはそこまで。皆、選んだわね? じゃあ、このままあんた達だけ行きなさい」
「あんたらは来ないのか?」
「あたしらは監督役だから、手を出さないわ。見るだけよ。誰が仮メンバーに入るかどうかね」
女性メンバーの言葉を聞いて、皆気を引き締めた。
この試験を乗り越えれば『プゼルセイレーン』に仮メンバーとはいえ入れると分かり、皆やる気をだしたのだう。
「じゃあ、いってこいっ」
男性メンバーにそう促され、僕達は歩き出す。
「あのすいません。最後に良いですか?」
「何かしら?」
「此処には何処のチームが居るのですか?」
「ここは『クリムゾン・ティガー』の集会場だから、居るのは『クリムゾン・ティガー』ね」




