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第2話 ちょっと外に出るか。

 ティナとアルネブの言い争いを宥め、こうして来たので、僕は飲み物を頼んだ。

 すると、二人は風の如くすっ飛んで行った。

 待つ事数十分。

 そろそろ来ても良い頃なのに、何故か二人共こない。

 てっきり、どっちか、又は二人同時に来ると思っていたのだけど。

「遅いな」

 喉が渇いているのだけど、どうしたものかな。

 コンコン。

 ドアがノックされた。二人の内、どっちか来たのかな?

「どうぞ」

『失礼します』

 そう言って入って来たのは、ビクインさんだった。

「あれ、どうしてビクインさんが?」

「ええっと、アルネブ達は少々用事がありまして、届けられないので、わたくしが代わりに御飲み物を持て来ました」

「そうか。それはどうも」

 お盆に乗っているコップを手に取り、僕はコップを傾けて中の液体を飲む。

 うん。程よい甘さに、キレがある喉越し。

 美味しいけど、これは何だ?

「この飲み物は何だろう?」

「それは、わたくしの蜜から作った蜜水です」

「へえ」

 美味しいので、僕は直ぐに飲んだ。

 蜜水か。蜂蜜を水で割ったような物と考えれば良いのかな。

 それにしては、随分と口当たりが良いけど。

「ふふふふ」

 何か、僕を見て笑っているけど。何かあるのだろうか?

「お代わりお持ち致しますか?」

「いや、いい。それよりも、今日の仕事は」

「それでしたら、リッシュモンド様が行っております。リウイ様の決済が必要な書類以外は全て片付けると申しておりました」

「そうか」

 この領地に戻ってからというものの、実はあまり働いている気がしない。

 だって、部下であるリッシュモンドを始め優秀な部下が多いので、僕がする仕事が殆どない。 

 精々、僕の署名が必要な決済書類に印を押すぐらいだな。

 ちなみに、一番働いているのがリッシュモンドだ。

 死人だから、眠る事も食事を取る必要もないので、一日中働いている。

 この五年間。碌に休んでいないかもしれない。

 七十二時間働けますかどころではなく、八千七百六十時間働けますだな。

「じゃあ、決済が必要な書類があったら、僕の机の上に置いておいてくれと言っておいてくれるかな」

「分かりました」

「ちょっと、散歩に出るから」

「分かりました。では、護衛の方を御呼びしますね」

「要らない」

「ですが」

「そんなに遠出しないから、大丈夫だし、それに彼女(・・)に乗るから」

「畏まりました」

 ビクインさんは一礼して、コップを受け取り部屋から出て行った。

 さて、僕も行くか。


 部屋を出た僕は、ある場所に向かう。

 そこは馬小屋に近くにある所で、そこにはある種族の者達の暮らす場所となっている。

 そこは十二氏族が一つ『ホーユス』族の人たちの部屋だ。

 人馬という事で、部屋の間取りは広くないと駄目だそうなので、丁度馬小屋の近くに人馬族の全員が生活できるスペースあったから、そこに住んでもらった。

「アルトリア、居るかな?」

 僕は声を掛けると、衝立から女性が顔を出した。

 プラチナブロンドの髪をポニーテールにして、キリっとした強い眦。琥珀色の瞳。

 爆乳といえる胸。立派な四本の脚。

「これは、主君。何か御用でしょうか?」

 僕にそう尋ねたのは『ホーユス』族の族長であるデイオメデスの三人いる娘の一人アルトリアだ。

 何で、そんな女性が此処に居るのかは、その内話すとして、今は散歩がしたい。

「アルトリア。散歩がしたいのだけど良いかな」

「分かりました。少々、お待ちを」

 アルトリアは僕に頭を下げて、直ぐに奥へと言った。

 外出の準備をする為だろう。

 さて、少し待つか。

 

アルトリアの準備を待つ事数分。

 準備を終えたのか、アルトリアは自分の背に鞍を乗せて更に武装をしていた。

 右前足に矢束を括り付け、左前足には短い弓と弓をいれる籠を着け。

 腰には両手持ちの剣を差し、自分の背に乗せている鞍と同じ素材で青色の革鎧を着用していた。

 遠くから見ても思う、目立つなこの色。

 しかも、夜でも目立つように微かに光るようになっているそうだ。

 夜、そんなのに出会ったら、僕だったら即効逃げるね。

「どうかしましたか? 主君」

「いや、本当に僕がアルトリアの背に乗っても良いのかなと思って」

「何をおっしゃいますかっ」

 アルトリアが顔をずいっと顔を近づける。

「主君は我ら十二氏族の者達が話すら通じなかった『奥地』の者達を従わせたのです。それだけの御方に忠節を尽くすのは当然の理です」

「そ、そうかな?」

「更に『奥地』でも勇猛で謳われている人獅子族の族長と相撲をして投げ飛ばして地面に背中をつけた上に、首を絞めて服従させる様に迫ったそうではないですか。素晴らしい武勇をお持ちですね」

 どこから、そんな噂が流れてるんだ・

 それにあれは、どちらかと言うと、猫の習性をついただけなんだけどな。

「それだけの御方を我が背に乗せて何の支障がありましょうや。いえ、ありません」

「はぁ、そうですか」

 一度話に出た事は違うと言ったのだ。そうしたら。

『ご謙遜しなくても良いのですよ。ご自身がした事なのですから』

 と言って信じて貰えなかった。

 ここまで言っても信じてもらえないなら言っても無駄だなと思い、それ以上言うのを止めた。

「ささ、わたしの背に」

「あ、ああそうだ」

 言っている最中に、背筋が粟立った。

 何だと思い振り返る。

 そして、周りを見ると、物陰から身体を半分出して僕を見ている人がいた。

 その人を見て、僕は溜め息を吐いた。

「……アリアン」

 物陰から僕を見ているのは、アリアンだ。

 何か、僕がアルトリアの背に乗るのが気にらないのか、こうしてアルトリアの背に乗ろうとしたら、今みたいに、物陰から僕を見るのだ。

 呼びかけても反応しないし、近づくと逃げる始末。

 それどころか、時間を見つけて会いに行っても何処かに隠れていいるのか見つからない。

 なので、話もろくに出来ていない。

 僕の契約魔獣だから、僕を背に乗せたいのかもしれないけど、人間の姿を見た所為か、どうも乗るのに躊躇するんだよな。じゃあ、アルトリアは良いのかと言うと、アルトリアの背は馬のお蔭なのか、別に気にしないんだよな。

 僕はアリアンを無視して、アルトリアの背に乗った。

 言いたい事があるなら、その内、向こうから言ってくるだろう。

 そう思い、僕達は歩き出した。


 領主の館を出た僕達は『カオンジ』の中を歩き回る。

 アルトリアが歩いても、領民の人達は怯える事も驚く事も無くなった。

 最初の頃は、アルトリアを見た瞬間『十二氏族が攻め込んできたぞ」とか「領主との約束を反故にしたんだ」とか叫ばれたものだ。

 今では。

「あっ、どうも。領主様」

「お疲れ様です。領主様」

「りょうしゅさま、おらの畑でとれた。トマトさくってくれねぇべか」

 と言ってくるのだ。

 ああ、最初の頃と比べると、ここも人が多くなったな。

 その内、また都市の開発をした方が良いかな。

 そこの所は、リッシュモンドと官僚の人達と相談だな。

 貰ったトマト(という名前の中身もトマトと同じだけど、味はリンゴ)を食べながらアルトリアと一緒にこの都市を回っていた。













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