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閑話 レバニー族の族長交代二

 アルべル視点です。

 この話はこれで終わりです。

 

「リウイ殿に申したき儀により、参上した」

 ディオメデス族長がそう言うと、残りの族長は恭しく頭を下げる。

「何でしょうか?」

 魔人族の少年が、ディオメデス族長に何事かと問いかけた。

「此度の貴方様が『奥地』に向かう際、我ら『シルベン』『イシメオン』『ホーユス』そして『レバニー』族の四部族が、貴方様の道の邪魔をした事について申し上げたい」

 ああ、姉さんが部族の為にとか言って、部族の皆を動かしたあの件か。

 封鎖はしたものの、このリウイ達があの『清海』を亀の魔獣の背に乗って渡ったと聞いている。

 その件で謝罪に来たのか。

 姉さんもその企てに加わったので、こうして謝罪の為に縄で縛ってここまで来たのか。

「その件について、謝罪に来たのかな?」

「いえ、その件には我らは騙されました。そこに居るアルネブにっ」

 ディオメデス族長が姉さんを指差しながら告発した。

「ほぅ」

 リウイは姉さんを見た。

「この者が道中の警護の為に、我らの部族を使い出迎えに行くべきだと言い、我らは部族の者達を出迎えの為に、領地の境目に配備した。その際、アルネブは事前に使者を出して問題ないようにしているという嘘をついた。それにより、リウイ殿は道が封鎖されていると勘違いされたのだ」

「成程。では、貴方方がアルネブ族長に騙されたと?」

「その通りだ‼」

「全てはアルネブの仕業だ‼」

 黙っていたエリュマントス族長とマルコシアス族長が声を大にして言う。

 そんな。あれは、部族を守る為だと姉さんは言っていたのに。

 どうして、こんな裏切りを。

「話は分かった。アルネブ族長は何か言う事はあるか?」

 リウイは姉さんに訊ねた。

「…特にありません。全てはわたしの独断と差配で行った事。この場に居る族長達と部族の者達は、皆わたしの命令に従っただけの事。全ての責はわたしにあります」

 姉さんはそう言って、頭を下げる。

 まるで、首を斬られやすいように下げているようだ。

「姉さんっ‼」

 僕は思わず、姉さんの傍に行こうとした。

「来たら駄目よ‼ ベル‼」

 姉さんの大声で、僕は足と止めた。

「これも我が部族と十二氏族が生き残る為なの。分かってちょうだい」

「ね、ねえさん……」

 涙で前が良く見えなくなった。

 駄目だ。姉さん。

 お願いだから、こんな所で、しかも嘘をついたという汚名を被ったまま。死なないで。

 そう思いながら、僕の口は動かない。

 ただ、震えるだけだ。

「……了解した」

 リウイはそう言って、腰に差している剣を抜いた。

 そして、一歩ずつ進み姉さんに近付く。

 姉さんの首を斬れる所まで来ると、リウイは剣を振り上げた。

 僕は思わず、目をつぶる。

 そして、今までの姉さんとの思い出が走馬灯のように思い出しては消えていく。

 しかし、何時まで経っても肉を斬る鈍い音は聞こえない。

 何があったのだろうか?

 僕は恐る恐る目を開けると、リウイは姉さんの身体を縛っていた縄を切った。

「…な、なぜ?」

 姉さんは思わず訊ねた。

「貴女が僕の道を遮ったのは部族の為にしたのだから処罰する必要はない。それに自分の領地の民をこんな事で切り捨てていたら、領民が居なくなってしまう」

 リウイはそう言って剣を鞘に納め、姉さんに手を差し出した。

 姉さんはその手を取り立ち上がる。

「これからは、お互いに手を取り合ってこの領地の発展させるべきだ。だから、過去の事は水に流そうじゃないか?」

 笑顔を浮かべるリウイ。

「~~~、は、はいっ。分かりました。リウイ様」

 うん? 姉さんは顔を赤くしているけど、何でだろう?

「ねぇ、あれって」

「もしかして、族長にも春が来たのかしら?」

「きっとそうよ。だって、あの顔、恋する女の顔よ」

 何か、護衛の人達が何か言っているけど、小声なので聞こえないな。

 ともかく、助かったのかな?

「姉さん‼」

 僕は姉さんに抱き付いた。

 しかし、先程の事があった所為か、姉さんは呆然としていた。

「姉さん?」

「…………」

 何か、反応が薄いような?

「……ベル」

「なに?」

「今回の責任を取って、わたしは族長を止めるから、貴方が族長になりなさい」

「はい⁉」

 い、いきなり、何を言っているんだ?

「じゃあ、任せたわよ」

 そう言って、姉さんはリウイの下に行った。

 残された僕達は、何も言えなかった。

「え、えっと、……」

「族長就任、おめでとう。アルベル」

「若いからな。色々と教えてやる」

「まぁ、今後ともよろしくな」

 ディオメデス族長達が僕にそう言う。

「それにしても、アルネブがあんな思い切った行動をとるとはな」

「そうだな。それよりも、今はそれよりも」

「ああ、我らの部族からも従属の証として、誰か送らねばな」

「うむ。村に戻り次第、この事を話しあわねば」

 そう言って、ディオメデス族長たちはその場を後にした。

 取り残された僕達。

「族長。とりあえず、村に戻って、族長に就任した事を報告しませんか?」

「あ、ああそうだね」

 護衛の人にそう言われて、僕は気を取り戻して、その場を後にした。

 もう、色々な事が有り過ぎて頭の処理が追い付かないけど。

 とりあえず、姉さんは助かったんだな。そして、いきなり嫁に行っちゃった。

 うん。それだけ分かれば良いか。

 そう思いながら、僕は村に戻る事にした。

 




 次の閑話で、この章は終わりです。

 少し編集してから、新章に突入します。

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